マンガ『弱虫ペダル』に見る動機付けの重要さ:サイボウズ式(2/3 ページ)
チームを率いるリーダーにとって、自分だけでなくメンバーのモチベーション管理も重要です。今回は、マンガ『弱虫ペダル』に見る動機付けの重要さと、チームワークについて考えます。
自分の力が発揮できるモチベーションの持ち方
梅崎: 基本的に自転車とは1人で乗るものなので、ロードレースも個人競技の側面が強いと思うかもしれませんが、実はそうではないです。ロードレースのなかに、数日間連続で走り続ける「チーム戦」があります。チーム戦では、それぞれに得意分野を持つメンバーが役割分担しながら、他のチームと複雑な駆け引きを行います。この駆け引きの部分を非常にドラマチックに描いているのが、この作品の大きな魅力であり「仕事マンガ」としての見どころでもあるのです。
主人公が所属する高校の自転車競技部が、全国の強豪が集まるインターハイに出場します。インターハイにおいて、6人のチームメンバーは箱根の山間道路を含む長距離を3日間で走破します。メンバーはそれぞれ、平坦な道での高速走行に強い“スプリンター”、斜度がキツい上り坂を得意とする“クライマー”、全般に安定した実力を持つ“オールラウンダー”といった性格、すなわちレーサーとしての「個性」を持っています。
各メンバーは自分の得意分野で交互にチームを引っ張りながら、数日にわたるレースでの勝利を目指します。ときには、集団での転倒に巻き込まれて大幅に遅れたメンバーを「待つか?」「見限るか?」といったシビアな選択を迫られる場面なども出てきます。そこでのチームの葛藤やメンバー同士の友情、信頼から生まれるドラマが作品を盛り上げます。
梅崎: ロードレースという独特のスポーツを題材にしたことで、チームの「協力関係」が非常に分かりやすくなっているところが面白いです。さらに、チームワークの効果を高めるための要素として、個々の登場人物のレースにかけるモチベーションがどこにあるのかというのが、非常に詳細に描かれています。
出場校はチームワークを競うのと同時に、各メンバーのモチベーションを戦わせていると言ってもいいと思います。人間は、単純に「勝ちたい」という気持ちだけあれば、持てるすべての力を出し切れるわけじゃない。ギリギリまで追い込まれたり、圧倒的な力の差を見せつけられることで折れそうになる個々のモチベーションを、いかに維持しながら勝負に留まり続けるかという視点を持つと、また別の面白さが見えてきます。
各登場人物の試合へのモチベーションは多様です。ある者は「目立って評価されたい」と思い、またある者は自らが抱えるコンプレックスの解消が第一の目的だったりします。さらに「ただ、自転車に乗ることが楽しいから」という理由でレースに挑んでいる人物もいます。各人は、まずはそれぞれのモチベーションを支えに、力を発揮していくわけです。
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