「ショールーミング」も商機に変える! ECと実店舗の融合戦略:お客さんの心をつかめ(1/3 ページ)
消費者の“店舗離れ”が起きるのは、店舗が魅力的なサービスを展開できていないからだ。ITのチカラを活用すれば、ネットとリアルはもっとシームレスになる。
スマホやタブレットユーザーが増えたことで、消費者の買い物行動に変化が訪れている。今、売り手側が探しているのは「店舗で買うか、それともネットで買うか」という消費者の単純な2択への対策ではなく、「リアルもネットも含め、いかに消費者と接触する時間を長くできるか」という解決策だ。
小売業界の専門用語で「オムニチャネル戦略」という。まだ「クラウド」という言葉もなかった2004年から、ASP(アプリケーションサービスプロバイダー)としてオンラインショップ構築支援事業を展開しているGMOメイクショップの向畑憲良社長にECビジネスの最新事情について聞いた(聞き手は誠 Biz.ID編集部の岡田大助、以下敬称略)。
ショールーミングもオムニチャネルの一側面に過ぎない
岡田: 今、大手家電量販店などでは「ショールーミング」という現象が問題視されていますよね。実店舗を家電を吟味できる「ショールーム」のように扱い、購入は割安になる別のオンラインショップで、となると実店舗は「たまったものじゃない」ということになります。
消費者側にしてみれば、「実物に触れたり試着できたりするが、値引きが少ない実店舗」と「値引きは大きいが、カタログだけでの購入に不安が残るネットショップ」で、いいとこ取りした結果なのですが……。
向畑: そうかもしれませんが、じゃあ、岡田さんが商売を始めたとしましょうか。実店舗のオカダ商店本店のほかに「MakeShop」を使ってオカダ商店EC支店も出したとします。岡田社長にしてみたら、そのどちらでお客さんが購入してもいいじゃないですか。
実店舗の店長視点に立てば「ネットショップに客を取られた」となるかもしれませんが、ほかにも競合企業がたくさんいる状況で「ネットだ、リアルだ」とやりあっている場合じゃないハズですよ? 今、私たちが進めているオムニチャネル戦略とは、購買行動のすべてのシーンでお客さんをどれだけ囲い込めるかというものです。
岡田: うーん。消費者側からしてみると、「囲い込まれる」というのは、あまりうれしくない気がしますが……。消費者にとってどんなメリットがあるのでしょうか?
向畑: 例えば、リアルとネットをつなぐ施策の1つ「クリック&コレクト」。ネットショップで注文して、実店舗などリアル側で受け取るというものです。お客さんが「あ、これ、ほしい」という商品をネットで注文して、店舗に行けば確実に手に入れられます。
逆に、実店舗から積極的にネットショップに誘導する例もあります。米国の「メーシーズ(Macy's)」という百貨店では、実店舗とネットショップの在庫を一元管理しています。店舗にスマホやタブレットから商品検索ができて、店頭にない商品でもネットショップに在庫があれば、お客さんはそこから買えます。場合によっては「ネットショップで買ったほうがセールで安いですよ」と伝えることもあるそうです。その結果、売り上げが増えました。
岡田: 「リアルか、それともネットか」ではなく、それぞれの強みを生かして顧客満足度を上げていく戦略ですね。それが売り上げ拡大にもつながる、と?
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