3つの「ち」を意識する:一生食える「強み」のつくり方(1/2 ページ)
会社や仕事などの「戦う土俵」を決めるとき、私たちは取り巻く環境の変化を見据え、それらを参考にしています。そのとき、3つの「ち(血、地、知)」を意識してみましょう。
集中連載「一生食える「強み」のつくり方」について
本連載は、堀場英雄著、書籍『「プチスキル」をかけ合わせて「レア人材」になる 一生食える「強み」のつくり方』(日本実業出版社)から一部抜粋、編集しています。
ビジネスの世界では長らく、習得に1万時間(10年)を要する「プロスキル」が重視されてきました。しかし、会社もスキルも「突然死」しかねないこれからの時代には、2500時間(2年半)という短時間で習得できる「プチスキル」が不可欠です。
本書では「プチスキル」の選び方を「戦う土俵(仕事)」「戦う武器(スキル)」に分けて説明し、その学び方を3ステップで紹介。事例を含めた試し方を具体的に学んでいきます。
習得した「プチスキル」を複数かけ合わせることで、他のビジネスパーソンにはない「強み」を持った、「レア人材」になれるのです。
「戦う土俵」は3つの「ち(血・地・知)」を意識して選ぶ
まずはマクロな視点で、環境変化から見てみましょう。私たちの働く環境は、今までの10年間で大きく変化し、グローバル化とIT化の進展という2つの変化が顕著でした。
グローバル化では、例えば、新興国人材の活用が進み、工場の多くが海外に移りました。これらの変化の中で先進国企業の資本を投下された新興国ではさまざまなチャンスが生まれ、中間層(年間所得が150〜350万円、1万5000〜3万5000ドルを1ドル=100円換算)と呼ばれる人たちが出現してきました。また、2010年には2億5000万人だった中間層は、2020年には6億4000万人になるというデータもあります(「経済産業省の新中間層獲得戦略 アジアを中心とした新興国とともに成長する日本」)。
上の図は少し古いデータですが、「World Distribution of Income(世界の国別所得分布)」という、コロンビア大学の論文に掲載されていた図表をもとに作成したものです。この図から、年間の所得分布は日本や米国などの先進国は100万〜1000万円の所得の範囲に、インドや中国は10万〜100万円の範囲にほとんどがいることが分かります。
成長いちじるしい新興国にいる彼らは、映画「ALWAYS 三丁目の夕日」に描かれているような、がんばればがんばるほど生活がよくなる環境にいるので、非常にモチベーションが高い人たちです。例えば、この図から年収100万円の人は世界中に日本の人口と同じ1億人以上いると分かります。海外にアウトソースできる仕事はどんどん海外に流出し、この新興国の人材がこれから私たちの仕事を奪いに来るのです。
IT化では、モバイルインターネットの時代が到来し、世界中の人たちがつながり、情報を共有し、誰でもどこにいても必要な情報を入手できるようになりました。各種クラウドサービスの充実も大きな変化でしょう。
マーク・ザッカーバーグ氏がハーバード大学の学生が交流を図るための「ザ・フェイスブック」のサービスを開始したのが2004年でした。iPhoneは米国で2007年6月29日に発売されました。ネットワークの通信環境も大幅に高速化しています。クラウドソーシングなどを活用すれば、個人でも世界中の人たちにプログラミングやロゴデザインの仕事の発注が可能になりました。
これからの10年もこの流れは変わらず、さらに変化は進むと考えられます。つまり、新興国の優秀な人材との競争はますます激化するでしょう。このような環境変化を見据えた上で、私たちはどう仕事を選べばいいのでしょうか?
勝負の定石は、勝てる場所を選び、得意なスキルを用いて有利に戦いを進めることです。日本人が有利に戦える仕事があるなら、それをかけ算しない理由はありません。これがグローバルな環境での過当競争を避けるコツです。
戦う土俵(会社や仕事)は、日本人にとっての優位性の有無の度合いに応じて大きく3つの分類があります。それを3つの「ち」と呼びます。日本人に有利なものから順番に、「血」、「地」、「知」です。
1つめの「血」はもっとも日本人であることが有利に働くため、グローバルな競争にそもそもさらされずに有利に戦える可能性が高い仕事です。究極は日本人であることが仕事を得る条件になっている場合です。
2つめの「地」は、土地固有の事情にしばられる仕事で、その土地に長く住んでいる土地勘がある人や、その土地の独自のルールに習熟している人が有利になる仕事です。この2つの「血」と「地」の土俵は、日本人プレミアム(日本人特有の強み)をかけ算することで、グローバル化、IT化の影響をそれほど受けない仕事です。
一方で、3つめの「知」は、日本人だからという優位性がない戦いになります。例えばグローバル企業で働くような場合です。
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