宅配ピザは40分で届けなさい――マッキンゼー流思考術:マッキンゼー流入社1年目 ロジカルシンキングの教科書
わたしたちはつい「知ってるつもり」「分かってるつもり」で物事をとらえがちです。しかし、クリティカルに思考する人は物事を深く考えます。どのように深く考えるような人になれるのでしょうか。その3つの基本姿勢のうち、1つを紹介します。
連載「マッキンゼー流入社1年目 ロジカルシンキングの教科書」について
本連載は、大嶋祥誉著・ソフトバンククリエイティブ刊『マッキンゼー流入社1年目 ロジカルシンキングの教科書』から編集転載しています。
世界最強のコンサルティングファームと呼ばれるマッキンゼーの新入社員は、ロジカルシンキングを叩きこまれます。「直感」や「いい感じ」に頼らず、クリティカルに考え(深い洞察による自分の考えを持ち)、ロジカルに展開する(分かりやすく伝える)ことがなぜクリエイティブであるといえるのでしょうか。
本連載では、ロジカルに展開する前の段階――多くの人があまり掘り下げることなく当たり前のような答えを出してしまう「思考」を見直し、クリティカルに考える(考えを深くする)ための3つの基本姿勢と7つの習慣について掲載します。
このほかにも本書では、
・論理思考は難しくない! ロジシンの基礎講義
・ロジカルに展開する わかりやすく伝える方法
・クリティカルに発想する それ、いいね
・クリシン+ロジシンで独創的な飛躍をする
方法について例を交えながら説明しています。
当たり前のように出てくる答えや、当たり前のように考えてしまうことを、「それは本当?」と一歩踏み込んで掘り下げるために、日ごろから身に付けておきたいのが「クリティカルな思考」の3つの基本姿勢です。
- 目的は何かを常に意識する
- 思考パターンの枠を意識する
- 問い続ける(So What? Why So?)
目的は何かを常に意識する
自分が今やっていること、これからやろうとしていることは、そもそも「何のためなのか」という目的を常に意識する。
例えば、近所のコンビニに牛乳を買いに行くという「目的」なら、そのために「普段着で財布と携帯電話やスマートフォンと鍵ぐらいを持って出かける」という行為をそれほど考えなくてもできるでしょう。
コンビニに牛乳を買いに行くという「目的」なのに、「時間をかけておしゃれをして旅行用のスーツケースを持って出かける」なんていう目的からズレたことはしないですよね。
ところがビジネスにおける問題解決では、皆さんが思っている以上に本来の目的からズレた思考や行動をしてしまっているケースがあります。
ある宅配ピザチェーンの例です。
宅配ピザチェーンBでは「アツアツ焼き立てピザを注文後30分以内にお届け」ということを売り文句にしていました。しかし、注文が多いときには、ピザの製造やデリバリーが間に合わず、30分以上かかってしまうケースがあり、注文客からのクレームに対応するのが大変でした。
そこでデリバリー要員を増やしたり、注文の多いメニューのピザは見込みで焼いてストックしたり、30分以上かかったときには次回割引券を進呈したりしていましたが、やはりクレームは減りません。スタッフもそうしたクレーム対応が不満で定着率が悪くなっていったのです。
さて、この宅配ピザチェーンの、そもそもの「目的」は何でしょうか? クレームは確かに減らしたいものですが、本来、注文客が望んでいるのは「所要時間の短縮」ではなく「アツアツのおいしいピザを家で手軽に食べたい」ということ。
だとすれば宅配ピザチェーン側の目的は「アツアツのおいしいピザをできるだけ早くお届けする」ことですよね。そのために所要時間が多少長くなったとしても、30分で少し冷めたピザが届くより、40分で「アツアツのおいしいピザ」が届くほうが注文客の満足度は高いはずです。
実際、30分という縛りをなくし、40分前後でお届けするというオペレーションに変更するとクレームはほとんどなくなりました。
つまり、30分以内にお届けするということを目的にするのをやめて、本来の目的に立ち返ったことでクレームの発生要因そのものをなくすことができたわけです。
このようにビジネスでは、目の前の課題や問題に対応することが「目的」になっていることがよくあります。その作業が日常的になっていると、なおさら、そのことについて誰も疑問を持たなくなるものです。
しかし、本来の目的から考えて「本当に必要なの?」というクリティカルな思考をすれば、その作業そのものをなくしてしまっても問題ない場合もあることを知っておいてください。
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