なぜセレッソ大阪は、香川真司を世界的プレイヤーに育てられたのか?:ベストチーム・オブ・ザ・イヤー(1/2 ページ)
香川真司、清武弘嗣、乾貴士――。セレッソ大阪から、多くの日本代表選手が輩出されているのはなぜなのか? セレッソ大阪スポーツクラブ代表理事の宮本功氏に、結果を出す人材としくみの作り方を聞いた。
「ベストチーム・オブ・ザ・イヤー」について
チームで仕事やプロジェクトを進める際の考え方やヒントを探る本記事「最強チームの作り方」は、「ベストチーム・オブ・ザ・イヤー」の「結果を出す人材としくみの作り方ーーなぜセレッソ大阪は、香川や柿谷を世界プレイヤーに育てられたのか?」から編集・転載しています。
ベストチーム・オブ・ザ・イヤーは、その年に最もチームワークを発揮し、顕著な実績を残したチームを毎年表彰するアワードです。サイトでは日本の組織が持つべき「チームワーク」について、精神論ではなく、組織とメンバーがともに成長できる論理的な方法を考え、提案しています。
香川真司(マンチェスター・ユナイテッドFC)、清武弘嗣(1.FCニュルンベルク)、乾貴士(アイントラハト・フランクフルト)、最近では柿谷曜一朗、山口蛍、扇原貴宏といった若手まで、なぜかセレッソ大阪から多くの日本代表選手が輩出している。これは単なる偶然ではない。実はセレッソこそ、戦略的に日本代表になれる選手を育てるシステムをもった日本で唯一のサッカークラブだからである。
2006年、J2に降格し、低迷していたセレッソが「育成型クラブ」へ一気に転換したことで、今ではクラブ自体も注目される存在に生まれ変わった。この育成部門を運営する中心人物が、セレッソ大阪の別法人で、セレッソ大阪の普及育成事業を担う一般社団法人セレッソ大阪スポーツクラブ代表理事の宮本功氏と、アカデミーダイレクターの大熊裕司氏だ。
育成部門を独立させたことでクラブを再生させた両氏の手法は、実は今の若手ビジネスマンが学ぶべきヒントがたくさん隠されている。チームのつくり方やリーダーのあり方、チームプレイの生み出し方など、永続的に強いチームをどうつくればいいのか、宮本氏に聞いた。
プロフィール
宮本功(みやもと・いさお)
1970年生まれ。徳島県出身。高知大学卒業後、セレッソ大阪のヤンマーディーゼルサッカー部に入部。引退後の1995年にフロント入り。セレッソ大阪広報部長、普及育成部長などを経て、一般社団法人セレッソ大阪スポーツクラブ代表理事。
現在ではなく「将来どうなりたいのか」 チームの目標を数十年後に設定
――2006年にJ2に降格し、通常のクラブならすぐにでも翌年のJ1への復活を目指すはずが、反対に中長期の育成力の強化に方針を切り替えました。その理由とは何でしょうか。
まず私自身は出戻りなんですね。外から戻ってきたからこそ、チームをどう強化すればいいのか、気付くことができたのです。当時のセレッソは2005年に優勝しかけて、翌年ジェットコースターのようにJ2に降格し、奈落の底に堕ちてしまった。しかも、おカネがない。
そんなとき通常のサッカークラブなら、選手を売って、なんとかおカネを用立てます。その資金で有力な選手をスカウトしてチームを強化する。でも、そういったビジネスモデルはもう規模の小さいクラブでは限界が来ていると思っていました。
もし自家栽培のように自分の畑があれば自給自足できる。でも、われわれのチームは自分の畑があるのに本格的な畑にせず、わざわざスーパーマーケットで野菜を買っていたのです。しかも、おカネに限りがあるので高級食材は買えない。
高いクオリティーをもった選手を得るにはこのままでは限界がある。だったら、高級食材になるような人材を育てればいいと思ったのです。
――育成部門は当然ながら、すぐに結果を生みません。何年後かを見据えてという目標は最初からあったのですか?
もちろん、すぐに費用対効果は出ません。5〜10年という長い期間で見ないといけないということは分かっていました。
しかし、長期で見るにしても最初から具体的な目標があったわけではありません。なぜなら、自分の畑にあまりにも石がいっぱいある、水がきていない、土が適してないなど、環境がほとんど整っていなかったのです。現状の環境を改善すべきことが盛りだくさんだったため、具体的な目標を掲げる段階にまだ至っていなかったのです。
今は、2030年までに世界基準の「育成型クラブ」をつくる、という目標を持っています。
――2030年までに、というのはなかなか長いですね。
確かに長いですね。でも現在活躍している柿谷曜一朗選手は、4歳からセレッソに在籍しているんです。去年23歳でブレイクしたことを考えれば、彼を成長させるためには、19年近くの歳月がかかっている計算になります。長いスパンで考えないと、人は育たないのです。
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