マンガ『東京トイボックス』に学ぶ、ブラック企業とクリエイティブな熱狂集団を分けるたった1つの違い:サイボウズ式(1/3 ページ)
悪名高きブラック企業と、良質なコンテンツを生み出す熱狂的な集団との違いは何でしょうか? 今回は、ゲーム業界で働く人たちを描いたマンガ『東京トイボックス』を題材に考えます。
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本記事は「サイボウズ式」で掲載した記事“「東京トイボックス」に学ぶ、ブラック企業とクリエイティブな熱狂集団を分けるたった1つの違い”を一部抜粋・編集して掲載しています。
「マンガから学ぶチームワーク」シリーズ。今回は、ゲーム業界で働く人たちを描いた『東京トイボックス』(全2巻)を紹介します。
この作品の続編にあたる『大東京トイボックス』(全10巻)は、2012年のマンガ大賞で第2位にも選ばれている人気作品。弱小ゲーム会社を率いる天才肌のクリエイター天川太陽(てんかわ たいよう)と、大手ゲーム会社幹部を務める仙水伊鶴(せんすい いづる)の愛憎まみれた人間ドラマも読みどころです。とはいえ、なんといってもコンテンツを作り出すことの苦労、寝食忘れて働くマンガの中のハードワーカーたちの姿を見ていると、多くのことを考えさせられます。
法政大学の梅崎修先生、悪名高きブラック企業と、良質なコンテンツを生み出す「熱狂」集団に違いはあるのでしょうか。
3日間徹夜。なのに、楽しそう
梅崎: まず感じたのは厳しい職場環境なのに、若い人たちには魅力的に見えるんだなということですね。3日間徹夜とか出てきますし、かなり問題がある。だけど、何か楽しそうだと思ってしまう。これがこのマンガで描かれているゲーム制作会社・スタジオG3です。
裏を返せば、若い人たちにとっては労働条件がしっかりしていてもその範囲内でルーティンの仕事をしているというのが、楽しく見えないということなんでしょう。
例えば主人公の太陽が、ほぼ完成したゲームソフトの仕様を変更すると宣言する場面が幾度となく出てきます。必死になってプログラミングをした努力も水の泡。ただ、周りのスタッフは不満をブーブー言いながら、どこか嬉しそうに再び作業に入っていきます。
梅崎: 太陽のこだわりによって皆に一種のすごい過剰負担が生じるわけですが、バーンとはじけて、超ハイテンションの集団になっていきます。フランスの社会学者のデュルケムは、このような現象を「集合的沸騰」と言っています。これは昔の社会でいう「お祭り」ですね。
1つの集団や組織、集合体には基本的に「ハレとケ(※)」という日常と非日常があって、非日常の経験を定期的に作ることで、そのコミュニティを維持してきました。現代社会では無くなってきていますが、仕事においても、非日常を作り出すというのは効果があるのです。
“集合的な沸騰”がクリエイティビティを生み出す
確かに仕事の場面でも、みんなでワーッと1つのことに集中して取りくんでいるとき、「締め切りや納期なんて怖くない、もっといいものを作るために頑張ろう!」なんてノリになること、よくありますよね。
梅崎: 1人で急にテンションを上げるのは難しいけど、集団で沸騰するというのは簡単。お互いに影響を与えているうちに超ハイテンションな集団が生まれるということなんですよ。集団がそうなると個人の持っている以上の能力を引き出していく。なので、集合的な沸騰は創造的な沸騰になってくるわけです。
いいアイディアを出すときも、時間をかけたからといっていいモノが出てくるわけではない。むしろテンションを上げた方がいいから、集団がお祭り状態になったほうが、体は疲労していてもすごくクリエイティブになる可能性が高いんです。
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