目の前の人は「一番大切な人」――気がきく人の考え方:「気がきく人」の習慣(2/2 ページ)
伝わるか伝わらないかにかかわりなく、まごころを込めて接していれば、人を喜ばせることができ、仕事もプライベートもうまくいくのです。
心を込めて接することで、商いはうまくいく
改めて、何をして「よろこばせごっこ」をしていますか? と問いかけられると、思わず身構えてしまうかもしれません。自分は何もできていないかも……と、不安になる人もいるでしょう。しかし、難しく考えないでください。
人を喜ばせるというのは、何か特別な仕掛けが必要なものではありません。
例えば、荒木町にある私の行きつけの居酒屋のオヤジさんは、ご本人が自覚されているかどうか分かりませんが、「よろこばせごっこ」の達人です。
店ののれんをくぐった途端、オヤジさんはいつもニコニコとすばらしい笑顔で私を迎えてくれます。それはお店でだけでなく、近所を歩いているときも同様です。
こちらに気づくと、ニコッと笑って声をかけてくれます。
「ひろしちゃん! いつも来てくれてありがとうね。ひろしちゃんたちが、うちで楽しそうにお酒を飲んでると、俺まで幸せになるから感謝しているよ」
私はこの言葉を聞くたびに、ほっこり温かな気持ちになり、幸せを感じます。それはオヤジさんが社交辞令ではなく、本気で言ってくれていることが伝わってくるからです。
オヤジさんにとって、お客様に感謝の気持ちを伝えるのは当たり前の習慣になっている。だから、その言葉には“軽快な重み”があり、こちらの心を動かすのです。まず、身近なところから始めてみてください。
私は料亭で育ち、三越に入り、ディズニーにも渡りました。その中でも、とりわけ実家の料亭と荒木町で学んだのは、人を喜ばせるための“心の置き方”です。
それは宗教的なものではありません。なぜなら、料亭も、三越も、ディズニーも、お客様を喜ばせることで対価を得ているビジネスだからです。商売とまごころは並立する、といえばいいでしょうか。
心を込めて接することで、商いはうまくいくのです。
例えば、私の祖母は、橘家からお帰りになるお客様をかならず店の外に出てお見送りしていました。これは料亭や旅館など、女将のいる商いではめずらしいことではありません。しかし、それでもお客様に支持される店もあれば、廃れていく店もあります。
その違いは、案外、次のようなところにあるのかもしれません。祖母は、お客様におじぎをするとき、こんな気持ちでいると言っていました。
「お客様をお見送りするときは、幸せなご縁を、永いご縁にしていく心でお見送りをするものですよ」
ご縁を得て、幸せをいただいたことに感謝し、またどなたかとご一緒に来てくださる永いご縁になるようにと思いを込め、挨拶しているというのです。
もちろん、その思いが相手に伝わるかどうかは分かりません。
それでも、お見送りをする側が一期一会を重んじ、ご縁を大切にするという姿勢を持っているかどうかによって、結果も変わってくる不思議。気持ちよく見送られたという感覚が、お客様にまた足を運びたいと思わせるのです。
これが心の置き方というものです。あなたも明日から「おはよう」「さようなら」「お疲れさま」といった挨拶に、一層の心を込めてみましょう。“軽快な重み”が相手に伝わるはずです。
まとめ
どうすれば目の前の人が喜んでくれるかをつねに考えることで、仕事もプライベートもうまくいく。言葉には、心を込めよう。
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