「経理はつぶしがきく」って本当ですか?:頼られる人になる「経理アタマ」の鍛えかた(2/2 ページ)
これから経理に携わるなら、ココを知っておいてほしい――。退職しても引き留めにあわないような典型的“ダメ経理”から、“デキる経理”へと変身した経理マンが、これからの経理に必要とされる“知恵と知識”を伝授します。
例えば、手書きの帳簿を見る機会は少なくなりました。15年前は手書きで作成した帳簿を改めて会計ソフトに入力する作業がありました。振替伝票はいまだに文具店で販売されていますが、ここ数年、使っている人を見ていません。
「ロータス123」(知っていますか? エクセルのような表計算ソフトで昔はメジャーだったんです)は、Excelに代わってしまいました。私はたまたまロータス123を使いこなすことができたので、最初に入った職場では、“ロータス123に詳しい人”ということで重宝されました。職場の机の上には、2人で1つ共有して使っていた科目印(手書きの帳簿や伝票に科目を押すためのハンコ)が置いてありました。時代がちょっと古すぎましたか?
それでは、直近でなくなったものを挙げてみます。
経理にとって、通帳の動きを確認するのは基本だと思います。ところが、インターネットバンキングが普及してきたので、最近では通帳を記帳して動きを確認することは少なくなり、PCの画面で動きを確認しています。
通帳の動きを会計ソフトに入力する際も、通帳を見ながら1つずつ会計ソフトに入力をしていたのが、インターネットバンキングから通帳の動きをCSVファイルで取り出して、それを会計ソフトにインポートするという方法に変わりました。
さらに2013年に登場した全自動会計ソフト「freee」が、ますます進化してインターネットバンキングと会計ソフトが連動し、自動的に通帳データを会計ソフトが読み込んで、相手科目を入出金先の名前から類推で選んでくれるようになりました。なんと自動で会計帳簿ができ上がるそうです。
経理からみれば、「入力するのは入出金データだけじゃないでしょ!」とツッコミたいところですが、コンセプトはすごいと思います。実際に仕訳データの7〜8割は入出金の記録ですので、それが自動ででき上がることで、経理が行なう会計ソフトへの入力作業が楽になるのは確実です。
このように、経理の仕事もかなり変化しています。数年前は経理のスキルとして認められていたものが、いまは陳腐化してスキルとして認められないということが発生しているのです。だから経理はつぶしがきかないのだとは思わないでください。
経理は「おいしい」仕事
私は、経理という仕事は「つぶしがきく」と思っています。
経理の仕事は確かに変化しており、経理に携わる人が年々減る傾向にあることも実感しています。それでも経理という仕事自体はなくなっていませんし、これからもなくならないと思います。
経理の仕事の本質は、会社の情報整理であり、主に経営数字に関する情報整理です。なぜ情報を整理する必要があるかというと、それは経営を管理する必要があるからです。経理が情報整理した数字は、経営者や他部門の管理責任者が会社の状況を把握するために必要なものです。そして、経理は会社の偉い人たちが欲しがっている情報を1番先に知ることができます。
《会社という生き物のリアルタイムで起こっている事象を、数字という客観的なもので眺めることができるのです。》
興味があれば、「でき上がった経営数字を経営者や経営幹部の人がどのように分析しているのか?」「経営数字を見てどのような行動を起こしたのか?」を、間近で見ることができるのです。この立場、おいしくないですか?
数字をただ集計しているだけでは分からないのですが、でき上がった数字を経理が自ら分析してみれば、経営者の立場になって考える訓練ができます。もし経営者から意見を求められる機会を得たら、そこで自分が考えた仮説を披露してみるとよいでしょう。
最初はうまくいかなくても、繰り返しているうちに、経理以外の仕事をしても、経理時代の経験を活かすことができる、つぶしがきく人になることができるのではないかと思います。
なぜなら、経理は会社のことを経営者の次に理解している人材になっているはずだからです。また、経理の人数が少なくなっていることは、逆に経営者のそばに近づけるチャンスでもあるのです。
著者プロフィール:佐藤昭一
税理士。税理士事務所勤務、リサイクルショップ経営等を経て2006年佐藤税理士事務所を設立。ITを駆使した生産性向上支援、経理業務効率化等支援が得意。2010年にはAll Aboutプロファイルで人気ナンバーワン税理士に。
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