なぜ、あの人のプレゼンはうまくいくのか――ポイントは“第一印象”にあり:表現のプロが教えるスピーチの兵法(2/2 ページ)
同じ内容の話をしても、人によって説得力や影響力に差が出ることがあります。そんなとき、「世の中、不公平だ!」とぼやいて終わらせるのは未熟者がすることです。「対人認知」の心理を押さえて、状況を変えていきましょう。
他人はあなたの印象をどのように形成していくか
「貫禄がないと言われる」「子ども扱いされる」「周りから軽く扱われる」「そもそも話を聞いてもらえないことが多い」といった方、ここでがっかりしないでください。いくらでも立て直すことができます。
今回、覚えてほしいこと、それは「対人認知」の心理です。
精神医学の研究家シュナイダーは、人の印象は図のような6つの段階を踏んで認知されると説きました。
例を挙げて説明しましょう。
第1の「注意」は、他人があなたの存在に気がつく段階です。パッと見た外見から、「背が高い」「ネクタイが曲がっている」といった特徴をつかみます。
第2段階「速写判断」は、第1段階で押さえた外見からどんなタイプかを判断します。「ネクタイが曲がっているのでルーズな性格ではないか」と推論するのです。
第3段階「原因帰属」では、あなたの実際の行動の原因を推論します。たとえば、あなたから提出された文書の綴じ方が左右逆だった場合、「作業の詰めが甘い人らしい」と受け止められます。
第4段階「特性推論」では、第3段階で押さえた特性から他の特性も推論します。「作業の詰めが甘い→信用できない人」と思われる可能性があります。
第5段階「印象形成」では、これまでに認知した事柄を総合して、あなたの全体的な印象が決められてしまいます。「背が高く、ルーズな性格で、作業の詰めが甘い、信頼性に欠ける人」です。文書の綴じ方が違っただけで、このように不本意な印象を相手に与えてしまう恐れがあるのです。
最終的には第6段階の「将来の行動の予測」へと進みます。あなたの印象から今後の人間関係を定めるのです。この場合、あなたは重要な仕事を任せてもらえないかもしれません。
「こう思われたい」という人物像をまず言葉で考えよう
不本意な人間関係を築かないためには、相手に植えつけたい自分の印象を自ら決めてしまいましょう。受け身ではなく、能動的にいくのです。
あなたはどんなビジネスパーソンになりたいですか? 信頼できる人、親しみやすい人、ユニークな人、力強い人……、何でもかまいません。自分が活動する場において、周囲からどんな人物と思われたいか、具体的に言葉で考えてみてください。
次回は、その人物像を実際に表現するための方法をお伝えします。
今月のポイント
今後、自分は周囲からどんな人物として認識されたいのか──。
「自分の印象」を決めるのは、他人ではなく、あなた自身です。
著者プロフィール:矢野香
キャスター歴17年。主にニュース報道番組を担当。大学院では心理学の見地から「話をする人の印象形成」を研究。現在は、政治家・経営者・管理職を中心に「信頼を勝ち取るスキル」を指導。著書に『その話し方では軽すぎます! 〜エグゼクティブが鍛えている「人前で話す技法」』がある。著者オフィシャルサイト
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