人は、ゼロから思いつけない:困っている人のための企画術(1/2 ページ)
人の頭というのは、必ず、何かから何かを思いつくようにできています。ゼロから何かを思いつくようにはできていません。何かを考えようとした瞬間に、過去の何かを使って考えている――それが人間の頭なのです。
連載:困っている人のための企画術
この連載は書籍『困っている人のためのアイデアとプレゼンの本』(日本実業出版社)から抜粋、再編集したものです。
すごいアイデアを思いついて自信満々で発表したのにスルーされてしまった……。こういうケースは少なくありません。アイデアが支持され印象に残るかどうかは、内容の善し悪しに加え、段取り、流れやタイミング、そしてプレゼンのしかたなど、さまざまな要素に左右されます。
本書は、BOSS「宇宙人ジョーンズ」やジョージア「明日があるさ」などのヒットCMを生み出した著者が、アイデア出しとプレゼンの方法で困っている人のために書いた本です。
今でこそ多くの人気CMに携わっている著者ですが、「人とのコミュニケーションをとるのが苦手」と公言するように、実は著者自身がアイディアやプレゼンで「困っている」人でした。そんな著者が伝えるのは、
・「プレゼンがうまそう」という感じを出さない
・人は、自分にできることしか、できない
・説得しないで説得する
など、ダメな人、苦手な人、困っている人でも、自分なりのやり方を見つけられます。数々のほろ苦い経験をもとに、そのままま役立つ「アイデアの出し方」と「伝え方」を紹介します。
誰もが「何か」から「何か」を思いつく
人の頭というのは、必ず、何かから何かを思いつくようにできています。何もないところ、ゼロから何かを思いつくようにはできていません。これは、私が20年ぐらい「企画」という仕事をやってきての実感です。
日本史などの授業が嫌いな人は、「歴史には過去のことしか書いてないから、未来のことを考えるのには役に立たない。だから意味がない」と言うことがあります。一瞬、「なるほどー」と納得しそうになりますが、では、未来のことはどうやって考えるのでしょうか?
結局、未来のことであろうと、考えるための材料は「今、あるもの」。つまり、過去の集積から考えるしかないのです。何かを考えようとした瞬間に、過去の何かを使って考えている――、それが人間の頭なのです。
広告の企画の現場でも、「誰も見たことがないようなまったく新しいものを思いつくためには、過去の何も参考にはならない」と、ゼロから考えようとする人がいますが、そうすると絶対に何も思いつきません。繰り返しになりますが、人間の脳というのは、好むと好まざるとにかかわらず、そういうふうにはできていません。
まったく新しい、と感じられるアイデアも、必ず、過去の何かだったり、何かと何かの新しい組み合わせから生まれてきています。
広告を企画するときに使う過去の材料には、もちろん「過去の広告」もあります。いろんな人たちが、同じように真剣に頭を悩ませてつくりあげてきたのですから、自分よりも先行して考えてくれた部分を活用します。それで、こちらの企画するプロセスが少し省けたり、それをヒントにまったく違うことを思いついたり――ということも、よくあることです。
私が知っている範囲でも、優秀なクリエイターに限って、過去の広告に異常にくわしかったりします。過去の広告を知るには、例えば『ACC年鑑』や『コピー年鑑』、『ADC年鑑』など、いろいろ参考になる本がでていますから、図書館で見たり古本屋をのぞいたり、ネットで検索して買うのもいいのではないでしょうか。
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