人は、ゼロから思いつけない:困っている人のための企画術(2/2 ページ)
人の頭というのは、必ず、何かから何かを思いつくようにできています。ゼロから何かを思いつくようにはできていません。何かを考えようとした瞬間に、過去の何かを使って考えている――それが人間の頭なのです。
企画とは、記憶である
そしてもちろん、企画する際に使う過去の材料というのは、それだけではありません。企画するその人が過去に経験したことすべてが、材料になりうるわけです。
それは、読み終えた本や鑑賞した映画、あるいは子どものころの体験や昨日誰かに言われたひと言かもしれません。そのすべてが材料となり、企画は生まれます。
そういう意味では、「企画とは、記憶である」とも言えます。過去の記憶のすべてが企画の材料になる、というか、それ以外に企画の材料というのはありません。
企画というと、なんとなく「天才的なひらめき」とか「感性」などが重要かという気がしますが、「企画は記憶だ」と思えば、どうでしょうか? 自分でもできそうな気がしてきませんか?
例えば、世間では「根にもつタイプ」は、悪いことのようにいわれますが、言い換えれば「ずっと覚えているタイプ」ということですから、企画に向いているかもしれません。
あるいは、いままでの人生がイマイチうまくいかなかった人というのは、順風満帆にいった人よりも「いろんな感情を体験し、記憶している人」であると考えれば、むしろ企画に有利なのかもしれません。
少なくとも私の場合は、以前に紹介したように、暗くてコミュニケーション能力が低くて、小さいころから集団の端のほうにいました。しかし、そのぶん、いろんなことを観察してそれを覚えています。
そんな数多くの、そして、しばしばみじめな記憶を生かしているからこそ、「企画をする」という仕事ができているのだと思います。少し、自分にひきつけて書きましたが、別に不幸じゃないと企画ができない、と言っているわけではありません。
例えば、音楽が大好きな人なら、その好きな音楽に関する過去の記憶が企画の材料になるかもしれないし、お笑いが好きで数多くのギャグを記憶している人なら、それも1つの材料になるでしょう。
そう考えると、過去の記憶がない人なんてそうそういませんから、企画は誰にでもできるとも言えます。
「企画なんて、誰にでもできるんだ」ぐらいに気楽に考えるのは、天才じゃない私たちにとっては、とてもいいことだと思います。
著者プロフィール:
福里真一(ふくさと・しんいち)
ワンスカイ CMプランナー・コピーライター。1968年鎌倉生まれ。一橋大学社会学部卒業。92年電通入社。01年よりワンスカイ所属。
これまで1000本以上のテレビCMを企画・制作している。主な仕事に、吉本興業のタレント総出演で話題になったジョージア「明日があるさ」、樹木希林らの富士フイルム「フジカラーのお店」、トミー・リー・ジョーンズ主演によるサントリーBOSS「宇宙人ジョーンズ」、トヨタ自動車「こども店長」「ReBORN 信長と秀吉」「TOYOTOWN」、ENEOS「エネゴリくん」、ダイハツ「日本のどこかで」、東洋水産「マルちゃん正麺」などがある。
ACC(全日本CM放送連盟)グランプリ、TCC(東京コピーライターズクラブ)グランプリ、クリエイター・オブ・ザ・イヤー、など受賞。その暗い性格からは想像がつかない、親しみのわくCMを数多くつくりだしている。
著書に『電信柱の陰から見てるタイプの企画術』(宣伝会議)がある。
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ライターの松田然さんは、ベンチャーから大企業まで800社以上の取材・広告制作を経験。起業、フリーランス、上場企業、海外企業などのさまざまな働き方を経験し、「挑戦する人のHubになる」をテーマにこれからのライフスタイルのヒントを発信している。 - あなたの企画を“宝石”にする3つのステージ
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