知の巨人・梅棹忠夫に学ぶ、「発見」の書き留め方:知的生産の技術とセンス(3/3 ページ)
今の時代は、どんな情報でも一瞬で手に入る便利な時代です。しかしこの状況は、情報の受け手である私たちに限られた時間でどの情報を受け取るべきか、どう取捨選択するかという問題をも引き起こしています。
記録でセンスを生み出すポイント
普段は行かない、遠い外国のフィールドに立てば、誰であれたくさんの情報を記録することになるだろうと私たちは想像しますが、最初の驚きが過ぎ去れば、むしろ記録することは乏しくなってしまいます。
梅棹先生の膨大な記録の背景にあるのは、出会った情報の量というよりも「なにほどかの感動をともなった発見」、つまりは日々の好奇心の総量なのです。
私たちも日常においてさまざまな情報に触れますが、その多くは単純なニュースのように、私たちの心に何の感興(かんきょう=何かを見たり聞いたりして興味がわくこと)も起こすことなく過ぎ去っていきます。ここで「もっと情報をたくさん摂取しなければ」と量だけを増やしても、それは時間の浪費になるだけでしょう。
しかし好奇心を持ったものに限るなら、ぐっと記録を本質的なものにフォーカスさせることが可能ですし、記録すれば記録するほど自分の好奇心が研ぎ澄まされていきます。記録でセンスを生み出すポイントは、好奇心のあるなしなのです。
情報を記録するのではなく、初めて世界を目にしたような驚きや好奇心を持って自分の「発見」を書き留めること、それがどんな知的生産の技術やツールを解説するよりも先に梅棹先生が強調した情報インプットの大前提と言っていいでしょう。
「知的生産の技術とセンス」出版記念セミナー SCHOOL開催
「知的生産の技術とセンス 知の巨人・梅棹忠夫に学ぶ情報活用術」の出版を記念したセミナーが11月26日午後7時半からデジタルハリウッド大学大学院 駿河台キャンパスで開催されます。
ゲストは「Lifehacking.jp」を運営する堀正岳氏、ジャーナリスト・まつもとあつし氏、「データエクスチェンジ・コンソーシアム」の理事長を務める橋本大也氏、「note」のピースオブケイク代表取締役CEO加藤貞顕氏。一億総クリエイター時代に自分をどのように成長させていけるかのヒントを学べます。
著者プロフィール:
堀正岳(ほり・まさたけ)
1973年アメリカ・イリノイ州生まれ。理学博士。北極における温暖化の影響評価と海洋観測を中心とした研究活動をするかたわら、「ライフハックは人生を変える小さな習慣」をテーマに最新のライフハックや仕事術、ツールなどをブログ「Lifehacking.jp」で紹介。Evernote ライフスタイル アンバサダー。ScanSnapアンバサダー。著書に『できるポケット Evernote 基本&活用ワザ 完全ガイド』(共著)ほか多数。
まつもとあつし
1973年大阪府生まれ。ジャーナリスト・プロデューサー。ASCII.jp、ITmedia、ダ・ヴィンチなどに寄稿、連載。万博公園・民博のそばで生まれ育つ。著書に『ソーシャルゲームのすごい仕組み』(アスキー新書)、『LINE なぜ若者たちは無料通話&メールに飛びついたのか?』(マイナビ新書)ほか多数。東京大学大学院博士課程・DCM修士。
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