どんなに憎い人にも優しくする:「のび太」という生きかた
のび太は、どんな相手に対しても心の底から憎んだり存在を否定するような言動は取りません。たまに友だちとケンカすることがあっても、彼の優しさがグループの結束をより強いものにしているのです。
連載:「のび太」という生きかた
この連載は書籍『ポケット版「のび太」という生きかた』(アスコム)から抜粋、再編集したものです。
勉強も運動も苦手でぐうたらしてばかりののび太。でも、映画版で大活躍し、しずかちゃんと結婚し――、実は人生の成功者だったのです。そんなのび太から、無理せずに自分らしく生きて夢まで叶えてしまう方法を学んでみませんか?
本書では、のび太から学べる人生の成功法則を「のび太メソッド」と提唱し、全部で37つ紹介しています。
・完璧をいきなり目指さない
・かっこいい自分を想像する
・直感で判断。とにかく動き出す
・夢は叶うと信じ切る
・自分より、まず他人の幸せを望む・「愛する存在」で心を強くする
など。
この「のび太メソッド」は、どんなダメな奴でも夢が叶う魔法の法則です。みなさんの人生にも役立つヒントがたくさん詰まった1冊です。
「男は強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない」――米国の作家レイモンド・チャンドラー著『長いお別れ』で主人公が言った名台詞です。
しずちゃんのハートを射止めて結婚まで導いたのは、まさにのび太の優しさでした。しかも、彼が仲のいい友だちだけではなく、ときには敵対するような人にまで生来の優しさを発揮することは少なくありません。その優しさは、彼の生活の中で潤滑油のような働きをしており、のび太に楽しく生きるエネルギーを与え続けているのです。
「このかぜ うつします」
のび太のパパは、かぜをひいてしまいます。でも彼は真面目な性格で、「かいしゃ……、かいしゃ」とママに訴えています。そこでのび太は、ドラえもんにひみつ道具「カゼをうつす機械」を出してもらい、パパのカゼを引き受けます。すると、パパはすっかり元気になりますが、のび太は重度のかぜに見舞われます。そこでのび太は、憎らしい誰かにかぜをうつすことに決めました。
最初、しずちゃんが「のび太さん、うちへ遊びにこない?」と誘ってくれましたが、まさかしずちゃんにかぜをうつすわけにはいきません。次に、この機械を持って歩いているのび太を、通りがかったスネ夫が「電話ごっこか? ようちえんのころ、よくやったっけ。のび太にはぴったりかもね」とからかわれたので、早速かぜをうつすことに。でも、スネ夫のパパが心配しているのを目にして反省したのび太は、再度かぜを引き受けてしまいます。
今度はジャイアンに会いました。でも、ジャイアンは「なんだ、おまえかぜひいてるのか? だいじにしろよ、いまのかぜはたちが悪いそうだ。うちにいいくすりがある、持ってこようか?」と普段からは想像できない優しさを見せます。思わずのび太は、かぜもうつさずに通り過ぎるのでした。『ドラえもん(2)(てんとう虫コミックス)』小学館 より
この作品では、のび太の優しさが何度も垣間見えてきます。
のび太の優しさは生まれ持っての才能ともいえるほど優れたもので、どんな相手に対しても心底から憎んだり、存在そのものを全否定するような言動は取りません。のび太も人の子ですから、ときには仲間はずれにしてやろうとか、中傷してやろうとか思うこともありますが、本気になって実行することはできないようです。
またのび太は、ジャイアンの暴力やスネ夫のごう慢な態度の背景に見え隠れする優しさを、的確に読み取るすばらしい感性までも身につけています。とりわけ、大冒険などのストーリーで顕著に見られますが、この作品でもジャイアンが普段なかなか見せない優しさを、のび太は引き出しています。
のび太はジャイアンやスネ夫によくいじめられていますが、野球や何か遊びを始めるときは、いつも誘われる存在です。のび太とジャイアン、スネ夫との間でいつも発生するいざこざは、仲のいい友だちほどけんかが絶えないといった説を裏づけるものでしょう。一見いじめられているようにも見えるのび太ですが、彼の優しさがグループの結束をより強固なものにしているのではないでしょうか。
これは、みなさんの職場や家庭においても同じことだと思います。例えば、職場で同僚や上司が表現する優しさは、協力者や理解者をより増やしたり、職場を魅力あるものに変えるなど、さまざまなプラス効果を生み出しているでしょう。
もちろん、他人から優しくされるのを待つより、自分から優しさを持って人に接したいところです。そんな姿勢で過ごせば、のび太が実現できているように幸せに暮らしながら夢を叶えることにもつながるはずです。
のび太メソッド8
どんなに憎い人にも優しくする。
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