企業競争力の強化・活性化を狙い、特許料引下げへ:注目したい法改正の動向
企業が成長し、市場を獲得していくためには、優れた技術力などを知的財産として有効に活用していくことが重要です。特許庁は企業の競争力強化・活性化を図るため、知的財産権の取得・維持に必要な出願料、特許料の料金改定を検討しています。
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本記事は企業実務のコンテンツ「これからの法改正の動き」から一部抜粋・編集して掲載しています。
わが国の企業が海外企業とのグローバル競争に勝ち抜き、世界の市場を獲得するために重要だとみられているのが「知的財産権」の積極的な活用です。
ただし、知的財産権の取得・維持には出願料、特許料といった負担が生じます。研究開発費の伸び悩みなどで、最近の日本企業の特許出願件数は減少傾向にあります。
知的財産戦略本部が決定した「知的財産推進計画2014」でも、特許料金等の改定について言及されていました。
そこで特許庁は企業競争力強化・活性化を図る観点から、特許料金等の料金改定を検討しています。
このほど特許制度小委員会に、特許料金等の改定についての案が提示されました。
中長期的な収支見通しについて現行の料金体系で試算したところ、特許特別会計全体として歳入の拡大が見込まれたことから、その収入増を財源に、特許等にかかわる料金を引き下げようという動きです。
特許部門における料金引下げ
試算によると、特許部門は今後、中長期的に収入が支出を上回ることが見込まれました。
また、海外企業とのグローバル競争が激化していくなかで、特許権の利用拡大を促すことが競争力強化のために重要であるという観点から、特許出願料と特許料を一律に一定程度引き下げる方針が示されています。
商標部門における料金引下げ
商標部門も収入が支出を上回ると見込まれる分野です。また、商標は製造業や大企業・グローバル企業に限らず、サービス業や中小企業等にも幅広く活用される知的財産権です。
その利用拡大を促すことは、わが国経済の活性化を推進するうえで重要であるという観点から、商標設定登録料と更新登録料を一定程度引き下げる方針が示されています。
下げ幅は1〜2割か
引下げの具体的水準については、特別会計の中長期的な収支見通しを踏まえて決定するとされており、下げ幅は1割から2割程度になるようです。早ければ2015年中には引下げが実現しそうで、研究開発投資への好影響が期待されます。
知っておきたい法改正動向
医療保険制度改革の取組み
社会保障審議会医療保険部会では、任意継続被保険者制度について、被保険者の適用期間の上限や標準報酬月額の算定方法の見直しが論点になっています。
また、高齢者医療確保法を改正し、75歳以上の後期高齢者に対して現在は努力義務にとどめている健康診査を義務付ける等の案が挙がっています。
サービサーの機能拡大
自民党の事業再生・サービサー振興議員連盟が、債権回収会社の取扱対象を拡大するサービサー法の改正案をまとめました。債権回収会社が電気・ガスの未払債権等も買い取って回収業務を行なえるようにする、といった内容で、2015年の通常国会での成立を目指します。
墜落防止措置強化
労働安全衛生規則が改正され現場の安全強化が図られます。労働者を足場の組立て、解体または変更の作業に就かせる際の特別教育を義務付けたり、作業床に係る墜落防止措置の強化が求められます。
日本貿易保険を特殊会社化
政府は独立行政法人日本貿易保険について、国が全額出資して特殊会社化し、あわせて貿易再保険特別会計を廃止して、経営合理化と業務拡充を行なうとしています。
その根拠となる改正貿易保険法案を2015年の通常国会に提出する予定です。
年金資金運用の組織見直し
公的年金資金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の組織改革が検討されています。政府からの独立性を高めるために、複数の理事による合議制を導入する等の案が検討されています。
地銀再編の促進
金融庁は地方銀行の再編のための規制緩和を進める方針です。グループ銀行の運用部門を一元化して運用効率を向上できるようにするなど、銀行法の改正も含めたルールの見直しを検討しています。
現物給与の価額引上げ
健康保険などの標準報酬月額等の決定にあたって通貨以外のもので支払われる現物給与の価額は厚生労働大臣が定めることになっています。
食事で支払われる報酬等についての現物給与価額が、2015年4月1日から改定される予定です。
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