失敗し続けてきたナレッジ共有、変えるのは「いいね!」世代?:半径300メートルのIT
FacebookなどのSNSの普及で一般的になってきた「いいね!」ボタン。社内のナレッジ共有の課題を解決する切り札になるかもしれませんよ。
Facebookにはいろいろなタイプの投稿が流れてきます。家族のちょっとした出来事や猫が眠る姿。写真と一緒にちょっとしたひとことが投稿され、「いいね!」と反応する。筆者は、Facebookは知り合いと緩くつながれることが他のSNSとの違いだと思っています。
先日、ちょっと面白い出来事がありました。投稿された写真は、家族の小さな娘さんが描いた1枚の絵。娘さんが「うまく描けたのでFacebookにアップしろ」と懇願したそうです。どうやらFacebookのことを褒めてもらえるツールだと思ってるとのこと。なるほど、これには思わず「いいね!」と思ってしまいました。
「いいね!」の1クリックで情報共有は加速する?
筆者は複数の会社に在籍していましたが、どの会社も同じように社内の情報共有が課題に挙がっていました。「何とかうまく解決する方法はないか?」――新しい仕組みやツールを導入するものの、結局「特定の人だけが情報提供に参加し、ほとんどの社員はしらんぷり」となり、情報提供者が徐々に減って過疎化するという歴史を繰り返していました。
筆者の経験上、30人くらいに1人は情報提供をし続けてくれる人がいて、そのほかの人は最初だけ参加するもののさっとフェードアウトするという印象です。NotesやWikiなどツールが変わっても、人の行動はほとんど変化がありません。多くの現場でも、情報共有の仕組みが作れず、苦労しているのではないでしょうか。
ひょっとすると「情報を共有しても反応がない」ことが原因なのかもしれません。せっかくいい情報を登録しても、良い反応も悪い反応もなく「これは無駄だったんだろうなあ」と思い込み、次からは傍観者となる……という流れです。
それはそうですよね。傍観者の立場で考えると、他者が書いた情報に対してフィードバックすることは面倒くさい作業ですから。
おそらく、Facebookのように「いいね!」と1クリックで反応を示すことができる仕組みがこの問題を解決するのではないかと思っています。コメントを書くほどではないけれど「いいと思った」「読んだよ!」ということが簡単にアピールできれば、普段は積極的に情報提供しない人たちでも「もう1回、何か書いてみようかな」と思うのではないでしょうか。
ツールの開発側もそう思っているのでしょう。ざっと眺めてみたところ、グループウェアの「サイボウズLive」には掲示板やチャットのコメントに「いいね!」機能がありました。
「よし、個人評価に使おう」……というのは厳禁
SNSで慣れ親しんだ「いいね!」の仕組みを、企業内でも使おうという流れは自然なことです。
これから社会人になるであろう今の学生たちは、SNSの世界で「いいね!」やRT、お気に入りを集めてきた人たちです。彼らは、この仕組みをうまく使えば、新たな視点の情報が効率良く集められ、ビジネスの役に立つと思っています。
ただし、「よし! いいねの数を基に成績評価しよう!」と考えるのは早計です。社内の情報共有とは、どちらかといえば業務を超えたボランティアという側面が強くなりがちです。そこに個人評価、つまり「お金」の要素が入ってくると、不正がはびこってしまうのが世の常です。
「いいね!」ボタンの押し合いでコンテンツの質が下がってしまえば本末転倒。あくまで現場でのツールと割り切り、経営陣、上司はそっと見守る程度に参加するのがいいのではないでしょうか?
「いいね」を押すだけという簡単な行為が、多くの方にポジティブな印象を与え、次につながるということを考えると、Facebookを作ったマーク・ザッカーバーグが「Dislike(よくないね!)ボタンは作らない」と断言するのも納得がいきます。
関連記事
- 営業スキルは動画で教え、いいね!で広める――ナレッジ共有の進化形「frontshare」
トップ営業が持つ資料作りやプレゼンのコツ、優秀な店員の接客技術、専門技術を持つスタッフならではスキル――。座学で学ぶよりも、現場スタッフから直接学んだ方が身につく業務現場のノウハウを“手軽に動画で”発信し、共有できるビジネスSNSが登場した。 - うちの会社の「いいね!」と競合会社のそれを簡単に比較する方法
Facebookのいいね!やコメント、シェアの数が多い企業はどこ?――ユニークビジョンが、Facebookページの投稿ランキングを日々集計し、業種別にランキング形式で公開する「Belugaポータル」をオープンした。 - いいね!に依存していませんか? 他者からの評価不安症のあなたへ
私たちは他者からの「評価」を過剰に気にする時代に生きています。定量的に表示される「いいね!」数がすなわち、人とのつながり度合いを示すものとみなす傾向性が強まっています。私はそんななかで、次のメッセージを伝えたいと思います。 - 「いいね!」中毒に気を付けろ!
このところのSNSの大流行、躍進の背景にあるのは、さまざまな場における人の「承認欲求」が満たされない環境なのでないかと感じている。この記事が「いいね!」に隠された中毒性を認識した上で、SNSの使い方を考える1つのきっかけになればいいと思う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.