通信を変える“長楕円軌道衛星”って何だ?

CSやBSのアンテナは,一定の方角に向けて設置しなければならないが,その方角にビルや山があったらお手上げ。しかし,衛星が常に真上にあるとしたら? この理想を叶えてくれるのが“長楕円軌道衛星”だ。

【国内記事】 2001年11月22日更新

 日立製作所の「ユビキタスフォーラム」で気になる展示を見つけた。“次世代の衛星システム”といわれる長楕円軌道衛星通信用のアンテナと車載端末だ。日立はITSを前提に事業を推進しているというが,その応用範囲はかなり幅広い。

長楕円軌道衛星の概念図

 長楕円軌道衛星システムの特徴を一言でいえば,「いつでも真上にある衛星」。赤道上空に位置する静止衛星が仰角45度程度であるのに対し,長楕円軌道衛星システムでは「東京エリアで仰角80度,東京以外でも70度程度を維持できる」(日立)。つまり,高いビルに囲まれたような場所でも上に空さえ見えていれば,通信を維持できることになる。

 しかし,楕円軌道で地球を回る衛星が,なぜ真上にあり続けるのだろうか? それは,「3つの衛星がそれぞれ異なる楕円形の軌道を飛行し,その1つが常に日本の真上に来るように設定する」ためだ。実際に通信を行う衛星は,約8時間ごとに切り替わるという。

 「電波が受信しやすくなる」こと以外にも,この長楕円軌道衛星にはメリットがある。真上に衛星があることで伝送距離が短くなり,端末のアンテナを小型化することができるのだ。展示されていたのは,GPSとの共用アンテナだったが,サイズは3〜 4センチと従来のGPSアンテナと変わらなかった。

中央の丸い部分がGPSとの兼用アンテナ

米国では実験サービスもスタート

 実は,この長楕円軌道衛星システム,米国では既に打ち上げられ,シカゴを中心とした実験サービスが行われている。展示されていたアンテナも,現地で動作確認済みのものだ。

「自動車にプロトタイプの端末とアンテナを載せて市内を走り回ってみたが,通信状態は良好だった。2.6GHz帯を使い,下りで12〜13Mbps,上りで500Kbps程度の通信ができた」

車載端末の表示イメージ

GPS搭載のハンディターミナル。写真はモックアップ

 日立では,このシステムを利用して自動車を対象とした「音楽配信サービス」や「MPEG4の多チャンネルデジタル放送」を計画している。他には「カーナビの地図デ ータ更新」といった用途も考えられるだろう。将来的には,山間部や離島でも使える インターネットアクセス回線に発展する可能性もある。

「技術的,法的な課題はクリアした。残る問題は予算だけ。今は,パートナーを募っている段階だ」(日立)。

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▼ 日立製作所

[芹澤隆徳,ITmedia]

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