NTTが進める電子入札のシステム――電子自治体実現へ

e-Japan戦略により,整備が進む電子政府・電子自治体プログラム。中でも電子入札システムは,既に導入が進んでいる。

【国内記事】 2001年12月7日更新

 2001年1月,IT戦略本部において電子政府・電子自治体構想をうたう「e-Japan戦略」が決定した。これをうけ,現在は地方税の電子申告実験,行政文書のデータベース化,金融機関を含めたネットワーク上での決済基盤の整備などが進んでいる。

 中でも電子入札システムは,導入が進んでいる分野。NTTサービスインテグレーション基盤研究所の社会・生活情報流通サービスクリエーションプロジェクトマネージャ,足立佳彦氏は,12月7日に開催されたNTTアドバンスとテクノロジのシンポジウムで,NTTの電子入札システムについて触れた。

ポイントは「ハッシュ関数」

 電子入札のポイントは,公告,入札,閉札時に入札者と自治体の間でやりとりする一連の文書を,電子公証(電子情報を削除・変更されないよう一定期間保存する仕組み)に保存する点だ。データにはデジタル署名を付与して保管し,文書の改ざんや差し替えを防ぐ。入札の正当性は第3者機関によって証明されるため,透明性の高い入札が可能になるという。

 この実現のためにNTTが利用するのが,暗号アルゴリズムの1つ“一方向性のハッシュ関数”だ。「従来のベンダーは,暗号を解けば元通りにできてしまうアルゴリズムを用いていた。これではセキュリティ上問題がある。NTTの採用するハッシュ関数では,暗号化する際に情報が減るので元に戻せない」(足立氏)。

 電子入札の具体的な流れは以下のとおり。まず入札者Aがいたとして,2億円で入札したいとする。この場合,入札者Aは入札値に乱数を付け(乱数を付けないと簡単に逆算される),ハッシュ計算を行う。このとき出たハッシュ値,たとえば「aje903jfj209fjg02」を,自治体に送信するわけだ。

 自治体の側では,この値がどれほどの金額なのか分からないが,ホームページ上に「aje903jfj209fjg02」と公開しておく。ほかの入札者は,「誰かが入札したな」とだけ分かるが,もちろん,いくらで入札されたか分からない。

 やがて閉札期間になると入札者がそれぞれ,入札額と乱数を自治体に送信する。自治体の側では乱数付きの入札額をハッシュ計算して,たとえば「2億円」と送信してきた入札者Aのハッシュ値が「aje903jfj209fjg02」になるかどうか確認。一番安い金額で入札したと認められる業者の落札にする。このとき,落札額と乱数はホームページ上で公開されることになる。

 落札できなかった業者は,自治体のホームページ上で乱数付き落札額を確認し,ハッシュ計算することで不正がなかったかをチェックできる。以上の手続きにより,透明性の高い入札が実現するという。

横須賀市では完全インターネット入札開始

 こうした電子システムは,現在横須賀市で導入が進められている。同市は2000年2月から,入札参加申請などをインターネット化,電子入札システムの運用を開始した。4月からは入札公告・入札結果をホームページ上で公開し,紙との併用を廃止した。

 今年9月からはさらに,入札の流れを完全インターネット化した電子入札を開始。その取り組みについては,同市のホームページで公開されている。

 「横須賀にとって適した入札制度を模索し,実現し,それを忠実に反映した電子入札システムをつくった」と語る同市。ホームページによると,電子入札システム導入の結果,入札参加業者数は約2倍に増え,談合に関する情報もなくなったという。

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関連リンク
▼ 横須賀市のホームページ

[杉浦正武,ITmedia]

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