篠山紀信のブロードバンド・ヌードへの挑戦――digi-KISHINブロードバンドで,キラーコンテンツとなりうる可能性を秘めたアダルト向けのコンテンツ。中でもdigi-KISHINは,動画でも静止画でもないユニークな映像表現が興味深い。
ブロードバンド時代の“キラーコンテンツ候補”と目されるものは多い。スポーツ,音楽,ゲーム,e-ラーニング……。中でも,最右翼はやはりアダルト向けのコンテンツだろう。小学館が12月に有料配信を開始した“動くヌードグラビア”「digi-KISHIN」もその1つ。篠山紀信氏の撮りおろし写真を利用した映像サイトで,1Mbps,500Kbps,250Kbpsの3種類の帯域の動画が用意され,ストリーミングまたはダウンロードで視聴できる。
苺みるく 篠山紀信撮影 digi-KISHINのコンテンツ形式は独特だ。静止画でも動画でもなく「動く写真」という形式になっている。具体的には,静止画にズームしたりパンしたり,次々切り替わりながら画像がスローで動く,といった具合。再生にはWindows Media Playerを利用する。 小学館マルチメディア局デジタルコンテンツ室プロデューサー,尾崎靖氏はdigi-KISHINオープンの経緯を,「篠山紀信氏がデジカメにも興味を持ったことから,すべてが始まった」と言う。 「それまで篠山紀信氏はムービーが嫌いで,銀塩カメラ一筋だった。しかし,ある時デジカメで撮った動画を見て『これはムービーじゃない。写真が動いている』と,非常に関心を持ったようだ」(同)。 以来,篠山氏が積極的にデジカメで素材を撮り続けているうち,周囲の人々もその熱意に動かされ始めた。そして映像を編集するディレクターの宮坂淳氏や,コンテンツに音楽をつける作曲家の清水靖晃といった人々の手によって,digi-KISHIN独特の形式が産まれたのだという。
Flashによる独特なユーザーインタフェースdigi-KISHINではユーザーインタフェースも独特。Flash5.0やXMLといった技術を利用し,ボタンをクリックすると別の小さなウインドウが開くようになっている。「複雑な階層構造でなく,1つのデスクトップ上で手間がかからず操作できるようにしたかった」(尾崎氏)
画面いっぱいに広がるユニークなインタフェース 著作権保護やストリーム配信に関しては,いずれもNTTコミュニケーションズのASPサービス「Stream WING」「DRM WING」を採用した。Windows Media TechnologyのDRM技術により,一定期間が過ぎるとコンテンツを再生できなくなる仕組みになっている。 課金・決済にはクレジットカードを利用し,月極会員なら月額1500円。このほか,見たい本数/期間によって5種類の購入コースが用意されている。 ただ,課金システムについては「やはりクレジットカードだけでは敷居が高い」(尾崎氏)ため,ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)と提携し,接続料金とコンテンツ視聴料を一括請求するISP決済も導入する予定だ。1月11日からBIGLOBEでコンテンツを提供することが決まっているほか,複数のISPと交渉を進めているという。
過去の成功と今後の課題digi-KISHINの事業化にあたり,尾崎氏は「もともと下敷きとして,“Internet Shinoyama Kishin”の成功があった」と話す。 Internet Shinoyama Kishinとは,篠山紀信氏の撮影してきた写真をアーカイブして,有料で閲覧できるようにしたサイト。現在,月額1500円のレギュラー会員が1万人おり「ビジネスとしては投資を回収する段階(黒字化)にきている」(尾崎氏)という。 digi-KISHINはこのInternet Shinoyama Kishinの“姉妹サイト”という位置付けとなる。前例にならって,こちらも成功を目指したいところだろう。「ビジネスとしてペイするには7〜8000人の会員が必要と見ている。ただオープン後の手ごたえを見ると,この数字は思ったより早くクリアできるかもしれない」(同)。12月のオープン以来,会員数は2週間で2500人という上々の滑り出しとなった。 ただし,Internet Shinoyama Kishinとは異なる悩みも多いようだ。まず挙げられるのが,制作コストの高さ。digi-KISHINでは,全画像が撮りおろしで,ロケ費用や女優のヘアメイク,スタイリストなどに多くの費用がかかるという。 「ハワイでロケとなると,費用もかかる。映像編集や音楽にも別途,費用が発生してくるため,既存の写真をスキャンして2次利用すればいいInternet Shinoyama Kishinとは制作コストが大きく異なる」(尾崎氏)。小学館ではこれらの撮りおろし画像をDVD化して,来年2月下旬から2800円で販売する予定。こうした手法によって投資の回収に努める方針だ。 ユーザー環境に配慮が必要なことも,Internet Shinoyama Kishinと異なる点だ。ISDNなどのナローバンドユーザーではストリーミングでの視聴ができないため,ダウンロードによる視聴方式も提供しているが,それでもダウンロードには長い時間がかかる。高品位なデータの再生には一定のマシンパワーも必要だ。 また,現時点では公式にはMac対応をうたっていない(“対策中”とされている)。これは再生に利用するMac版Windows Media Playerの動作がいまひとつ安定しないためだ。「具体的には,Mac版Windows Media Playerをユーザーがバージョンアップした場合,コンテンツがうまく再生されないといった事例が確認されている」(尾崎氏)。 もちろん,サイトでは必要なユーザー環境などについて,詳しく説明している。だが,こうした説明をきちんと読んで購入してくれるユーザーばかりではない。先に購入したものの,見られないと苦情がくるケースも十分予想される。そこで,視聴できるかどうか,購入前に必ず試してもらうサイト構成にして,混乱を防ごうとしているという。 “ヌードグラビア”というコンテンツの特性と,ユニークなコンテンツ/ユーザーインタフェースで興味深いサイトに仕上がったdigi-KISHIN。いまだこれといったキラーコンテンツを欠く感のあるブロードバンド業界に,新風を吹き込めるか。尾崎氏は「インターネット上には膨大なヌードサイトがあるが,うちは3年たっても古くならないプロフェッショナルとしての仕事をしたい」(同)と,その意気込みを話してくれた。
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