ビットメディアなど,ホリプロと提携してP2P事業に向けた実証実験

P2Pの有料事業化に向けた動きが国内でも始まった。ビットメディアとアスクルは「シェアキャスト」の技術を用いて,ホリプロとコンテンツ配信の実証実験に乗り出す。

【国内記事】 2002年2月13日更新

 ビットメディアとアンクルは2月末よりホリプロと提携して,P2Pによるストリーム配信の実証実験を開始する。実験はビットメディアとアンクルが開発を進めている技術「シェアキャスト」を用いて,ホリプロのコンテンツをWindows Media Player形式で配信するというもの。規模は「ホリプロ主導で,500人以上の参加者を集める」(ビットメディア)としており,今後は商用サービスも展開する考えだ。

 シェアキャストは,ネットワークにつながったユーザーのPC同士でコンテンツを共有できる技術。従来のように大規模なサーバを用意せずにすむため,配信事業者の負担が減るのが特長となる。


シェアキャストの概念図(クリックで拡大)。ツリー状に配信ノードが拡大する。コンテンツ配信の大元は,個人のPCでもいいし大規模なサーバでもいい

 ユーザーは,予めJavaによる専用ソフトウェアをインストールし,視聴したいコンテンツのIDを指定する。すると事業者の管理する接続鍵サーバから,コンテンツに対する接続鍵と,コンテンツ配信のツリー状ネットワークに参加する最寄りのピア(クライアントPC)のリストが提示される。

 ユーザーはリストの中の適当なピアに接続し,そのクライアントがバッファ中のメモリからストリーミング・データを受信する。もちろん,自分が視聴するデータは別のピアから取得されることもあり得るわけだ。

 ユーザーが接続する先のピアがシェアキャストの利用をやめてしまった際は,仲介サーバが自動的に別のピアに対して再接続を行う。この際,別のピアに接続し直すまでに約20秒を要するケースもあるため,映画のような前後の連続性が要求されるコンテンツの配信には向いていない。

 「定点観測のWebカメラ映像や,同じ内容を繰り返し流すものなど,途中に切断が起きても許容されるコンテンツを配信することに向くのではないか。P2Pにはアクセスがネットワーク内で負荷分散するぶん,“サーバが落ちにくい”という強みがある。これを生かし,有事の際のニュース配信などにも使えると考えている」(アンクル)。

 ホリプロによれば,提供するコンテンツは「『Net-Tv』(記事参照)に登場するタレントを起用したもの。今回の実験用に,新しく用意する」という。商用化後も引き続き,コンテンツの提供を続けると話した。

シェアキャストで生まれるビジネスモデル

 アンクルはシェアキャストについて,「コンテンツをストリーミング配信する以外に,ファイル共有などにも応用が可能だった」と話す。

 「ただしその場合,著作権侵害などが懸念される(2月12日の記事参照)。今回はある程度の権利保護機能が効くように,“コンテンツ配信”という形式をとった」(アンクル)。

 シェアキャストではユーザーがコンテンツ(ピアのPC)にアクセスする際,そのピアが接続に対して認証を行う。いわばコンテンツ認証をクライアント側で代行させる仕組みであり,これによって運営元はP2Pでも認証管理が可能になるわけだ。「この部分が,技術面のウリだと考えている」(アンクル)

 ビットメディアは商用サービス時のビジネスモデルについて,「ユーザー登録した際に運営側から受け取る接続カギを,有料でダウンロードするような方式が考えられる」と話す。

 料金体系については月額課金,コンテンツごとの課金などが考えられるが,ビットメディアの高野社長は「iモードのように,コンテンツ料は安価に設定して取っ付きやすいものにしたい」と話している。

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[杉浦正武,ITmedia]

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