ブロードバンド・コンテンツを悲観するテレビ局――トレソーラ原田社長TBS,フジ,テレ朝の民放3社がブロードバンド市場に打って出るための橋頭堡,企画会社トレソーラ。だが同社の原田社長は,まだまだ市場は未成熟だと話す。
東京放送(TBS),フジテレビジョン,全国朝日放送(テレビ朝日)の民放3社はブロードバンド事業に向け,企画会社「トレソーラ」を発足した(1月18日の記事参照)。“通信と放送の融合”論もある中で,テレビ局として通信事業にどう取り組んでいくのか,トレソーラの原田俊明社長に聞いた。
トレソーラの原田俊明社長 原田社長は,トレソーラによって“最強のポータルサイト”を作りたいと話す。 「イメージとしては,トレソーラという大きな枠組みがあって,ソフト面で3局のコンテンツが乗ってくるかたち。サイトにいけば,TBS発のコンテンツもあれば,フジテレビ発のものもある,ということになる」(同) 同氏によれば,3局の関係は「競争的提携」になるという。これはつまり,サイト内で各社のコンテンツが競い合うということ。3局が持ち寄ったコンテンツの中で,当然人気の偏りが発生することもある。この点を「実力主義でやっていく」(同)ことで,サイトを活性化させる狙いのようだ。
コンテンツの内容は?テレビ局が通信業界に乗り出すとなると,当然「テレビ番組がネットで見られるのか?」という素朴な疑問が湧く。しかし原田氏の口ぶりでは,これは当面実現しないようだ。 「番組の著作権はさまざまな権利者に分散されすぎており,(権利関係は)多岐にわたるなんてもんじゃない。提供するコンテンツは地上波放送の周辺にある,権利関係がクリアなものになるだろう」(同)。 同氏が具体例として挙げたのは,ドラマの裏側・エピソードを描いたものや,スタイリストやメイキャッパーなど演出サイドを映したコンテンツ。既存のコンテンツから派生し,比較的少ない制作費で簡単につくれるものが提供されるという。 1つの有力なコンテンツを編集して,ほかの媒体で提供するという手法は,従来テレビ業界がビデオやDVDでとってきたもの。今回はその媒体が,インターネットだったというスタンスだ。これは以前,日本テレビ放送網のコンテンツ事業推進部,平松英俊氏が話していた,「コンテンツ・バリュー・ループ」という概念(1月10日の記事参照)と,同じ考え方となる。 原田氏は,「オンライン上でオリジナルの手の込んだ番組を作るには,まだキャッシュフローを伴うマーケットが成立していない」とも話した。
インフラは「極力自前で持ちたくない」コンテンツを配信するとなると,ストリームサーバやCDNといった各種の配信インフラが必要となる。またトレソーラは「オンライン広告市場には,まだ期待できない」という立場のため,小額課金のインフラも用意せねばならない。 こうした設備について原田氏は「極力,自前で持ちたくない」と話す。 「どれほど持たなくて済むのか,少しぐらいは負担せざるを得ないのか,今まさにワーキンググループを作って調査しているところだ」(同) 同氏が配信インフラを嫌う理由は,コンテンツ流通事業が“ペイしない”と見ていることの裏返しでもある。オンライン上で配信されるコンテンツは,どうしても単価が安くなる。そのため,下手に自前で配信すると「やればやるだけ赤字になってしまう」(同)。 トレソーラは既報のとおりコンテンツアグリゲータとして機能することだけは分かっている。しかしほかの面では,できる限りアウトソースしたい考えのようだ。
成功は「今年,来年の話ではない」全体の話を通して感じたのは,トレソーラがブロードバンド市場をまだ未成熟と感じている点。コンテンツビジネスを行う各社を指して「まだサクセスストーリーがない」とコメントするなど,その事業性には懐疑的な姿勢だ。 同席した経営企画部長の大原通郎氏も,「ブロードバンドに期待はしている」と断りをいれながら,「(ビジネスが成り立つのは)今年や来年の話ではない」とばっさり。今後ブロードバンドの普及が,2000万回線程度に及ぶのを待たねばならないとの見方を示した。 テレビ関係者に共通する主張は,「マスメディアとしてはテレビが最強」という考え。しかも,現時点では各社とも収益面で好調だ。とりあえずはブロードバンドを顧みなくてもいい状況にある。 ただしその業界内での立場は,徐々に下がってくる可能性も否定できない。その時になって慌ててブロードバンドに取り組んでも遅い可能性がある――。言葉は悪いが,テレビ局のブロードバンド事業は,その時のための「保険」のようなものなのかもしれない。
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