光ファイバーによる大容量伝送実験「ギガビット・アイランド」開始慶応義塾大学など5つの企業/団体が,「GI-POF」を使った大容量伝送の実証実験を実施する。大学やマンションの構内に光ファイバーネットワークを敷設。大容量動画伝送の実験を行う計画だ。
慶応義塾大学,社団法人日本テレワーク協会,旭硝子,パワードコム,そして三井不動産は,新しいプラスチック光ファイバー「GI-POF」を使った大容量伝送の実証実験を実施すると発表した。慶応義塾幼稚舎や三井不動産のマンション内にGI-POFの1Gbpsイーサネットを敷設して「ギガビット・アイランド」を構築。3月から1年間に渡り,リアルタイムの動画伝送など各種アプリケーションの実験を行う。 従来のプラスチック光ファイバーは,コアにアクリル樹脂を使用しており,石英製光ファイバーよりも安価で扱い易い反面,品質面で劣るとされてきた。しかし,コアおよびクラッド(コアの周囲)に透明な全フッ素光学樹脂を用いることで,屈折率分布型(GI:graded-index)のプラスチック光ファイバーを製造することが可能になったという。これがGI-POFだ。
GI-POFの開発者である慶応大学理工学部の小池康博教授は,「石英製のマルチモード光ファイバーでは,高速伝送時(径を太くしてモード数が増えたとき)に素材の特性から光が分散し,モード間の干渉でモードノイズが発生する。これがリアルタイムの動画伝送時に“画像の揺らぎ”を招いていた」と指摘する。これに対して,全フッ素化光学樹脂では「石英よりも材料分散が少なく,光が反射せずに進むため,安定した動画伝送が可能になる」。
結果的に,GI-POFは敷設工事が容易というプラスチック光ファイバーのメリットはそのままに,石英よりも安定した信号伝送を実現した。既に旭硝子が「ルキナ」の商品名で製品化しており,主にビルやマンションの構内配線用光ファイバーとして期待されている。「建物内に光ファイバー網を構築する場合,トータルコストの半分が敷設工事にかかるコストだ。GI-POFは,石英光ファイバーの10分の1の時間で敷設作業を行える。これで,最後の数百メートルを解決する技術ができた」(小池氏)。
無圧縮のTV会議システム大容量伝送がもたらすのは,単なる高画質化だけではない。余裕のある帯域は,動画を圧縮する必要をなくし,そのぶんリアルタイム性を高める。このため実験では,同じ慶応大学の村井純教授率いるWIDEプロジェクトと通信総合研究所が共同開発した「DVTS」(Digital Video Transport System)を使い,35MbpsのDVストリームをそのまま伝送するTV会議システムを実験する予定だ。 「DVTSのTV会議と同時に,どの程度のアプリケーション共有が行えるか。それが今回の実験における1つのテーマとなる」(小池氏)。
実験では,慶応大学の三田校舎をはじめ,慶応義塾幼稚舎,西町インターナショナルスクールを100Mbpsの専用線で結び,DVカメラとPDP(プラズマ・ディスプレイ)によるリアルタイムコミュニケーションを実施する。幼稚舎長を務める金子郁容教授によると,「TV会議で子どもたちが留学生と交流したり,大学の教授が子ども向けに分かりやすく講義を行う,といったアプリケーションを計画している」という。
一方,三井不動産のマンション「パークハイム自由が丘2丁目」では,40戸すべてを対象にGI-POFによるギガビットイーサネットを敷設する。1.2Tバイトのネットワークストレージに過去2週間分のTV番組をすべて録画し,居住者がオンデマンド再生できるようにする計画だ。 なお,日本テレワーク協会実験事務局では,このほかにもマンション内ギガビットネットワークの実験を行う事業者を募集している。
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