どうしてIP電話は携帯電話にかけられないのか?低価格をウリにするIP電話だが,実は携帯電話にかけられないサービスがほとんどだ。その理由は,携帯電話へかける際の料金設定を,携帯キャリアが握っているところにあるようだ。
ブロードバンド業界の話題の1つがVoIPを使った電話サービスだ。「国内一律3分7.5円」「米国一律1分7円」……などと低料金なサービスが目白押し。 しかしNTTの固定電話をリプレースできる存在かというとそうでもない。その理由の1つは,携帯電話にかけられないサービスが多いこと。ヤフーのBB Phoneもイーアクセスも,現状携帯電話にはかけられない。
携帯キャリアが決める,接続料金これだけ一般化した携帯電話との通話が,どうしてVoIPでは難しいのか。Windows Messangerを使ったIP電話サービスを提供しているイーアクセスによると「(携帯電話との通話は)ニーズは高まっている。現在個別に事業者間で交渉している」状況。 「固定(電話から携帯電話にかけた場合)と同じ,あるいは高くなってしまってもいいなら,すぐにでも(IP電話による)サービスができる」とイーアクセス。 実際,ダイヤルパッドジャパンとの提携によりBIGLOBEが提供している「dialpadインターネット電話」では携帯電話への通話も可能だが,78円/3分とNTT固定電話からかけるのと大差ない料金になっている。 しかし低料金がウリのIP電話だけに,携帯電話会社の言い値ではサービスのメリットが薄い。 携帯電話とつなげるのが難しいのは,ご想像通り料金にある。しかし,携帯キャリアが一律に高いかというとそうでもないようだ。 一般固定電話とIP電話との接続料金については,NTTはルールをある程度オープンにしている。しかし,携帯電話との接続は各携帯キャリアと個別に交渉する必要があるという。“携帯電話会社との交渉”とはいうものの,「事実上,携帯会社が価格を決定してしまっている」(イーアクセス)。
各社で大きく違う,“携帯電話への”通話料金「事実上,携帯会社が価格を決定してしまっている」ことは,固定電話から携帯電話へかけた場合の料金が,携帯キャリアで大きく異なることを見ても分かる。
関東地区の平日昼間。NTT固定電話から着信先の携帯電話が同じ営業区域内にある場合。DDIポケットの場合,別途一通話につき10円が加算される 最大33%という値下げを2月21日に発表したばかりのKDDIでも,一般固定電話からは10円で15秒しか話せない。距離が離れると,10円で12秒だ。 携帯同士で通話すると,例えばKDDIの「コミコミOneスタンダード」(月額基本料金7500円)の場合で20秒/10円。なんと,固定電話からかけるよりも安い。しかもこの料金は距離にも関係しない。J-フォンの場合では,「ビジネスパックバリュー」(月額基本料金6300円)の場合で1分26円(10円換算で23秒)だ。 唯一ドコモだけが,平日昼間に限っていえば固定電話からかけたほうが安くあがる。携帯からかけた場合,10円で18秒しか話せない。 時間帯や距離によって違いはあるものの,携帯にかける場合は固定電話からよりも,携帯からかけたほうが安い……。そんな現象が見られるわけだ。 固定電話から携帯電話への通話料金は,携帯キャリアがあまり積極的にアピールしたがらない部分でもある。そのからくりは,固定電話から携帯電話へかけた場合でも,その通話料の一部がアクセスチャージ(相互接続通話の事業者間接続料金)という形で携帯キャリアの収入になるところにある。 複数の事業者のネットワークを使う通話の場合,ユーザーから徴収された料金は,両方の事業者に分配される。ユーザーへの課金を行う事業者が,もう一方の事業者に支払うネットワーク使用料がアクセスチャージだ。 簡単にいってしまえば,ドコモのネットワーク使用料は安く,ツーカーのネットワーク使用料は高い。つまり,一部のキャリアにとってアクセスチャージは,ユーザーから見えにくい,“収益源”になっている。 そしてそのツケは,キャリアの契約者ではなく,その携帯電話にかけるユーザーが支払う仕組みになっている。古くから携帯電話に存在するこの問題が続く限り,IP電話がリーゾナブルに携帯へ通話できるようにするのは難しそうだ。
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