ブロードバンド・ラブの行方――オリジナルコンテンツ戦略をとる有線ブロード

「GATE01」「ShowTime」などで豊富なコンテンツを提供する有線ブロード。中でも“ブロードバンドならでは”のオリジナルコンテンツ制作には,期するところがあるようだ。

【国内記事】 2002年2月25日更新

 有線ブロードネットワークス(USEN)が,ブロードバンドコンテンツに力を入れている。FTTH会員向けに提供するコンテンツポータル「GATE01」では既に5000ものタイトルを集めており,2月14日には楽天と提携して一般向けコンテンツポータル「ShowTime」をオープンした。

 「まだサクセスストーリーがない」と評されるコンテンツ・ビジネスに,あえて飛び込むusenの思惑はどんなものか。USENブロードバンドコンテンツ部コンテンツ1課,高田正行次長に話を聞いた。


USENコンテンツ1課次長兼ショウタイム編成部長,高田氏

 高田氏はUSENがコンテンツアグリゲートする際の強みとして,有線放送により培ってきた“芸能業界へのつながり”を挙げる。

 「音楽や映画といった業界と,点ではなく線でつながっている。コンテンツをその場限りで売り買いするのではなく,タレント事務所・レーベル・クリエイターと継続して関わっていく,信頼関係がある」(同)。コンテンツ課にいる70人の社員うち,半数をコンテンツアグリゲートに回す体制で臨んでいるという。

手ごたえを感じた“ブロードバンド・ラブ”

 同社がほかのコンテンツ・アグリゲータと異なるのは,コンテンツ制作にも積極的に取り組んでいる点。芸能コメンテーターの梨元勝氏がホスト役を務めるビデオチャット「梨元教授のブロードバンド芸能大学」を月1回のペースで開催している(1月15日の記事参照)ほか,2月14日にはグラビアアイドルの川村ひかるさんをMCに迎え,バレンタインデーにちなんだ告白番組「ブロードバンド・ラブ」を配信した(2月14日の記事参照)。

 このブロードバンド・ラブについて高田氏は,ある程度の手ごたえを感じたと話す。

 「24時間で,約4万アクセスを集めた。視聴率も,後半の生放送分,男性陣が女性陣にアタックするところで上昇した」(同)。番組ではスタジオに女の子を集め,ブロードバンドを通じて彼氏候補をよびかけたわけだが,メールがいたずらを除いて200通前後届いた。そこから電話による女の子との会話に至ったのが14〜5人,最終的に4人の“彼氏候補”がスタジオに来た。

 気になる制作コストについても,ある程度抑えることができたという。

 「タレントや撮影機材については,テレビと同じレベルの費用がかかる。ただ,ブロードバンドコンテンツは,光ファイバーの口さえ来ていればどこでも撮影・配信できるのがメリット。ブロードバンド・ラブの場合も渋谷QFRONTの一室を借りて撮影したが,コンテンツ送出には思ったほど費用はかからなかった」(同)。

 具体的な制作費用は明かしてくれなかったものの,「雑誌に広告を出すのと同じ程度の費用しかかからない」と高田氏。テレビ番組と比べると,安価であることは確かだ。

「ストリーミングなんて,実は大したことじゃない」

 こうしたコンテンツ制作について高田氏が重視するのは,双方向性やコミュニティ性を持たせること。「テレビで流れても同じものなら,ブロードバンドコンテンツとしての必然性はない」(同)。

 同時に,従来のインターネットの延長にも,ブロードバンドコンテンツの成功はないと見る。

 「ストリーミングとか,ダウンロードが速くなったなんてことは実は大したことじゃない。全く新しいところから,新しいかたちのものがヒットするだろう」(同)。

 高田氏がUSENのコンテンツから例示したのは,米KINZA Corporationと共同開発した専用コミュニティシステム「LIVE GADGET」(ライブ・ガジェット)を利用したコンテンツ。LIVE GADGETとは,インスタントメッセージング機能やライブストリーミング機能,ファイル共有機能などを1つのインタフェースにまとめたコミュニティシステムだ(12月5日の記事参照)。

 視聴者のリアクションがそのままコンテンツ画面に反映されるしかけとなっており,いわばMCと視聴者が共にコンテンツを作ることが可能だ。前出の「梨本教授の〜」や,本日発表された映画「コンセント」劇中衣装のオークション・コンテンツにも,このGADGETの技術は利用されている。


左画面に梨本氏の映像,右画面には梨本氏が話題にするニュースが流れる。下画面ではユーザーとのチャットが行われ,そこで話題になったものも随時右画面で映せるという(クリックで拡大)


GADGETを利用したオークション。中央でオークション品の説明映像が流れ,参加者が値をつけると更新ボタンを押さずとも入札価格が変化する。右画面ではオークショニア達によるチャットが行われている(クリックで拡大)

 同氏は過去,So-netのメールソフト「ポストペット」がインターネットを全く知らないユーザーにも受け入れられたことを引き合いに出して,ブロードバンドも同じだと話す。

 ダイヤルアップからブロードバンドに移行したユーザーより,インターネットを始めた時からブロードバンドだったユーザーを取り込む,新しいコンテンツを目指す。これが上手くいけば,異なるマーケットから会員を獲得できるというのが高田氏の読みだ。

 「『ShowTimeで年末までに30万会員獲得』が不可能に思えるというのは,理解できる。しかし今までと違う層のユーザーを獲得できれば,十分可能性はある」(同)。

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関連リンク
▼ usen
▼ ShowTime

[杉浦正武,ITmedia]

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