「ホームワイヤレスネットワーク」に突き進むIntelIntelが現在,積極的に取り組んでいるテーマに,ホームワイヤレスネットワーク構築に向けた規格の標準化がある。
現在のPCを来年以降,より魅力的なものにしようと取り組むIntelだが,その多くは家庭への一層の浸透を図るためのものだ。それは,個人ユーザーの消費がPC業界市況回復の鍵と,同社が考えているからにほかならない。 中でも,同社が数多くのテーマに取り組んでいるのは,家庭向けに最適化したワイヤレスネットワーク環境を構築することに関してである。言うまでもなく,そのうち最もプライオリティが高いのは,IEEE 802.11だ。 この802.11に関してIntelが取り組んでいるのは,802.11ベースの無線LANでQoSを実現する802.11eと,802.1xベースのユーザー認証と暗号化を組み合わせたセキュリティ標準の802.11iの策定を進め,PC業界への普及させることだ。また,コストダウンが進み(チップレベルで5ドル,コンポーネントベースで10ドル),やっと普及の兆しを見せつつあるBluetoothも,これに含まれる。 802.11eはワイヤレス1394をベースにしたプロトコルだ。802.11iは,暗号化にTKIP(Temporal Key Integrity Protocol)とAES(Advanced Encryption Standard),認証に802.1xを利用する。これらの標準はビジネス分野では常に求められてきたものであり,素早く普及するための“ニーズ”も“インフラ”もすでに存在する。しかし,Intelはホームユーザーにも,これらのプロトコルを利用したソリューションを提供しようとしている。 Wireless A/Vと名付けられたプロトコルは,802.11eのQoSを用い,データと共に帯域がギャランティされたオーディオやビデオのストリームをワイヤレスで利用するためのもの。DTCP(Digital Transmission Content Protection)ベースのコンテンツプロテクション機能を含み,著作権保護が必要なデータをワイヤレスで扱うこともできる。 Wireless A/Vはドラフトスペックが今年年末にも,IEEE 802.11の作業部会から提出される予定だ。作業メンバーはIEEE 1394の作業部会とも連携しており,1394を用いたA/Vネットワークとの相互運用性も確保されるという。 また,別記事に掲載したように,Intelはインテリジェント ローミング ソフトウェアと呼ばれる,いつでもどこでも,どんなネットワークからでも,シームレスに会社や家庭のLANと接続するための仕組みを構築中だ。 このソフトウェアは802.11iによる暗号化と認証に対応し,ユニバーサルPlug&Play対応のインターネットゲートウェイ製品と共に用いることで,家庭内のデータにセキュアにアクセスできるようになる。 こうした技術を素早く家庭に持ち込もうとしている背景には,Intelが提唱してきたExtended PCコンセプトの進化形で,ワイヤレスネットワークを統合したいと考えているからである。 このExtended PCとはPCの持つメディア処理能力や巨大なストレージ能力,インターネットとの親和性などを応用し,様々なデジタル家電と連携することで,PCの新たなる価値を創造しようというコンセプト。デジタルカメラやデジタルオーディオプレーヤ,デジタルビデオなどとの連携機能を強化することで,互いの価値を高め合うことができる。
これまでのExtended PCは“前のめりの"用途がほとんどだった。つまり,PCの前で自らが積極的にオーディオやビデオを取り込んで編集したり,その結果をデジタル家電に戻したりといった作業だ。しかし,この考え方をさらに発展させ,リラックスして楽しむアプリケーション(たとえばデジタルテレビの前でパソコン内のビデオデータをリラックスしながら見るなど)も取り込んでいこうとしている。 そのために必要なアプリケーションやサービスをそろえることで,より良いホームネットワークを構築しようというのである。これまでのExtended PCは,PCとPCに繋がるハードウェアという,いわばローカル環境に閉じたコンセプトだったが,その進化型としてワイヤレスネットワークを経由して,PCと家電が互いの機能をリモートに利用できるようにしようというわけだ。 この進化型Extended PCコンセプトの実用化の目標は2003年。Intelには2003年を目標に取り組んでいるプロジェクトが数多く存在するが,これもその1つである。 なお,進化型Extended PCと同様のコンセプトは,ソニーもVAIOと802.11a,それにネットワーク対応WEGAなどの組み合わせで行おうとしており,年内にネットワーク対応WEGAが商品化される見込みとなっている。
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