CATV増速の現状と将来〜小田急ケーブルビジョンの場合

最近は8MbpsのADSLに話題を奪われがちだが,同軸ケーブルの潜在能力は侮れない。DOCSIS1.1の採用を決定し,さらなる高速化を狙う小田急ケーブルビジョンに話を聞いた

【国内記事】 2002年3月20日更新

 電話線よりも遥かに太い同軸ケーブルを使い,TVとインターネット接続を提供するCATV。インフラとして大きなアドバンテージを持ちながら,最近は8MbpsのADSLに話題を奪われがちだ。4月から下り最大8Mbpsの接続サービスを開始する小田急ケーブルビジョンに増速の方法と将来の可能性を聞いた。

 東京の西側を走る小田急線は,下北沢,新百合ヶ丘,町田など,沿線に多くの住宅地を抱える人気路線だ。そのエリアでCATV事業を展開しているのが,小田急電鉄の100%子会社である小田急情報サービス(サービス名称は小田急ケーブルビジョン:OCV)。2000年1月にインターネット接続サービスを開始し,現在は約1万2000のユーザーを抱えている。

8Mbpsの理由はADSL対抗?

 OCVのインターネット接続サービスは,最大で上り512Kbps/下り3Mbpsの単一メニューだ。4月1日からは,エリア全域で下り方向が最大8Mbpsとなるが,上り方向は変わらない。また料金も据え置きの3980円/月となっている。

 4月の増速により,カタログ上の数字は,ADSLのフルレートサービスと同じになる。しかし,小田急情報サービスの浜武喜久雄営業部長によると,これは単なる偶然だという。「もちろん,マーケティング的にはADSLに対抗する意味も含まれているが,実際はモデムの仕様。下りの最大速度が8Mbpsだった」。

 カタログスペックが機器仕様と同じ数字になるのは,帯域制限の撤廃を意味している。ただ,帯域制限を行わなければスピードが上がると考えがちだが,実際はいくつかの条件をクリアしていなければ意味がない。

 というのも,CATVインターネットは,電話局とユーザー宅が1対1でつながるADSLと異なり,バス接続であるが故に他ユーザーのデータ転送量の影響を受けやすいため。増速すれば,特定のヘビーユーザーが帯域幅を占有してしまうこともある。結果,そのユーザーと同じセンターモデムに収容されている人たちに迷惑がかかるだろう。

 上位ISPとの接続速度,そして1つのセンターモデムに収容するユーザーの数(少ないほど高速)に余裕がなければ,増速がアダになる可能性もある。

 同社の宮原功技術部長によると,OCVでは上位ISPに155Mbpsの回線で接続し,1台のセンターモデムに収容するユーザー数は,最大容量の半分程度に留めているという。「ピーク時でも上位ISPへのトラフィックは80Mbpsほど。まだユーザーが少ないことも大きいが,かなり余裕はある」(宮原氏)。実際,8Mbpsサービスの検証では,実効値で5Mbps程度の速度が出ているという。

年内にはさらに高速化,ホットスポットも提供

 OCVでは,さらなる高速化も計画中だ。4月から川崎市多摩区に順次サービスエリアを拡大するが,ここでは新しいDOCSIS 1.1の設備を採用する方針だという。

 DOCSIS1.1では,下り速度を30Mbpsあるいは42Mbpsに設定することができる。もちろん,当初のサービスは他エリアと同じ最大8Mbpsだが,「ほかのエリアでも設備の入れ替えを進め,年内には,より高速な上位メニューを設定する」(宮原氏)。ただし,検証段階のため,カタログ表記上のスピードについては未定だという。

 さらに,小田急線の駅構内や近隣飲食店などを対象としたホットスポットサービスも検討中。こちらは,CATVサービスのオプションという扱いになる見込みだ。しかし,現在主流となっているIEEE 802.11bにくわえ,802.11a,802.11g,あるいは準ミリ波を使った無線仕様など,規格が乱立しているため,しばらくは様子見になりそうだ。

 ADSLが普及したとはいえ,NTT収容局から約4キロ(Annex A/Cの場合)まで,という距離の壁は大きい。たとえば,OCVが4月からケーブルの敷設をはじめる川崎市多摩区では,NTT収容局からの距離によってADSLを導入できなかったり,速度が出なかったりといったケースも多い。「NTT収容局が近くても,管轄が違うために,わざわざ遠いNTT局につないでいる地区もある」。

 しかし,同軸ケーブルの場合は,センターとの距離にスピードが左右されることはない。難点は,導入工事の手間とコストだが,平均で5Mbps出るのであれば,検討する価値は十分にあるだろう。もちろん,エリア内に住んでいる人に限られてしまうが……。

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[芹澤隆徳,ITmedia]

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