P2Pストリーミングがもたらす世界ネットワークに新たな可能性をもたらす,P2P技術。今回はP2Pでストリーム配信を実現するシェアキャストに焦点をあてて,その課題と可能性を見てみよう。
アンクルとビットメディアは現在,ネットワーク技術「シェアキャスト」(2月13日の記事参照)の実験を行っている。同技術は,P2Pでストリーム配信を行うという珍しいもの。シェアキャストの内容を,ビットメディアの高野雅晴社長,およびアンクルの齊藤隆之社長に話を聞いた。 P2Pのネットワークは,従来のC/S(クライアント・サーバ)型ネットワークにない強みを持つ。具体的には,抜本的な負荷分散,また大規模なサーバが不要なことからコストダウンが実現できると考えられる。夏以降には,同技術を用いて商用サービスを展開する見込みだ。
シェアキャストでは,ユーザーはまず専用ソフトウェアをインストールし,視聴したいコンテンツのIDを指定する。すると,コンテンツにアクセスするための「接続鍵」と,ネットワーク的に近いノード(ユーザーPC)リストが提示される(同一ドメインのノードなど)。このリストの中から,適当なピアに接続して,P2Pネットワークに参加するわけだ。
ツリー階層のすぐ上にあるPCから,バッファ中のストリームデータを受信してコンテンツを視聴するという仕組み。同時に,自らもデータを中継,ほかのユーザーにデータを取得されることになる。 ユーザーの登録リスト,および各ユーザーのコンテンツに対するアクセス認可は,コンテンツ配信側が仲介サーバ・接続鍵サーバによって管理している。
浮かび上がった課題と,その対策技術面でのポイントは,全ユーザーがいったん接続鍵サーバ・仲介サーバを経由すること。このサーバにより,P2Pで困難とされる事業者側の管理を可能にしている。「仮に違法なコンテンツが流れた場合は,サーバ側でそのテーブルを止めてしまえば,被害が拡大しない」(齊藤氏)。 この仲介サーバは,ユーザーのリストを保持しているだけで,ストリームデータやトポロジーについては関知しない(各ノードが近傍ノードの情報を持っている)。これにより,サーバで処理する情報量を少なく抑えることができる。 もっとも,メジャーアーティストのライブ配信となると,アクセスは同時に集中する。このため,依然として仲介サーバがボトルネックになる懸念は残るようにも思えるが,齊藤氏は「仲介サーバは複数用意することもできる」と話した。 システムの構成上,避けられないのが,ツリー状のトポロジーで自分の上にいるノードが接続を切断した場合,自分のストリーム再生が中断されてしまうこと。この時,再接続に「最低10秒,長いと30秒かかる」(高野氏)という問題がある。 対策としては,切断する際に子ノード(自分の下にいるノード)が再接続先を見つけるまで,接続を持続することが考えられる。「『少々お待ちください……』という表示を出して,30秒たってから接続を切るようにすればいい」(高野氏)。 また,実証実験によって見つかった課題もある。齊藤氏が懸念するのは,子ノード(=ツリー状のトポロジーで自分の直下にいるクライアント)をつなげられないユーザーが複数存在したこと。子ノードの接続を許容するには,制御信号用とストリームデータ用に,TCPのポートが2ポート開いている必要がある。しかし,このポートが開いていないケースが見られたようだ。 「ファイアウォールの内側にいたり,ルータの設定などにより,ユーザーが子クライアントをつなげられない場合が多数あった。このため,ツリーが延びなかったのが残念」(同)。 今後は,ネットワークに参加するユーザーが子ノードを接続できるかどうか,判定するサービスを用意する。ほかにも技術的な問題については,FAQのサイトを立てて認識を高めてもらうという。 「自分がつながるだけでなく,ほかのユーザーにつなげられる環境にしておくことが重要と,理解してもらう必要がある」(同)。 前のページ | 1/2 | 次のページ [杉浦正武,ITmedia] Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. モバイルショップ
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