Yahoo! BBモバイル,マクドナルドに展開

ソフトバンクグループと日本マクドナルドが提携,全国のマクドナルド店舗で無線LAN接続と公衆IP電話を提供すると発表した。5月20日頃より実証実験を開始する。

【国内記事】 2002年5月7日更新

 日本マクドナルドとソフトバンク・グループ3社(ヤフー,ビー・ビー・テクノロジー,ソフトバンク・コマース)は5月7日,マクドナルド店内での次世代ブロードバンドコミュニケーションサービスの展開に関する提携を発表した。「Yahoo! BBモバイル」の無線LAN接続にくわえ,「BBフォン」を使った公衆電話サービスを提供する計画。国内最大手のハンバーガーチェーンと手を組み,ソフトバンクはブロードバンド事業展開のスピードアップを狙う。


日本マクドナルドの八木康行社長(左)とソフトバンクの孫正義社長(右)

 今回の提携は,Yahoo! BBモバイルのスポット拡大を狙うソフトバンクグループの申し出をマクドナルド側が受ける形で実現した。ソフトバンクグループは,Yahoo! BBのために全国に敷設したIP網を使い,孫正義社長曰く「シングルインフラ・トリプルインカム」(ADSL,IP電話,無線LAN)を目指す。

 「1つのインフラで多様な収益源を確保するため,追加投資は少ない。(ADSLやいわゆるホットスポットなどの)専業にはない強みだ」(孫氏)。同氏によると,マクドナルド以外にも水面下で交渉を進めている企業が複数あり,そのうちのいくつかは「かなり前向き」という。

 一方の日本マクドナルドは,利用者に対するサービス向上,そしてブランドの付加価値戦略の一環として事業を進める。「実証実験前であり,集客効果などに過度の期待は持っていない。ただ,(モバイルのブロードバンドなど)将来のサービスに対して常に感性の高い企業でありたいと考えている」(代表取締役社長兼COOの八木康行氏)。

 実際のサービスでは,ビー・ビー・テクノロジー(BBT)がネットワークインフラを構築し,サポートなど運営面のすべてを担当。マクドナルド側は,「場所」の提供に加え,店内のプロモーション活動などソフトウェア面で協力するという。

W杯に向けて……

 マクドナルド店内には,ADSLもしくは光ファイバーの回線を引き込み,IEEE 802.11b準拠の無線LANアクセスポイントとBBフォンの端末を設置する。BBフォン端末は,「公衆IP電話」として誰でも利用できるという。また,孫社長によると,「国内および米国に対して一律4分10円で通話可能だが,開始から約半年はプロモーションを兼ねて課金を行わない」。

 マクドナルドは全国に3687店舗を展開しているが,今回の発表では無線LANサービスを提供する具体的な店名は挙げられていない。ただし,既に都内にある20の店舗で実験を行っており,さらに5月20日からはYahoo! BB会員をモニターとしたクローズドな実証実験を行うとしている。「マクドナルドの各店は,立地条件や設備もさまざま。環境の良いところから展開する」(八木氏)。

 ただし例外もある。6月に開幕する韓日共催のサッカーワールドカップに備え,試合が行われる10都市にあるマクドナルドでは,先行してBBフォンが設置される予定だ。「世界中から集まるジャーナリスト,観戦客に対して,日本のブロードバンド環境が進んでいることを示したい」(孫氏)。

 利用料金は,Yahoo! BBモバイルのフルサービス(メールアドレスやホームページ用ディスクスペース,ダイヤルアップ接続を含む)で月額2280円,アクセスサービスのみ(メールアドレスなどを含まない)で月額1580円。既にYahoo! BBに加入しているユーザーは990円を上乗せすれば利用できる。

 また,Yahoo! BBモバイルやBBフォンの新規加入はマクドナルド店内でも可能になる予定だ。電源コンセントや無線LANカードの貸し出しに関しては「検証してから結論を出す」(八木氏)。

「手軽に使えることを重視」

 Yahoo! BBモバイルのセキュリティ対策については,今のところその詳細が明らかにされていない。ただし,ソフトバンク側では,基本的には無線LAN標準のWEP暗号化とID/パスワードによる個人認証を利用する模様だ。したがって,ユーザーは独自のドライバソフトなどをPCにインストールする必要はない。

 「“なりすまし”や“ただ乗り”対策も必要だが,コンシューマー向けのサービスで手続きを複雑にするのは本末転倒。手軽に使えることを重視する」(孫氏)。

 ユーザーの作業は,登録時にWEPキーを受け取り,予め無線LANのドライバに登録しておくこと。接続時にIDとパスワードを入力すれば,インターネット接続が可能になる。なお,開放するのはWebアクセスに使う80番ポートなどに限定される見込み。

 「セキュリティ対策でガチガチにすることはできるが,どんなセキュリティ対策もハッカーはすり抜けるだろう。ある程度の垣根を作り,それを越えると犯罪だと告知することが大事」(孫氏)。もちろん,その垣根を越えてしまった利用者を追跡する手段は講じるという。VPNへの対応については,「法人向けサービスは別途準備する予定だが,時期や価格などはコメントできない」(孫氏)。

 気になるのは,Yahoo! BBモバイルがマクドナルド店内でも新規に登録できるという点だ。登録時にはクレジットカード番号を入力する必要があるが,IEEE 802.11b標準の脆弱性は,既に指摘されている通り。

 発表会に同席したBBT営業本部の中村圭祐担当部長は,この点について「さまざまな手段」を検討中としている。「新規登録時の安全を確保するため,知られている技術,知られていない技術を含め,実証実験を通じて検証していく予定だ」(中村氏)。


登録・認証の仕組み。「https」の記述が読み取れるため,SSLを利用するものと思われる

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[芹澤隆徳,ITmedia]

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