IT住宅の作り方電子情報技術産業協会は、多摩ニュータウンで一般公開した情報家電モデルハウス実証実験の成果発表講演会を催した。参加した企業は、それぞれの成果と、実験を通じて浮かび上がった問題点を語った
社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は5月28日、情報家電モデルハウス事業(通称:JEITAハウス)の成果発表講演会を開催した。JEITAハウスは、ホームネットワークの具体的な応用例を示すため、多摩ニュータウン内に制作されたモデルハウス(1月の記事を参照)。発表では、JEITAハウスに携わった各企業がそれぞれの苦労話を交えつつ、成果と課題を語った。 JEITAハウスでは、もともと東急不動産がモデルルームとして使用していた2×4(ツーバイフォー)タイプの一戸建て住宅を借り受けた。しかし、新築時にネットワークを敷設する場合と異なり、既築住宅を対象とした作業には、困難が付きまとう。 環境建築総合研究所の一級建築技士、大藪元宏氏は、「既築住宅をIT化する場合は、まずその構造と仕上げ材の関係を見る必要がある」と指摘する。例えば、古いRC造(鉄筋鉄骨コンクリート)のマンションの場合、コンクリートスラブと天井の間にクリアランス(空間)がなかったり、同様に床のスラブに直接床材を貼ったケースもあるという。空間的余裕のない物件では、配線を行うのが困難だ。
環境建築総合研究所の一級建築技士、大藪元宏氏 逆に、配線が楽なのは日本的木造建築といえる在来軸組工法で建てられた家。約1メートル80センチの間隔で10センチ角の柱があり、柱と柱の間にケーブルを敷設、あるいは機材を設置することができる。 JEITAハウスのような2×4住宅は、木造としては不利なほうだ。壁や床が家を支える形の2×4住宅では、太い柱の代わりに45センチという狭い間隔で間柱が入る。しかも、これが構造材(家の構造を支える部材)になっているため、いかに間柱を維持したまま配線するかが問題になった」(大藪氏)。
2×4住宅の断面図。細い間柱が等間隔で並ぶ できるだけ部屋を横切る配線を避け、床下を這わせて必要な場所から上方向にケーブルを立ち上げる手法が採用された。「床下から直上に立ち上げるのが理想だが、できない場合は最小限の横穴を開ける。とくに、光ファイバーは直角に曲げることができないので注意が必要だ」。
JEITAハウスのキッズルーム。壁面収納の一部が開き、「特注電脳勉強机」になる 宅内情報盤を設置するために「必要最小限」の壁を取り除いたり、専用家具を設けて配線を隠すといった工夫が必要だった。とくに、2階のキッズルームは、「どうしても部屋間をまたぐ配線が必要になり、壁全体を覆う壁面収納を設けた。その後ろにケーブルを這わせている」という。特注電脳勉強机誕生の裏には、こんな事情があった。
物理的な配線が完成したら、ネットワークを構築する。JEITAハウスには、IEEE 1394を使ったAVネットワークと、電灯線による家電ネットワーク(エコーネット)、イーサネットのPCネットワークがある。これらを統合する作業を担当したのが松下電器産業だ。 同社システムソリューション事業本部の阿部健氏はまず、各ネットワークとインターネットを結ぶため、ホームゲートウェイソフトウェアを開発した。これは、リビングに置かれたPDPなどをインタフェースとして、1つのリコモンで、各ネットワーク上の機器をシームレスに制御する必要があるため。
松下電器産業システムソリューション事業本部の阿部健氏 「ホームゲートウェイには、異なるネットワークに接続された機器を、あたかも同じネットワーク上で動作しているかのように見せる“仮想ネットワーク融合技術”、“複合ネットワークアクセス制御技術”、そしてエコーネットによる“画像伝送と動体検知のシステム”が盛り込まれている」(阿部氏)。
実証実験のシステム概要。中央のホームゲートウェイがAV系、家電系のネットワークを繋ぐ この結果、リビングルームのPDP、キッチンに設置された住宅情報盤、そしてシニアルーム(介護設備の整った寝室)の液晶ディスプレイから各種家電の制御が可能になった。リビングルームのソファの上でリモコンを操作すれば、カーテンが開き、エアコンの温度設定が変更され、さらには風呂を沸かすこともできる。 阿部氏が課題として挙げたのは、エコーネットのノイズ処理とIEEE 1394機器の接続制限だ。とくに「1394機器の市販品は、デイジーチェーン接続できる数が1台に限られているケースが多い」という。また、制御用OSに使われていたWindows 2000と同XPについても、「デバイスドライバやライブラリ類が多いうえ、トラブルも目立った。もう少しコンパクトなOSが必要かもしれない」と話している。 関連記事 ウワサの“情報家電モデルハウス”を見てきました 関連リンク JEITAハウス [芹澤隆徳, ITmedia] Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. モバイルショップ
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