ニュース 2002年6月6日 08:47 PM 更新

Streaming Media Japan 2002
「Corona」が変える? ネット動画配信の画質と操作

マイクロソフトは、「Streaming Media Japan 2002」で次世代Windows Media技術「Corona」(コードネーム)の概要を明らかにした。圧縮効率とユーザービリティの向上を武器に、ビジネス、ホームの両面でストリーミングの浸透を図る

 6月6日に東京国際フォーラムで開幕した「Streaming Media Japan 2002」で、マイクロソフトが次世代Windows Media技術「Corona」(コードネーム)の概要を明らかにした。Coronaは、マイクロソフトが狙っているホームエンターテイメント市場とビジネス分野の攻略に向けたキーテクノロジーの1つ。圧縮効率の向上とともに、コンテンツ視聴時のユーザビリティ向上が図られている。

安価なPCでもHDTV画質?


米Microsoftのバイスプレジデント、古川享氏(写真は基調講演のもの)

 米Microsoftのアドバンスト・ストラテジー&ポリシー担当バイスプレジデント、古川享氏によると、Coronaのオーディオは、従来のWMA8と同じビットレートで20%の品質向上を実現するという。Windows上で24ビット96KHzのDVD Audioに匹敵するオーディオを扱えるようになる。

 さらに、「WMA Professional」と呼ばれる5.1チャンネルサラウンドも実現する。「よくある擬似サラウンドではなく、完全に独立した5.1チャンネルサラウンドだ」(古川氏)。

 ビデオコーデックは完全にオリジナルで、現在のMPEG-4と比べて2倍の圧縮効率を実現したという。やはりWMV8と比べて約20%の品質向上と、1280×720ピクセル・24フレーム/秒のHigh Difinition品質(720PのHDTV相当)にも対応できるハイクオリティ志向のコーデックだ。「通常なら、18〜24Mbpsのデータだ。これを現在のブロードバンド環境で流すことが可能になる」(古川氏)。


WMVの圧縮技術によるクオリティの変化

 もちろん、この場合はデコードするクライアントにも相応のCPUパワーが求められる。しかし、来日した米Microsoft Windowsデジタルメディア事業部ジェネラルマネージャのDave Fester氏は、Coronaでは「720P相当の動画を3〜6Mbpsにまで小さくできるため、1GHz以上のCPUであれば再生可能だ。また、Corona対応のグラフィックチップがアシストするのであれば、500MHz程度のCPUでも支障ない」と話している。


プレスカンファレンスに参加した米Microsoft Windowsデジタルメディア事業部ジェネラルマネージャのDave Fester氏

 既にATIやNVIDIAといったグラフィックチップベンダーがCoronaのサポートを表明している。これらの製品が登場すれば安価なPCでもホームシアター品質のストリーミングを楽しめるようになるという。


Coronaベースの2Mbps動画とDVDの6Mbps MPEG-2を比較したデモ

バッファなしで再生

 圧縮率の高さに加え、Coronaには、2つの新しい機能が盛り込まれた。いずれもユーザビリティを向上させるもので、「FAST STREAM」(INSTANT ON:即時配信とALWAYS ON:常時配信)と呼ばれている。

 INSTANT ONは、ストリーミング視聴の最大のネックであったバッファリング時間を縮める機能だ。従来のストリーミングでは、コンテンツを選択したあと、バッファリングのために十数秒は待たされた。しかし、Coronaでは、クリックしてすぐに再生が始まる。

 デモンストレーションは、会場内に置かれた.NETサーバとWindows 2000サーバが配信する250Kbpsの映像を従来のMedia PlayerとCoronaで同時に再生するというもの。Coronaは、ボタンをクリックすると、わずか数秒で再生を開始した。従来バージョンとの違いは一目瞭然だ。

 バッファリング時間がなくなることのメリットは、これだけにとどまらない。まるでTVのチャンネルを切り替えるような感覚でコンテンツを変更できるようになるうえ、早送りや巻き戻しといった、「ビデオでは当たり前だった操作をストリーミングで実現できる」(古川氏)。こうした家電ライクな操作性の実現は、リビングルームへの進出を目論むマイクロソフトにとって、大きな武器になるだろう。


Streaming Media Japanの会場に展示されていた松下電器産業のHDDレコーダー。Windows Mediaに対応し、ブロードバンド回線経由で動画コンテンツを視聴できる。製品化は秋頃の予定だ

 一方のALWAYS ONは、回線の太さとクライアントのキャッシュ容量を最大限に活かす機能だ。現在のブロードバンド環境は、他ユーザーと回線を共用するケースが多く、その分ストリーミング再生も不安定になりがち。

 そこで、回線状況のよいときに可能な限りのバッファを溜め込んでおき、回線コンディションが悪化したり、あるいは不意の回線切断が発生しても、バッファの分は再生を続けることができる仕組みを設けた。古川氏は「不安定な回線はもちろん、ワイヤレス環境でストリーミングを視聴する場合にも最適だ」と話している。

ビジネスになるストリーミングへ

 Coronaによって、マイクロソフトはHDTVレベルの映像と5.1チャンネルサラウンドをADSLレベルの回線で提供できることになった。これにDRMを組み合わせ、VoDやe-ラーニングといった用途で、ストリーミングがビジネスとして成り立つための下地を造るのが目的だ。

 「メディア(データサイズ)は小さく、切れるパイプ(回線)でもサービスを提供できる。そのうえ、著作権保護や広告展開も可能だ。シアタークラスの映像と立体音響体験は、経済効果を生むだろう」(古川氏)

 Corona技術を利用するためには、サーバ&クライアントの両方がCoronaに対応している必要がある。サーバ側の.NET Serverに搭載されるWindows Mediaサービスは、現在ベータ版だ。また、Media Playerなどのベータリリースは今夏の予定。同社では、製品版を年内にも出荷する計画だとしている。

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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