ニュース 2002年6月10日 11:28 PM 更新

吉本興業が選んだ「コンテンツ屋の生き方」

高いコンテンツ制作力を持つ、吉本興業。ブロードバンド時代に、どう事業戦略を練るか? その答えは、意外に簡単だった

 約650人のお笑いタレントを抱え、いまや企画・制作など各方面からブロードバンドコンテンツに関わる吉本興業。しかし5〜6年前には、迫り来るべきデジタル化に対し、「吉本のデジタル化とはなんぞや?」と悩む日々だったという。

 そんな同社が出した答えは、「芸人に芸をさせること」。吉本興業の営業部チーフプロデューサー、竹中功氏は考え抜いた結果の事業戦略が「結局ふりだしにもどった」と話した。


吉本興業の竹中チーフプロデューサー(EC研究会で撮影)

 竹中氏は現代を、コンテンツプロバイダー(CP)がコンテンツを提供する媒体が多様化した時代だと指摘する。

 「かつては、コンテンツといえば地上波放送しかなかった。それが、ビデオが出現し、ゲーム機が登場して、CS・BSなど衛星放送も現れた。今ではインターネットによるブロードバンド放送も可能になっている」(同)。

 そんな中、コンテンツの競合関係も複雑だ。

 「以前なら、地上波放送の制作サイドは『4chが8chに勝った』といっていればよかった。だが、そのうち(キャスターの)久米宏さんは、スーパーマリオとも勝負しなければならなくなった」。ユーザーのお金・時間を消費する対象が、増えているという。

 この状況下で、吉本興業はコンテンツの“多面展開”を打ち出す。シンプルに“芸人に芸をさせて、それを売りにいく”という姿勢にこだわり、媒体にこだわらなかったというのだ。

 「吉本は、ゲーム業界にも進出しているし、DVDソフトも出している。衛星放送(SKY PerfecTV!の284ch「ヨシモトファンダンゴTV」)でコンテンツを放送するなど、“どこにでもおる”のがコンテンツ屋なんです」。

 ネット事業で見ても、ナローバンド対応のコンテンツサイト「Fandango!」にブロードバンド対応の「HiFandango!」を運営、FTTHでは東京電力と合弁でコンテンツ収集・著作権処理業務などを行う事業会社キャスティを設立するなど、全方位に展開していることが分かる。

コンテンツ屋の落とし穴

 竹中氏はCPが気をつけるべき点として、“誰のお金と時間をもらっているのか”を十分に意識する必要があると説く。

 「コンテンツ屋は、ともすればマスターテープを渡した相手(=放送事業者、通信事業者など)を客と思ってしまう。でも本当に大事なのは、エンドユーザーの声を聞きながらコンテンツを作っていくこと。これはコンテンツ屋が陥りやすい落とし穴なんです」。

 インターネットでエンドユーザーとコンテンツ屋がダイレクトに結びつくようになると、この問題はますます重要性を増すと竹中氏は言う。

どこが勝っても……

 同社には今後、ITに特化しようという考えはないようだ。竹中氏は「どこ(の業界・事業者)が勝ってもいいように、上手にちょっとずつ参加している」と笑う。

 「現時点で、芸人の芸が一番高く売れるのは、地上波放送という場所。もっとも、これからはそれがどう変わってくるか分からない」。

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[杉浦正武, ITmedia]

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