吉本興業がブロードバンド放送に入れる「きついツッコミ」――Fandango!

ブロードバンドというとすぐ,「インターネットでテレビが見られる」と発想する人は多いはず。しかし吉本興業では,まったく違った考え方でコンテンツを制作している。

【国内記事】 2002年1月8日更新

 ブロードバンド時代に,ますます需要の高まりが予想されるオンラインコンテンツ。吉本興業ではKDDIとシステム面で提携して,吉本の芸人が多数出演するコンテンツ提供サイト「Fandango!」を立ち上げ,有料サービスを展開している。去年にはそのブロードバンド版である「HiFandango!」をオープンして,広帯域のコンテンツもそろえた。

 到来したブロードバンド時代に,コンテンツホルダーとしてはどう対応するのか。ファンダンゴの代表取締役,中井秀範氏に今後の方針を聞いた。


吉本興業東京本社内で。中央がファンダンゴの中井秀範代表取締役

 中井氏が強調するのは,オンラインコンテンツはテレビと違って“参加型”であること。視聴者はネット上に意見を書き込んだり,投票したりと,双方向性を持ったコンテンツに参加できる。この機能は,最大限利用すべきだという。

 「テレビはある程度離れた場所に置いて視聴するが,PCはユーザーの机の上にあって近い距離で視聴する。この物理的距離の差が,まさにコンテンツと視聴者の距離感を規定している」(中井氏)。

 同氏が例として挙げたのは,HiFandango!などで提供中の「ココリコ遠藤の『有限会社青天井』」。同コンテンツでは劇場横の廊下にイスをおき,カメラを回している中で,ココリコの遠藤章造(吉本所属)が掲示板に寄せられた内容を見ながら思いつくまましゃべる,という制作過程をとる。

 「テレビのように前もって多くの準備をしていないし,コンテンツ終了時間も厳密には決まっていない。だが遠藤のほうも,みんなはどう思う? と視聴者に問いかけながら,自由なトークを進めることができる。先日は生放送中アドリブで『帽子が10個あまっているから,今からeメールしてくれた人先着10名にプレゼント』と言い出した。こうした楽しみは,インターネットならでは」(中井氏)。

 中井氏はさらに,現在の通信環境でテレビのように“受動的に視聴する”コンテンツを流すことに疑念を呈する。「お笑いは『間』が命。たとえば(ダウンタウンの)松本が絶好のボケをしても,コンマ何秒で浜田のツッコミが入らないと笑いにならない。これがボケのあとに,続いてツッコミ映像のバッファリングが始まった……などということになると目もあてられない」(同)。

光ファイバー普及後もあくまで「テレビとは別」

 もちろんFTTHが普及して通信環境が整えば,通信速度が向上し,コンテンツの画質はテレビと同等以上になるだろう。テレビの上にSTB(セットトップボックス)を置けば,視聴環境もテレビと変わらない。実際,吉本興業自身,東京電力と共同してブロードバンドコンテンツの開発,提供を行う新会社「キャスティ」(2001年11月30日の記事参照)を立ち上げている。

 しかしそれでも中井氏は,インターネットをテレビとして使うことには反対のようだ。

 「私は元マネージャーという経歴もあり,現場でテレビ制作に関わってきた。テレビ番組は何千万円という制作費と,いいタレントを使って作られており,しかもタダで視聴できるもの。インターネットでこれに張り合っても意味がない。感覚として,インターネットで放送を目指してはいけないことは分かっている」(同)。

 「そもそもブロードバンドというと,放送以外の事業者はすぐに“インターネットテレビ”という発想をしてしまう。これでは成功しない」(同)。

 中井氏と同席した,「キャスティ」のプロデューサーも務めるファンダンゴのプロデューサー,小川仁氏は「FTTHサービスではテレビとも,ADSLとも差別化したい」と語る。

 その内容については「“コンテンツ”は(制作サイドがそれほど)作らなくても“コンテンツ”たり得るというか……」と意味ありげな表情。ここから先は企業秘密とのことで教えてもらえなかったが,どうやら,テレビと異なる形式のコンテンツを志向していることは確かだ。

“PC”を使うことの課題と可能性

 中井氏は課題として,PCを利用することの難しさを挙げる。同氏によれば,Fandango!の視聴者は,中高生から20代前半の女性が6割。PCにそれほど習熟していない視聴者が大半のため,あまり勉強の必要がないサイトにしたいという。

 「どれだけよいコンテンツでも,視聴にあたって別途プラグインが3ついる……というのではいけない。われわれのような娯楽サイトは特に,ストレスのないよう敷居を低くすることが大切」(同)。

 現在は,ボタン1つでできる投票コーナーや,芸人とのシンプルなチャットなど,簡単な操作で“ユーザーに慣れてもらっている”段階。なんとなくやっているうちに,入り込めるようなサイトにしたいという。

 今後は従来のテレビにないような発想のコンテンツ制作に取り組む考え。「正直,悩みは発想にテクノロジーが追いついてこないこと」と中井氏は話す。制作サイドには,日頃から「技術的にできるかどうかは考えるな」と言い聞かせてあるという。

 テレビをよく知る吉本興業だが,オンラインコンテンツではあくまで「インターネットならでは」のスタイル確立にこだわる。そこには課題も多いが,より多くの可能性があると見込んでいる。

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[杉浦正武,ITmedia]

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