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RealのHelixとは何か〜「北の湖包囲網」である(?)
RealNetworksがアナウンスした新戦略こと「Helix」。これは、往年の名横綱、北の湖のように強大なMicrosoftへの対抗策といえる
ご存じのように、米RealNetworksがHelixなる戦略(というかコンセプトというか……)をアナウンスした(記事参照)。これは、「Helix Platform」と「Helix Community」という2本の柱からなるモノ。
Helix Platformというのは、「どんなフォーマットにもエンコードできるエンコーダと、どんなフォーマットでも配信できるサーバと、どんなフォーマットでも再生できるプレイヤ」といったものの集合体である。「プラットフォーム」というのは、ちょっと前だったら「トータル・ソリューション」などと言っていたものを示している。最近、こういった例が多いのだ。
で、RealはHelixベースのソフトウェアを、自社でリリースするだけでなく、技術そのものをオープンにして、多くの会社で共有してストリーミングを活性化させようとしている。これがHelix Communityだ。Realはこのコミュニティの中で、APIを公開していこうとしている。
Helix Producerって……
Helixの具体的な製品としては、RealMedia形式、Windows Media形式、QuickTime形式など、どんな形式でもストリーム配信できる「Helix Universal Server」と、Real Media形式にしかエンコードできない「Helix Producer Plus」がある……。アレ? これはちょっとおかしくないか? あらゆるフォーマットにエンコードできないというのは……。ウーム。
そこで私が出した結論。「今のところ、Helix製品はHelix Universal Serverだけであり、Helix Producer Plusは、“Real Producer Plus”という名前にすべきだった。ちょっとしたRealの勇み足」である。そう考えると、スッキリしてよく眠れるから、そういうことにしたい。
なので、以下、私がHelixという場合には、現バージョンのHelix Producerは含まないこととする。人の会社がつくったコンセプトや製品の分類を勝手に変更して申し訳ないが(笑)、そうしないと、せっかくの素晴らしいコンセプトHelixさんがかわいそうなのだ。そう思いません?
MSとAppleにおけるストリーミングのプライオリティ
さて、Realが何故、Helixというコンセプトを打ち出したか。ここで重要になるのが、いわゆる「3大技術」を持つ会社─―Real、Microsoft、Apple─―において、「誰がどこで儲けようとしているのか」という話である。
Microsoftの場合、メインのビジネスはWindowsというOSの販売である。ストリーミングで儲けなくてもやっていける会社である。ただ、ビジネスを今後拡張する上で、Windowsベースのサーバを広めたいという意向はある。そのサーバ戦略の一環としてWindows Mediaという技術があると考えると、よく眠れる。「クライアントはOK。あとはサーバで世界制覇だ。どうだ、ワッハッハ!」という感じである(どうしてもこういうイメージで捉えられがちな会社です)。
次にApple。Appleの場合も、ストリーミングで1位になるということは、それほど重要なテーマではない。メインのビジネスはMacとMac OS Xの販売である。ただ、パソコンでのビデオ編集については、歴史的にも技術的にも「QuickTimeが一番である」という自負がある。なので、「クリエイターにとって重要な道具」という位置づけだけは死守したい。
さらに、QuickTimeでMPEG-4エンコードをサポートし、MPEG-4を世の中の標準として普及させることによって、制作ツールとしてのMacの存在意義を高めたいといったところだろう。
ストリーミング命!のReal
では、Realの場合はどうか? この会社はズバリ、ストリーミング技術で儲けを出す会社である。もともと、サーバ側の課金やサポートで配信者側からの収入があったからこそ成り立っている会社なのだ。また、「元祖ストリーミング」ということもあり、ストリーミングに対しての気合いの入れ方が他社とは違うのだ。
が、Windows Mediaの台頭によって、技術だけではどうにもならない「会社のデカさ」を感じさせられるようになっていった。踏ん張りどころである。踏ん張りどころではあるが、すでにかなり普及しているWindows Mediaの勢いを直接対決で止めるというのはあまり賢い方法とはいえない。そこで出てきたのが何でも配信できるサーバをリリースして、みんな取込んでしまおうという作戦である。
例えば、Helix Universal Serverだけをリリースしてもいいのだが、そうすると、今度は他者が技術的に追い付いた時が恐い。いっそのこと、そのAPIを公開して、みんな仲間にしてしまおうと考えた。そして継続的に収入が入る仕組みをつくり、あらゆる端末へのストリーミングができる環境を整えたというワケだ。
そんなRealの動きだが、作戦としては悪くないと思う。が、どこか痛々しい感じがしてしまう。本当は自社フォーマットを推したいのに、他のフォーマットもサポートしなければならない歯痒さが感じられるのだ。「うちのほうがいいのにぃ!」これはかつてAppleが味わったのと同じような思いなのではないだろうか?
AppleとRealは接近中?
ということなのかどうかは知らないが、AppleとRealは、どちらかというと接近しつつあるように見える。つい先日も、「Macworld New York」のSteve Jobsの基調講演において、RealのCEO Rob Graserが登場し、RealOne Player for Mac OS Xを発表した。その際、グレイザーはわざわざ「Mac OS X上でもっともスムーズに動く」と言っていた。MPEG-4をサポートしているという点でも両社は争っていないし、RealはReal Server 8の時代から、QuickTimeをサポートしている。両社は争うよりは、協力して「打倒Microsoft」を目指しているように見える。
かなり私の推測が入っているので、話半分で読んでいただいてもいいのだが、いずれにせよ、Microsoftは何かにつけて「嫌われもの」として扱われてしまうことが多い。これは強いからである。しょうがないことなのだ。
昔、横綱北の湖は憎まれ役だった。とんでもなく強かったためと、ふてぶてしい風貌からである。これは決して本人の人格のせいではない。その証拠に、今は立派な親方となっている。Microsoftも、強いがために、北の湖のように嫌われることが多い。しかし、Microsoftにもいい人はたくさんいるし、本当はいい人ばかりの会社なのかもしれない。
が、そうだったとしても、強い者を悪者扱いして、他の会社がタッグを組んで挑むというのは相撲としても……いや、業界の活性化という意味でも面白い。まだまだストリーミングのフォーマット争いは落ち着きそうもなく、ほとんどイヤになってしまうが、果たして今場所はどうなるだろうか?
P.S. 当然のことながら、私も当時はアンチ北の湖。貴輪、さらには魁傑、若三杉らを応援していたクチである。
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[姉歯康, ITmedia]
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