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2003/01/29 22:16:00 更新 |
ファイルローグ裁判、音楽業界に「満額回答」
東京地方裁判所は1月29日、音楽ファイルの無料交換サービス「ファイルローグ」を運営する日本MMOと同社松田社長に対し、著作権侵害の責任を認める判決を下した
東京地方裁判所は1月29日、ユーザーがインターネットを介して音楽ファイルを無料交換できるサービス「ファイルローグ」を運営する日本MMO、および同社松田社長に対し、著作権侵害の責任を認める判決を下した。
これは昨年2月28日、日本レコード協会(RIAJ)と加盟レコード会社19社、および日本音楽著作権協会(JASRAC)が訴訟を提起し、「市販の音楽CDから作成されたMP3ファイルの送受信停止、および3億6500万円の損害賠償」を請求していたもの。その後、同年4月9日には仮処分が下され、日本MMOに対してファイルの内容を示す情報の送受信停止が命ぜられた。
今回の中間判決では、「著作権侵害の主体となるのは、ファイル交換を行う各ユーザーでなく、日本MMOである」ことが新たに認められた。今後、損害賠償額の具体的な算定方法をめぐって審理が継続される。この結果をうけて、RIAJとJASRACは都内ホテルで記者会見に臨み、記者団の質問に応じた。
左から、RIAJ会長の富塚勇氏、JASRAC理事長の吉田茂氏
RIAJ会長の富塚勇氏は、判決に「当然というか、期待したとおり。日本の司法は健全だったということだ」とコメント。「日本が『海賊天国』にならずにすんだのは、喜ばしい」とした。JASRACの吉田茂氏も、「まことに当を得た判断。高く評価する」と、結果を肯定的に受け止める。
会場では、「判決で不満な点はないか?」との質問に対し、RIAJ幹部が「不満な点はございません」と回答。それを聞いた関係者から思わず笑いがこぼれる……といった一幕もあり、地裁からの“満額回答”に、音楽業界が満足している様子がうかがえた。
判決の影響は?
今回の中間判決がもたらす影響として、JARAC側の弁護士、田中豊氏は以下の3点があると予想する。
- たとえファイル交換はユーザー間で行うものであっても、システム提供側が“著作権侵害の主体”として認められたことが示すように、直接的でない権利侵害にも法が柔軟に適用されるだろう。
- 新たな技術開発により、新規ビジネスを開始するにあたり、それが一定の需要がある場合でも、権利侵害が予想される場合は事業化が許されるものではない、という前例になるだろう。
- 国際的に見ても、P2Pによる著作権侵害は許されないという流れができており、日本もこれに協調性を持つことになる。日本でも、欧米と同様の著作権保護が図られるだろう。
RIAJはまた、同社が現在不正コピーを監視するシステムを運用しており、昨年から既に28のプロバイダに“ノーティス・アンド・テイク・ダウン手続き”(記事参照)でいうところの“ノーティス”(通知)を行っていると明かす。今後、ユーザーに対する著作権教育を進めることも含め、積極的に権利侵害を取り締まるとした。
日本MMOのコメント
一方の日本MMO側も、29日にコメントを発表。「(ファイルローグを始めた理由は)利用者にとって必要なサービスだから。ソフトは通信経路の交通整理の役割をしているに過ぎず、一部で発生する違法な交換は、基本的に権利者と利用者の二者間で解決すべき問題であったという認識は変わっていない」とした。
今後、控訴するかどうかは「損害賠償の有無にかかわらず、控訴できる時期になったら控訴する」と回答。控訴審で勝訴するようなら、サービスも再開するだろうと話した。
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[杉浦正武,ITmedia]