リビング+:連載 2003/02/17 23:06:00 更新


簡単にTVでメディアを楽しめる「Play@TV」

メルコがソーテックと共同開発した「Play@TV」を使えば、理想的とはいわないまでも、ホームネットワークを用いた遊びを手軽に体験できる。以前、ソニーの「VAIO Media」と「RoomLink」の組み合わせを紹介したが「パソコンを買い換えるのはなぁ……」などと考えていた人には朗報だ

 AV機能を重視した近年のデスクトップPCには、さまざまなメディアが集まってくる。録画したテレビ番組、DVから制作したビデオ、CDからリッピングした音楽、デジタルカメラで撮影した写真。いずれも、近頃のデスクトップPCが扱うのを得意とするメディアである。もちろん、それらはPCの上だけで扱ってもそれなりに楽しめるが、できることならパソコンの前ではなくてリビングにあるテレビで楽しみたい。

 そう考えていた人は僕だけではないようで、この連載でソニーのVAIO MediaとRoomLinkの組み合わせを紹介したときも反響が大きかった。しかしVAIO MediaはVAIOシリーズでの動作しかサポートしておらず、テレビ録画機能との連携も「GigaPocket」のハードウェアに依存している。“VAIO Mediaみたいなことができればいいけど、パソコンを買い換えるのはなぁ”と思っても、指をくわえて見るしかなかったのだ。

 しかしメルコがソーテックと共同開発したという「Play@TV」を使えば、理想的とはいわないまでも、ホームネットワークを用いた遊びを手軽に体験できるだろう。しかも、RoomLinkよりも安価で、品質も意外に良いのだ。なにより、PCをサーバとするためのソフトウェアがよく考えて作られており、実に簡単に三種類のメディアを扱うことができる。

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Play@TVこと「PC-MP1000」。定価は29,500円

細かな使い勝手が考慮されたサーバ側ソフトウェア

 Play@TVは、簡単にいってしまえばPCをサーバにしてビデオ、音楽、写真を再生するネット対応のセットトップボックス。今ではデジタルのビデオや音楽、写真を再生する装置は珍しくないが、Play@TVのようにPCをサーバとして指名する製品の場合は、サーバ側で動かすソフトウェアを工夫することで、クライアント側(Play@TVにとっては本体)がグッと使いやすくなる。

 しかし、正直いってPlay@TVを実際に使う前はあまり期待していなかった。なぜなら、VAIO Mediaのように特定のハードウェアを決め打ちにして作ったソフトウェアではなく、すべてのPC環境で動作するように作った、ハードウェアを動かすためのサーバソフトしか付いていないだろう。そんな先入観があったからだ。ところがPlay@TVに付属するソフトウェアは、決しておまけなどではなく、Play@TVの機能を生かす重要な役割を見事にこなしていた。

 サーバ側にはメディアストリームを適切な帯域で配信するストリームサーバのパートと、各メディアを整理してクライアント側にコンテンツリストを提供するディレクトリサービスの2つが必要だ。Play@TVの場合、前者の機能はごくシンプル。利用しているネットワークによってビデオの帯域を制限する機能(有線LAN時4Mbps、無線LAN時2.5Mbps)やサイズが小さい(解像度が低い)ビデオをテレビの解像度に補完してから転送する機能以外は、設定項目に特に見るべきものはない。しかし、その背景では写真解像度の最適化(テレビ解像度に落としたり、サムネイルを作成したりといったプロセッサパワーが必要な部分でPCのパワーを利用している)が行われている。

 また、コンテンツディレクトリもPC側で整理してから引き渡すため、エンドユーザーは待ち時間無しで大量のメディアファイルへとアクセスできる。たとえば音楽ファイルをアーティスト別やジャンル別などに整理して表示させようとすると、PC側で分類してリストだけがクライアントに送られる。だから、たとえ音楽ファイルが数千とかいう数になっても、たいした待ち時間なしに目的のメディアデータを探し当てることができる。

簡単にメディアデータを登録

 使い勝手の面では、メディアデータの登録のしやすさも重要なポイントだ。Play@TVでは「メディアオーガナイザー」と名付けられたソフトウェアで、音楽、ビデオ、写真の登録を行う。プレイリストの作成もこのソフトウェアを使えば簡単だ。

 音楽データはWMA、MP3、WAVを登録可能だが、フォルダごとインポートする機能を用いれば、インポートしたフォルダ名をアルバム名と見なしてPlay@TVのディレクトリへと登録できる。この際、Windows Media Playerが作ったジャケット写真が見つかれば、それが自動的に登録される。このジャケット写真はPlay@TV本体で音楽にアクセスするときにも利用される。

 メディアオーガナイザーを用いて音楽CDを録音することも可能で、デフォルトではWMAで録音、自動登録が行える。MP3での録音も可能だが、その場合はBladeEnc.dllを別途用意する必要がある。ただ、ジャケット写真が利用できるなどのことを考えると、WMPで録音したものをインポートする方が楽しめるはずだ。

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WMPで作成した音楽フォルダから取り込むと、ジャケット写真も自動登録される
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ジャンルごとの分類やプレイリストの登録などはPC側ですべて処理されるため、クライアント側の負担は少ない

 ビデオデータに関しては、また別の工夫が施されている。ビデオデータを保管するフォルダとしてPVRフォルダ、ETCフォルダを用意し、それぞれのフォルダにファイルが作成されると、自動的にディレクトリへと登録され、Play@TVからアクセス可能になるのだ。

 この機能はテレビチューナーカードなどで録画したビデオデータを、自動的にカタログに登録することを目的としたもの。再生できるビデオデータはMPEG-1/2、WMV、AVIだが、MPEGファイルは「.mpeg」「.mpg」のいずれかでなければならない。従って「.m2p」などの拡張子で保存するテレビチューナーカードを利用しているユーザーは、運用に一工夫が必要となる。

 たとえばカノープス「MTVシリーズ」はMPEG-2ビデオの拡張子を.m2pで記録するが、拡張子を.mpgなどに変更すると、そのままPlay@TVで再生することができた。定期的にビデオを保存するフォルダで「ren *.m2p *.mpg」などと実行すれば、ある程度は運用を自動化できるだろう(もちろん.mpgや.mpegで録画できれば、それにこしたことはないが)。

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ビデオデータとして登録するためには、指定された拡張子でなければならない。ここではMTVシリーズのm2pファイルをリネームして登録してみた
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ビデオデータのサムネイル画面は任意の再生位置からキャプチャして割り当てることが可能
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PVRビデオフォルダとその他ビデオフォルダに登録されたフォルダにビデオファイルが作成されると、自動的にカタログへと登録される

意外に良いビデオ出力品質。しかし……

 さて、実際にPlay@TVをテレビに接続してみると、意外に画質がいいことに驚いた。インターレース出力ながら、小さな文字もハッキリと見える。D1出力はもちろん、S端子やコンポジットビデオ端子の画像も安定し、滲みも見られない。

 しかし、ビデオ出力信号そのものの品質は満足できるものの、ビデオ再生の品質には不満が残る。前述したようにLAN経由でもビデオデータの最大ビットレートは4Mbpsで、それ以上のビットレートは再生できない可能性がある、とマニュアルに記されている。

 実際に8Mbpsのビデオを無変換で再生させてみたところ、スロー再生になってしまう。Play@TVのストリームサーバは自動的にビットレートを落とす機能を持っているため、PC上でリアルタイム変換しながら配信すれば正常に再生可能だが、さすがに4Mbpsでは画質が落ちる。

 また、残念なことに音声に関してはアナログ出力はテレビ内蔵のプアなスピーカーでもハッキリと分かるほど品質が低い。本機には音声出力レベルをリモコンで調整する機能があるが、ボリュームを絞ると音の分解能が著しく低くなり、ボリュームを最大近くにすると(それでもCDプレーヤーなどよりは出力レベルは低い)音が割れてしまう。テレビを録画したメディアソースでは気にならないが、録音レベルの高いCDではかなり目立つ。

 ビデオの音声程度ならばそのまま使えるだろうが、本機で音楽を楽しみたいと考えているなら、光デジタルアウト(TOS-LINK)でAVアンプやオーディオDACなどへ接続することを勧めておきたい。

 それらの点さえ気にしないならば、ビデオの再生レスポンスも良く(再生指示後、4秒程度で再生が始まる。音楽なら1秒以内)リモコンでの操作性もいい。デジタル写真のスライドショウも、必要なピクセル数に変換してから送受信されるため、サムネイル表示や画像の切り替えも高速だ。sRGB画像をそのままテレビで表示するため、色が濃く、“鮮やか”になってしまうのが難点だが、むしろその方がきれいに見えて良いと思う人もいるかもしれない。

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フォトアルバムを登録したところ。縦位置写真の回転はあらかじめ行っておかなければならない

テレビ中心に考えるなら

 たとえば一人暮らしでワンルームマンションに住んでいるなら、Play@TVは必要のないデバイスだ。しかし、自分の部屋とテレビが置かれているリビングが別々ならば、Play@TVはなかなか楽しめる製品である。RoomLinkほどの統合されたメディア環境を構築できるわけではないが、汎用の製品としてできる限り、簡単にテレビでPC内のメディアを扱えるようになっている。

 そして何より安い。Play@TVの実勢価格は2万円台後半。すでにPCに大量のメディアを抱え込んでいるユーザーには、十分に魅力ある価格と言えるだろう。ただ、個人的には3万円近い金額を払うのであれば、音楽が楽しめる最低限のアナログ音声出力が欲しいと思う。テレビが自宅でのエンターテイメントの中心で音質に関してもあまり気にしないと考える人なら楽しく使うことができるとは思うが、AV機器レベルの画質・音質を求めてはいけない。

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[本田雅一,ITmedia]



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