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2003/04/02 23:59:00 更新 |
ROBODEX 2003:PINO、“ver.2”でマッチョに
“ロボットの伝道師”ことPINOがバージョンアップ。外観こそ変わらないものの、中身は専用モーターと新しい分散制御機構によってパワフルになった。その隣では「morph3」が床運動と太極拳を披露
宇多田ヒカルのプロモーションビデオ(PV)に出演したことでも知られる“ロボットの伝道師”「PINO」。その2世代目となる「PINO ver.2」が「ROBODEX 2003」で公開された。PVでは滑らかな動きを演出するために一部ダミーが使われたというが、今回はちょっと様子が違う。
左が初代「PINO」、右が「PINO ver.2」。外観は変わらないが、中身はかなりマッチョになっていることがわかる。どうやら“着やせ”するタイプ
ロボットのアクチュエーターは、人間でいえば筋肉。その駆動源であるモーターの性能がロボットの運動性能を左右する。先代のPINOは、これにラジコン用モーターを使用していたが、PINO ver.2では、ZMPと日本電産コパルの共同開発によるロボット専用モーターを採用した。
その特徴は高トルク&低バックラッシュ。「通常、モーター駆動でバックラッシュと呼ばれる“がたつき”が生じる。これはソフトウェアで制御しきれない部分だが、今回はバックラッシュを抑える専用モーターを開発した」(ZMP)。また、従来は6V駆動だったが、専用モーターは12V駆動となり、出力も従来比2倍。トルクの向上が安定した動作を可能にするという。
さらに、専用モーターにポテンショメータを内蔵したことで、角度情報をコントローラにフィードバックすることも可能。先代PINOはセンサー類を持たなかったが、今回はジャイロや加速度センサーの情報と合わせ、3軸の位置情報を読みとれるという。
「制御系もZMP独自開発によるCPUモジュールとサブCPUモジュールにより、効率的な分散処理制御が可能になった。専用モーターと制御系の性能アップにより、歩行時の安定性が一段と向上している」(同社)。
またZMPによると、PINO ver.2では製造工程の効率化によって従来比35%のコストダウンを可能にしたという。従来のPINOは一体450万円だったが、ver.2は290万円。「ロボット工学や人工知能の研究用プラットフォームとして、大学や研究機関に使ってもらいたい」(ZMP取締役営業部長の比嘉勝孝氏)。PINO ver.2の出荷は、5〜6月の予定だ。
太極拳もできます。morph3
ZMPブースには、もう1つの目玉がある。morph3による動作デモンストレーションだ。
丸まってみました。morph3の全長は38cm、重量は約2.4kg。30の自由度と138のセンサーを持つ
展示会などには頻繁に登場していながら、“ぐったり”していることが多かったmorph3。しかし今回は元気だ。集まった報道関係者の前で、床運動と太極拳を披露している。
「ロボットを製作するときには、中身を作ってからガワを被せるのが常だが、morph3の場合は部材メーカーと協力して(ガワの)パーツ1つ1つを機構からデザインした」(同社)。最適なデザインの部材と高出力モーターを採用したmorph3は、「意外なほどパワーを要求する」太極拳の緩やかな動きを的確にシミュレート。高度な全身運動を実現したという。
なお、ZMPではmorph3の販売は行わず、レンタルを通じてロボット研究用に提供している。
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ZMP
ROBODEX 2003
[芹澤隆徳,ITmedia]