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2003/05/19 23:33:00 更新 |
“パートナーロボット”開発、1000万円から可能です――NEC「RoboStudio」
NECとNECシステムテクノロジーが、ロボットの基本ソフトウェアとアプリケーション開発ツールなどをセットにした、ローコストなソフトウェアプラットフォームをロボットベンダー向けに発売する。“PaPeRo”のコミュニケーション技術が、パートナー型ロボットの頭脳のベースとなって活躍する日も近い
NECとNECシステムテクノロジーは5月19日、ロボットソリューションビジネスへの参入を発表。両社が進めてきたロボット関連の技術開発やノウハウを生かすことで、パートナー型ロボットの開発が低コストかつ短期間で行える汎用のロボットソフトウェアプラットフォーム「RoboStudio(ロボスタジオ)」を今年7月からロボットベンダー向けに発売する。
「RoboStudio」は、ロボットの基本ソフトウェアとアプリケーション開発ツールなどをセットにしたロボット開発の土台となるもの。NECテクノロジーが、NECからロボット関係の技術ライセンスを受けてRoboStudioの販売を行うとともに、ロボット研究・開発に関するコンサルティングサービスや、開発受託サービスなども併せて実施。企業や大学などによるパートナー型ロボットの開発・製品化を支援する。
RoboStudioはWindows版(今年7月発売)とLinux版(今年12月発売)があり、価格は1000万円からとパートナー型ロボットの開発環境を低コストで手に入れることができる。ランタイムライセンスやコンサルティング/開発請負、保守サービスなどは、個別の見積りとなる。
近年、ペット型ロボットや生活支援を行なう人型ロボットなど、家庭生活の中に溶け込んでパートナーとなるような“パートナー型ロボット”の研究開発が企業や大学などを中心に積極的に行なわれている。だが、莫大な開発コストが必要で、開発期間も長期に及ぶことなどが、ロボットビジネスへの参入の障壁となっている。
「ロボット市場は2006年以降大きな伸びが期待されるが、その原動力となるのはパートナー型ロボット。しかし、人とコミュニケーションができるロボットを開発しようとすると、基本ソフトウェアからすべて作らなくてはならない。仮にこれらを1からやると、長期の開発期間を要し、開発費は数億円に及ぶ。このような、開発に必要な基本ソフトウェアなどを汎用のプラットフォームとして提供するのがRoboStudio。ロボットベンダーは、どんなロボットにするかといったアプリケーション部分の開発に専念できる」(同社)。
ロボット市場予測
RoboStudioは実行環境として、ロボット特有の制御を管理する「ロボットバーチャルマシン」や、各種機能モジュール「ワーカ」(音声認識、画像認識、メール、ブラウザ)を用意。また開発ツールとして、ロボットのふるまいや会話などを作成する「シナリオエディタ」「モーションエディタ/プレーヤー」と代表的なシナリオを収録した「リファレンスシナリオ」がセットに含まれる。
「従来は、複雑なイベント処理やハードウェア制御、ロボットのふるまい、会話などをすべてまとめてハードコーディングしていたため、開発やメンテナンスが非常に困難だった。RoboStudioでは、シナリオとワーカを分離することで、簡潔でメンテナンスしやすいシナリオを効率的に作成できるようになった。また、非同期のイベントを統合的に処理するロボットバーチャルマシンや、シナリオ間で共有できる知識データベース、プラグイン方式のワーカなどで、従来の課題を解決。多様なシナリオやハードウェアに対応できるロボット開発が可能となった」(同社)。
RoboStudioの構成
両社ではRoboStudioを、介護や手伝いなどを行なう「ケアロボット」やショールームの「ガイドロボット」向けに、今後3年間で20ユーザーの販売を見込んでいる。すでに販売契約を結んでいるロボットベンダーが1社あり、さらに数社が現在採用を検討しているという。
進化した“PaPeRo”の頭脳が、パートナー型ロボットたちのベースに
RoboStudioのベースとなるロボット技術が、NECが2001年3月に発表したパートナー型ロボット「PaPeRo」だ。
NECは、1997年から人とのコミュニケーションが行えるパートナー型ロボットの研究をスタート。1999年には、PaPeRoの前身となる「R100」を発表している。一般家庭での安全性や信頼性なども考慮されたPaPeRoは、実際の家庭環境でのモニタ評価を約100の家庭で実施。また、さまざまな専門分野の学術機関と共同で、ロボットと人との関わり方に関する研究や調査活動を行ってきた。パートナー型ロボットを容易に開発できるRoboStudioには、PaPeRoによる実証実験のノウハウが生かされているのだ。
のべ1000日におよぶ実証実験を経て、PaPeRoは今回新バージョンへと進化した。
新バージョンへと進化した2003年版「PaPeRo」
2003年版「PaPeRo」は、実環境での認識性能「状況検知フィードバック技術」が向上している。一般家庭などで「周りが騒がしい」「逆光」など、音声や顔を認識するのが困難な状況をロボット自身が自動検知し、移動するなど解決策を講じたり、認識困難な状況をユーザーに伝えて改善を促すといった行動をロボットがとるようにした。
また、ユーザーの嗜好や対話履歴、ロボットの価値観などを加味してインターネット情報を検索・取得し、それをもとに会話を行うことで、ユーザーフレンドリーな対話が可能になった。
さらに、ロボットのふるまいに一貫性や規則性を持たせるため、ロボット向けの「行動モデル」を独自に開発。欲求/感情/性格(ロボ格)というパラメータを設定し、これらのパラメータに基づきロボット自身が行動を選択できるようになっている。
「パラメータは、ユーザーとの対話でさらに変化していく。これにより、もの知り/ダンス好き/ゲーム好き/ぐうたらといった個性あるPaPeRoが形成される。また、ユーザの接し方によってロボットの行動を時間的に変化させる“時間変化型シナリオ”や、コミュニケーションのてがかりを声質/口調/動き方などで表現する手法を実装した」(同社)。
ユーザーとのコミュニケーションを通じて、個性あるPaPeRoが生まれる
さて、パートナー型ロボットとして進化を続けるPaPeRoだが、一般向けに販売する予定はないという。
「PaPeRoは鉄腕アトムと同様、NECが作り出した固有のキャラクタで研究開発に特化したロボット。街中にアトムが何体も歩き回っていたら気持ち悪いのと同じように、PaPeRoの量産は考えられない。むしろ、RoboStudioを通じて、PaPeRoの技術が広く利用されていく方向をわれわれは望んでいる」(同社)。
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[西坂真人,ITmedia]