リビング+:特集 2003/05/26 23:59:00 更新

特集:IP電話を徹底解剖する
IP電話の音質は“携帯電話並み”か?

既存の加入者電話に置き換わり、ライフラインとなる可能性もあるIP電話。その実態を、5回にわたって検証してみたい。第1回目のテーマは“音質”だ

 昨年来、多くの事業者がIP電話サービスの提供を開始した。既存の加入者電話に替わる、ライフラインとなる可能性もあり、今後の展開に目が離せないところだ。

 もっとも、エンドユーザーにとってVoIP(Voice overIP)は、まだまだなじみの薄い技術。従来の固定電話と比較して、音質や機能にどれだけの違いがあるのか、詳細を知らない部分も多いだろう。

 Living+では、本日から5回にわたって、IP電話の実態を検証する。第1回目の今日は、まず“IP電話の音質”について調べてみたい。

5月26日: IP電話の音質は“携帯電話並み”か?
5月27日:IP電話のアキレス腱は「端末」?
5月28日:保存版・キャリア相互接続「相関図」
5月29日:技術から見る「IP電話で110番」の進捗度
5月30日:モバイルIP電話の可能性を探る

IP電話の音質を評価する“R値”

 IP電話の音質を評価するにあたり、参考になるのが、情報通信技術委員会(TTC)が定める品質評価法だ。同団体は、2002年9月にTTC仕様書「TS-1001」を策定、今年4月23日にはこれを補強し、「IP電話の通話品質評価法」(TTC標準JJ-201.01)を制定している。

 この評価法の中では、3つの評価尺度が規定されている。「R値」「エンドトゥエンド遅延」「呼損率」だ。VoIPサービスはこうした尺度を用いて、クラスA、B、Cの3つに分類される。

品質クラスクラスAクラスBクラスC
R値>80>70>50
エンドトゥエンド遅延<100msec.<150msec.<400msec.
呼損率0.15以下0.15以下0.15以下

*R値と遅延は、表中の数値を95%の確率で満足させる必要がある

 R値とは、雑音感、音量感、エコー、途切れ感などを考慮し、20種類の入力パラメータから算出される、総合的な音声品質指標。ITU勧告G.107で規定されており、国内でもこれに準拠して標準化が行われている。

 エンドトゥエンド遅延とは、音声データを伝達する際に生じる、いわゆるディレイのこと。また、呼損率とは、呼がなんらかの理由で拒絶され、サービスを受けられない割合を示す。

 TTCでは、参考としてクラスAを“固定電話と同等の音質”、クラスBを“携帯電話並み”とみなしている。それでは、現在提供されているサービスの各事業者が提供するサービスは、どのクラスに分類されるのだろうか? この点を、NTTコミュニケーションズに聞いた。

他社と相互接続しても「クラスB以上を実現」

 NTTコミュニケーションズ(OCN)は、3月からIP電話サービス「OCN.Phone」を提供する事業者。音声データは、G.711の非圧縮方式で扱っており、最低で64Kbpsのビットレートが必要となる。音声パケットのヘッダー部分も含めると、約100Kbpsの帯域を利用する。この音声パケットを、特に優先制御などは行わずにネットワーク内で伝送しているとのこと。

 同社のブロードバンドIP事業部マーケティング部長、高瀬哲哉氏は、「音声品質が悪いとの指摘は、受けたおぼえがない」と自信を見せる。

 「バックボーン内は帯域が潤沢だし、ユーザー宅へのアクセス回線も、リンクアップ速度で300Kbps程度あれば問題なくサービスを提供できる。専用ネットワークを用意したり、優先制御を行ったりといった工夫は、特に行っていない」(高瀬氏)。いわば、回線容量の大きさで音質を保証しているわけだ。

 もちろん、中小のISPと相互接続を行った場合、相手のネットワーク内で十分な帯域が確保できていないようだと、品質の劣化を起こすおそれもある。こうした事態を防ぐため、OCNでは各ISPのネットワーク間で音声データを折り返し送受信し、ディレイを測定。互いに、一定のクオリティを保って“相手に迷惑をかけないよう”、回線品質を確認し合っているという。

 「クラスCじゃ寂しい、クラスBは担保しよう――ということで、やっている。実際に、接続している20程度のISPとの間では、クラスB以上を実現している」(高瀬氏)。

 ネットワークの状態にもよるため、一概にはいえないが、おおよその場合には携帯電話並みの音質を保っているといえそうだ。

IP電話サービスで一番難しいのは……

 IP電話では、ほかの事業者も概して、ビットレート64Kbpsで音声パケットを伝送している。回線容量に余裕がある限り、音声品質はNTTコミュニケーションズの場合と、そう変わるものではないだろう。

 しかし、ここでもう1つ注意すべき点がある。それは、このところユーザー宅に設置されるVoIPアダプタで、トラブルが続いていること。実は、せっかくネットワーク側でクラスBの品質を保ち、ユーザー宅までVoIPパケットを伝送したのに、そこにあるVoIPアダプタ側で問題が発生する場合があるというのだ。

 もちろん、ユーザー側にしてみれば、正常に通話できなければサービスの“品質が悪い”と判断する。もしIP電話が品質が悪いとの印象を受けるとすれば、その理由はVoIP端末側にあるのかもしれない。明日は、そのあたりを検証していきたい。

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関連リンク
▼情報通信技術委員会
特集:IP電話を徹底解剖する 1/5 次
5/27掲載分

[杉浦正武,ITmedia]



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