リビング+:ニュース 2003/07/11 22:38:00 更新


NTT東西は“がっかり”?〜光ファイバーの規制撤廃は見送りに

NTT東西地域会社の光ファイバーが借りられなくなる? と通信事業者を戦々恐々とさせた“指定電気通信設備の規制撤廃”問題が一応の解決をみた。

 「NTT東西地域会社の光ファイバー設備が借りられなくなる?」と通信事業者を戦々恐々とさせた指定電気通信設備の規制撤廃問題(記事参照)が一応の解決をみた。7月10日に行われた衆議院総務委員会では、電気通信事業法の改正案を“原案通り”可決し、参議院で採択された附帯決議が提出されることはなかった。

 ことの発端は、5月22日に行われた参議院本会議で、電気通信事業法の改正案を通過させる際に附帯決議が採択されたこと。附帯決議とは、引き続き検討すべき課題などを付記したもので、一般的に野党などが法案に賛成する条件として採択される。ここに「光ファイバーに関する指定電気通信設備規制の在り方について、競争状況の進展を踏まえながら検討を行うこと」という項目が盛り込まれた。

 指定電気通信設備は、市場で優位な立場にある第一種通信事業者を対象とした規制の1つだ。これに指定されると、他事業者に接続条件などを明示し、かつ自社が設備を利用する場合と同じ条件で貸し出さなければならない。そして今回の焦点は、NTT東西地域会社の光ファイバー網と関連設備が「指定から外れるかもしれない」という点だった。

 ダークファイバーの多くをNTT地域会社に頼っている他事業者にしてみれば、提供条件が変わると自社の事業計画に大きく影響する。このため、NTT以外の通信事業者が一斉にこれに反発。KDDIと日本テレコムが総務省に対して要望書を提出(記事参照)するなど波紋を起こした。

電気通信指定設備でなくなると?

 とくに、2003年度後半にもFTTHサービスを開始するKDDIにとっては大ごとだ。同社は、アクセス回線の大半を、NTT東西地域会社の加入者系ダークファイバーとする予定。KDDIブロードバンド・コンシューマ事業本部ブロードバンド企画部長の片岡浩一氏は、指定電気通信設備の規制がなくなった場合の影響をこう説明した。

 「接続料金の問題はもちろんだが、これまで開示されていた接続条件の開示義務が(NTT側に)なくなることで事業計画を立てにくくなる。さらに、NTT局舎内のコロケーションにも問題が生じかねない。指定設備への接続であれば設置場所はたいていキープされているが、指定設備でない場合は、極端な話“出ていってください”といわれる可能性もあるだろう」(同氏)。

 一方のNTT側は、以前から指定電気通信設備の規制を撤廃するように求めてきた。同社にしてみれば、他社と競争するために安く設定したはずの光ファイバーが、指定電気通信設備である限りは、他社にも同じ料金で貸し出さなければならない。同社は当初からこれを問題視しており、例えば、2001年に東京電力のFTTH事業が認可される際、総務省が実施した意見募集で「光ファイバー設備を指定電気通信設備の対象外に」(NTT東日本)という条件を挙げていた。

 衆議院総務委員会で質疑に立った民主党の伊藤忠治議員は、指定電気通信設備の規制を「1979年の組織改編のときにメタル回線にかかっていた規制をそのまま光に適用したもの。都道府県別にエリアを区切り、その中で50%以上のシェアを持つ通信事業者が規制の対象となるが、ADSL(電話線)とFTTHを同様に扱うのは無理がある」と指摘した。

 電話線は、電電公社時代から“すべての家庭に提供する”ことを前提に設備を敷設してきたが、FTTHの場合は「今後、本格的に加入者拡大を図ろうとするもの」。たとえ同じ県内でも都市部と郊外では需要も大きく異なり、採算性の高い都市部だけに展開している事業者は規制の対象になりにくい。そもそも規制の基準が間違っており、NTT地域会社に不利という論旨だ。

 こうした意見に対し、総務省の鍋倉真一総合通信基盤局長は「光ファイバーの提供問題は、“NTTとNCCとの関係”(設備規定の部分)と“通信事業者と利用者の関係”と区別して考える必要がある。NTTとNCCとの関係については、オープンネットワーク政策を引き続き維持していくというのが総務省のスタンス」と競争政策を引き続き進めることを表明。同時に「本法案では(NTT地域会社の)利用者サイドに対する約款規定を大幅に緩和している。NTT地域会社には、“利用者との関係”の部分で競争してほしい」とした。また、片山虎之助総務大臣も、「今後も情勢は変わるだろうが……」と前置きした上で、「当面はこの制度を維持していく」としている。

 結局、10日に行われた参議院総務委員会では、「電気通信事業法」および「日本電信電話株式会社等に関する法律」(いわゆるNTT法)の一部改正案が原案通り可決され、焦点となった附帯決議が提出されることはなかった。当面は電気通信指定設備の規制が維持され、NTT地域会社は従来通りの条件で光設備をNCCに貸し出さなければならない。

 これにより、NCC側には安堵の空気が流れはじめた。「われわれは、以前からADSLと同様に光ファイバーも指定設備であるべきと主張してきた。(競争政策の維持は)当然の結果と認識している」(KDDI)。

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関連リンク
▼衆議院

[芹澤隆徳,ITmedia]



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