リビング+:ニュース 2003/07/17 20:14:00 更新

WIRELESS JAPAN 2003
東電の5GHz帯FWAは年内サービスイン?

「5GHz帯を使った無線アクセスサービスの実効速度は25M〜26Mbps。ISPに回線を卸し売りする形を採用し、年内にもサービスインしたい」。東京電力光ネットワーク・カンパニーのバイス・プレジデント、板橋敏雄氏が高速無線アクセスサービスの概要を明らかにした。

 今年3月にスピードネットを統合し、同社のFWA(Fixed Wireless Access)事業を受け継いだ東京電力。現在はFTTHの「TEPCO ひかり」とともに2.4GHz帯を使ったFWAサービスを提供しているが、数年前から準備を進めてきた5GHz帯の高速無線アクセスにも、ようやく事業化の道筋が見えてきたようだ。「WIRELESS JAPAN 2003」のカンファレンスで、東京電力光ネットワーク・カンパニーのバイス・プレジデント、板橋敏雄氏がファースト・ワンマイルとしての高速無線アクセスを語った。

 まず板橋氏は2.4GHzサービスを振り返り、「大きな干渉問題もなく展開できた」と話す。2.4GHz帯は、だれでも免許なしで利用できるISMバンドのため、サービス開始当初は電子レンジなどの干渉が懸念されていた。

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板橋氏が挙げた最大の干渉源は温熱治療器。接骨医などが使用するもので、「全くシールドされていない上に、100ワット単位で指向性もなく電波を拡散させる」強敵だ。結局、ネットワーク設計の変更などで対応したという

 IEEE 802.11b/gに見られるように、2.4GHz帯も使い方によっては最大11Mbpsあるいは54Mbpsといった高速無線通信が可能だ。しかし宅内よりも長距離の伝送が必要なFWAでは、伝送距離と通信品質を確保するため、耐ノイズ性の高いFH(周波数ホッピング)方式を採用した。

 FH方式は、79ある周波数チャンネルをホッピングするように次々と切り替えながら伝送する方式。これにより、ノイズ源を避けることができたが、IEEE 802.11bなどのDS(直接拡散)方式に比べて伝送効率の点では不利だ。ADSLが数百Kbpsの時代ならともかく、ここ数年の高速化により、最大2MbpsのFWAは徐々に不利な立場となってきた。

 「上り下りの伝送速度が対称のサービスとはいえ、最大2Mbpsでは“数字”が厳しくなってきた」(同氏)。

 あわせて、昨年5GHz帯のうち“航空用として確保されているが、当面使う予定がない周波数帯”(5.03G〜5.091GHz帯)を暫定的に無線アクセスシステムに割り当てることになった。東電の5GHz帯FWAもこの周波数帯を利用する。

無線部分の暗号化も

 新サービスでは、IEEE 802.11a準拠の無線方式を採用し、物理速度は最大54Mbpsを実現。アクセスポイント間の負荷を制御して輻輳を防ぎ、またIP電話を想定したQoSも実現するという。さらに、ワイヤレス部の秘匿性を確保するため、暗号化を行う。暗号技術の詳細は明らかにされていないが、同氏は「標準規格+αの仕組みを考えている。(秘匿性は)AES以上だ」と話している。

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同社ブースに展示されている5GHz無線アクセスサービスのイメージ。IP電話のために電話機も設定した

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5GHzサービスの基地局とアンテナ

 気になる実効速度は、25M〜26Mbps程度になる見込みだ。実サービスでは、これを30〜40世帯で共有することになるが、一部のヘビーユーザーが帯域を占有しないよう、帯域制御も可能にするという。「われわれの場合、ヘビーユーザーにはFTTHへの移行というパスもある」(同氏)。

 もう1つ、従来の2.4GHz帯FWAと大きく異なるのが、ISPを選択できることだ。無線アクセスは、これまでISPとしてのスピードネットに限られていたが、5GHzサービスではISPを選択できるようにする。つまり、「TEPCO ひかり」と同様、ホールセールの形態だ。なお、講演のなかでは具体的なサービス料金を示すことはなかったが、“高速ADSLに劣らないスループットと価格帯にする”と話していた。

 「現在は商用設備の検証を進めている段階。7月から秋頃までの予定でさらにフィールドテストを行い、年内にサービスインすることを目標にしている」(同氏)。

課題はチャンネル不足と中継手段

 上り下り対称のスピードにくわえ、「工事期間の短さ、宅内工事の簡単さ」といったメリットをあわせ持つFWA。5GHz帯の利用によってスループットも大幅に向上し、競争力を確保した。しかし現在のところ、いくつかの課題が残されている。

 その1つは、5GHz帯の用途が制限されていること。アクセス回線としての利用は可能になったものの、バックボーンとアクセスポイントを結ぶ“中継系回線”として使うことができない。

 このため、高いビルやマンションを超えてサービスを提供する場合などでは、ほかの手段を講じなければならない。同社は、同等の速度を持つIEEE 802.11gなどの採用も含めて検討を進めながら、総務省などに対して用途制限の緩和を求めているという。

 もう1つの課題は、絶対的なチャンネル数の不足だ。昨年の講演でも触れられているが、暫定的に開放された5.03G〜5.091GHz帯では3チャンネルしか使えない。2007年までに4.9G〜5GHz帯がFWA用途に追加される予定ではあるものの、この周波数帯は固定マイクロ通信が現在も利用しているため、なかなか開放の目処が立っていない。

 「速やかにサービスの面的な拡大を図るには、さらなる周波数帯の追加が必要だ。固定マイクロ通信の速やかな移行と、当該周波数帯の使用が可能になる時期を事前に明確化してほしい」(板橋氏)。

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5GHzサービスの概要図

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▼東京電力

[芹澤隆徳,ITmedia]



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