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2003/07/23 19:34:00 更新 |
ケーブルテレビ 2003
FTTHよりも高速なCATV
同軸ケーブルを使いながら、下り最大126Mbps、上り最大30Mbpsを実現する「バルク伝送システム」が「ケーブルテレビ 2003」に出展されている。既にマスプロ電工と中部ケーブルネットワーク、シーテックの3社が共同で実証実験を行っているという
7月23日に開幕した「ケーブルテレビ 2003」の展示会場には、CATVとFTTHの設備が数多く展示されているが、もっともユニークかつ高速な事例をマスプロ電工ブースで見つけた。同軸ケーブルを使いながら、下り最大126Mbps、上り最大30Mbpsを実現する「バルク伝送システム」だ。
マスプロ電工ブースの「バルク伝送システム」デモ。ノートPCの下にあるのが検証用のケーブルモデムだ
バルクと聞いてピンときた人も多いかもしれない。たとえば、ISDNの128Kbpsサービスは、64KbpsのBチャンネルを2本束ねる形で実現されていた。マスプロのアプローチも同様で、「下り最大42MbpsのDOCSIS 1.1を3チャンネル使う」(同社)。
CATVの場合、伝送路として使われるのは770MHzまでの周波数帯だ。その中で、6MHzずつ区切ったものを1チャンネルとして放送やケーブルインターネットサービスに利用されている。ただし、放送が数十から百数十チャンネルもあるのに対し、IP通信に使われるのは上りと下りの計2チャンネルのみ。複数チャンネルを使って高速化できることは“理論的”には知られていたものの、実現したのは同社が初めてという。
システム構成例(クリックで拡大)
「最近はFTTHや光+同軸ケーブルといった手段で100Mbpsクラスの伝送速度を実現するアプローチが多いが、この場合は局側設備から伝送路、そして宅内装置に至るすべての設備を交換することになる。事業者側のコスト負担が大きい」(同社)。
そこで、既存のHFCインフラを活かしながら、100Mbpsを超える通信手段を提供するために考え出されたのがバルク伝送システムだ。同システムでは、ケーブルモデムこそ専用のものに入れ替える必要があるが、局側設備には変更をくわえるだけ。伝送路はアンプなどの機器も含め、そのままの形で利用できる。
ただし、いくつか課題もある。ケーブルモデムは、ADSLなどと同様に局側のモデムと1対1で通信を行うため、3チャンネル分の通信を行うには3台分のケーブルモデムが必要になる。実際、マスプロが試作したケーブルモデムには、DOCSIS1.1のモデム基板が丸ごと3枚入っている。かなり大型のきょう体だ。
ケーブルモデム。モックアップだが、やはり通常のモデムに比べるとかなり大きめ
もう1つの課題は、局側装置(CMTS)の収容回線数が従来の3分の1になってしまうこと。さらに高速化に伴い、バックボーンも“それなり”に高速化しなければならない。
「100Mbps超の回線がすべてのユーザーに必要とは限らない。ヘビーユーザーに対する“プレミアサービス”的な位置付けとなるだろう」。インフラに大きな変更をくわえることなく、サービスのバリエーションを拡大できるのが最大のメリットといえそうだ。
マスプロブースで行われたデモンストレーションでは、Smartbitsによる測定で98.7Mbps、FTPで90Mbps程度の伝送速度が出ていた。また、同社が中部ケーブルネットワークおよびシーテックと共同で実施している実験では、「Web上の計測サイトを使って60〜70Mbpsの実効速度が出ている」という。
サービススケジュールなどは確定していないが、同社では「実験は2004年1月までに終了し、来年度には一般モニターを使ったフィールド実験など実用化に向けた検証に移行する」と話していた。
FTPによるスループット検証
実験風景
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マスプロ電工
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[芹澤隆徳,ITmedia]