リビング+:ニュース 2003/07/25 17:33:00 更新

ケーブルテレビ 2003
“光への道筋”が見えたCATV

「ケーブルテレビ 2003」は、昨年までとひと味違う展示会になった。CATVがFTTxへ移行することが前提になり、さらにインターネットとTV放送を1本の光ファイバーで家庭に届ける「光波長多重」技術が主役の座を獲得した

 7月23日から3日間に渡って開催された「ケーブルテレビ 2003」。展示会場を見渡すと、すぐに昨年までとは“ひと味違う”ことに気づくはずだ。会場が池袋のサンシャインシティから東京ビックサイトに移されたこともトピックの1つだが、今年はベンダー各社がFTTxソリューションの展示に力を入れている。

photo

会場は東京ビックサイトになった

 昨年の「ケーブルテレビ 2002」でも、光関連の展示は存在感があった。しかし内容はHFC〜つまりCATVの幹線までを光化するものが中心(昨年の記事を参照)。これに対し、今年は完全にFTTxへの移行を前提として、さらにインターネットとTV放送を1本の光ファイバーで家庭に届ける「光波長多重」が主役になっている。もちろん、すぐにCATV局が採用するわけではないが、ベンダー各社の動きはサービスの方向性を決める大きな指標となる。

 「この一年間で、光波長多重関連の技術が飛躍的に進歩したことが背景にある」。展示会場の様変わりについて、日立ハイブリッドネットワークの生田昭ネットワークソリューションシステム事業部長はこう話した。さらに、「今後一年間で(FTTxの市場が)急激に立ち上がることが予想される」とも。

光多重プラスαも

 光波長多重技術は、1本の光ファイバーの中で、通信の上り・下りと放送にそれぞれ専用の波長を割り当てる。現在のFTTHは、一般的に通信の上り方向が1.13マイクロメートル、下りが1.55マイクロメートルの波長を利用しているが、その間に1.49マイクロメートルの波を設け、下りをここに移す。残った1.55マイクロメートルの波長を放送に使う仕組みだ。

 ユーザー宅には光フィルターを内蔵したONUが置かれ、ここから同軸ケーブルでTVに、イーサネットケーブルでルータやPCにつながる。放送は、従来の770MHz HFCと同様に70〜770MHzの周波数帯域を利用することが可能で、チャンネル数は従来と比較しても遜色ない。

 さらに、各ベンダーはもう一工夫をくわえて他社との差別化を図ろうとしている。例えば、フジクラが展示した「HG-E-PON」システム。HGは“ハイグレード”の略かと思われがちだが、実は「ハーフギガ、つまり500Mbpsの帯域を持つことを示している。これとハイグレードをかけた」(同社)。

photo

「HG-E-PON」システムを展示したフジクラブース

 この場合、アクセス回線は500Mbpsの帯域を最大32世帯に分岐することになる。アップリンク側は100Mbpsもしくはギガビットイーサをサポート。上位回線が100Mbpsの場合は500Mbpsの速度を活かせないようにも見えるが、地域ノードにキャッシュサーバを設置すれば、動画配信などを快適に行えるという。「(他社の場合)100Mbpsを32人で同時に利用したと仮定すると、数Mbpsのオーダー。だが、500Mbpsなら十数Mbpsになり、高品質動画を十分に伝送できる。上位回線が細くても、動画データは空いている時間にキャッシュすればいい」。

 なお、同社のE-PONシステムはKDDIが昨年実施したFTTHトライアルにも採用された実績がある。残念ながら、KDDIは自前でアクセス系ファイバーを敷設する方針を転換、NTT地域会社のダークファイバーを採用することになったため、現在は電力系通信会社やCATV事業者をターゲットに営業活動を進めている。

 古河電工も3波長多重の光伝送システムを出展した。こちらは地上波デジタル放送への対応にくわえ、業界初となる「光アンプ」をラインアップしている点が特徴だ。

photo

業界初の光アンプ

 「光ファイバーは、長距離を伝送しても減衰しにくいが、分岐によって減衰する。光アンプは、光信号の出力を上げて安定した通信や放送を提供する」(同社)。

photo

宅内端末はV-ONUとONU。V-ONUは映像を変換してSTBに提供するもの。通信の光信号はV-ONUをスルーしてONUに入る仕組みだ

課題はタイミング?

 光ファイバー一本で通信と放送を伝送できる波長多重技術は、CATV本来のビジネス領域をカバーし、かつ競争力を向上させる。しかし、すぐに各CATV事業者が採用するかといえば、難しい問題も残されている。

 前述の生田氏は、ケーブルテレビ 2003の分科会で「ケーブルテレビの発展シナリオ〜HFCからFTTHへ〜」と題した講演を行った。内容は、日本CATV技術協会の「ケーブルテレビ発展シナリオ検討WG」(ワーキンググループ)の活動報告。このWGは、総務省「ブロードバンド時代のケーブルテレビの在り方に関する検討会」の答申を受けて発足し、技術的な観点からCATVの方向性を検討してきた。

 同氏によると、国内には600超のCATV施設が存在するが、最新の770MHz HFCを採用しているのは全体の33%に過ぎず、残りほとんどは450MHz以下の旧式ネットワークだという(総務省の資料より)。幹線の途中までであっても、光化と広帯域化が実現されているHFCであれば、FTTHへの移行は比較的スムーズに進むはず。しかし中には“フル同軸”というケースもあり、一足飛びにFTTH化するのは難しい。

 もちろん、中には帯広シティケーブルのような例もあるのだが、「光伝送路の実現性は、(事業者の)経済性による」のが現実だ。たとえ広帯域のHFCを導入している事業者でも、その多くは最近になってDOCSIS 1.1や2.0といった新しい通信サービスを始めたばかり。これまでの投資を回収し、次の投資につなげるには時間が必要だ。「現時点で(移行の)判断ポイントを設定するのは困難」(生田氏)というのが客観的な事実だろう。

 ただ、はっきりしているのは、通信と放送が技術的に融合できる段階になり、今後は放送の分野でも通信事業者などと競合する立場に置かれること。生田氏は集まったCATV事業者たちを前に「5年後には通信事業者にくわえ、放送局やサービス事業者と放送・通信の両面で競争することになるだろう。ビジネス環境を踏まえ、(移行の)事業判断をするべきだ」と指摘した。

 いずれにしても、CATVがFTTxに移行するための技術と市場環境はそろった。今後数年のうちに、FTTx化を実現するCATV事業者が増えてくることが予想される。

関連記事
▼CATVのFTTH化〜帯広シティケーブルの例
▼CATVはどこまで“光化”する?
▼NTTが考える“次世代型”Bフレッツとは?
▼HFC[えっちえふしー]

[芹澤隆徳,ITmedia]



モバイルショップ

最新スペック搭載ゲームパソコン
高性能でゲームが快適なのは
ドスパラゲームパソコンガレリア!

最新CPU搭載パソコンはドスパラで!!
第3世代インテルCoreプロセッサー搭載PC ドスパラはスピード出荷でお届けします!!