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2003/11/14 17:32:00 更新 |
開発者インタビュー
「PSX」の足りないトコロ、足せるトコロ (2/2)
「PSX」の最新事情
さて、見せてもらった「PSX」は、CEATECの時と少しだけ違っていた。本体前面にあった「+RW」のロゴがなくなり、代わりに「G-GUIDE」と書いてあるのだ。つまり、発表資料では「未定」とされていたEPG(電子番組表)が、米GemstarのG-GUIDEに決まったということ。「発表時はGemstar側と交渉中だったため、ロゴを入れることができなかった」。
ほんのちょっとだけ変わったPSX(クリックで拡大)
G-GUIDEは、放送波で番組データを受信するタイプの電子番組表サービスで、更新は一日4回。イーサネットポートを搭載するPSXだけにiEPGという選択肢もあったはずだが、利用者の幅を狭めてしまうことを避けたという。
「PSXは“ポストビデオ”を目指し、幅広いユーザーに使ってもらう製品。インターネット接続環境のない人でも利用できるのがG-GUIDEのメリットだ」。
一方、ロゴがなくなったことでDVD+RWがサポートされなくなったのかといえば、そうではない。「恐らく出荷時には対応が間に合わない」との判断で削除されたが、同氏によると、後からソフトウェアアップデートにより、DVD+RWのVRモードをサポートするという。一方、+Rは「サポートの予定はない」。こちらはCEATEC JAPANのときと同様だ。
「DVD+RWの良いところは、VRモードで記録するとファイナライズしなくても高い再生互換性を確保できること。最近のDVDプレーヤーなら、ほとんど再生できる。もちろん検証は必要だが、順次Webサイトなどを通じて公表していくつもりだ」。ビデオテープのように追記可能な状態でも友達と貸し借りできるようにする、これが+RW対応の意味だ。
なお、アップデートの手段は基本的にダウンロードとなるが、「ブロードバンド環境を持たない人のため、別の方法も考えている」という。
PSXに足りないトコロ、足せるトコロ
7万9800円からと価格を抑え、デザインやゲーム機能も合わせて非常に魅力的な商品となったPSX。だが、専用のハイブリッドレコーダーと比べると、機能面で劣る部分が散見される。たとえば、CPRMへの非対応だ。
CPRMに対応していないと、デジタル放送で主流になってきたコピーワンスの番組をDVDに保存することができない(HDDに録画することは可能)。また、映像編集がGOP単位(15フレーム単位)でしかできないこと、DVDからHDDへの書き出しやチャプターダビング機能がないことなどが挙げられる。さらにハードウェア面を見ても、DV端子が装備されておらず、外部入力も1系統しかないといった点が他社と競合する上では不利に働きそうだ。
こうした点について松岡氏は、まず「製品開発のコンセプトにデジタル放送が含まれていなかった」と話している。
「PSXのチューナーは地上波とBSのアナログだけ。また外部入力端子を見ればわかるように、PSXはいわゆるAVマニア向けではなく、一般ユーザーを広く対象としたものだ。一般ユーザーが“そこまで求めるか?”という機能はそぎ落としている」。
高機能なAV機器を求める層が不満に感じる部分は多々あるが、一方でテレビとビデオを1台ずつしか持っていないような人も多い。そうしたユーザー層もビデオの代わりにハイブリッドレコーダーを求める時代になり、今年の年末以降、市場は一気に拡大すると見られている。このタイミングを狙って投入されるのがPSXというわけだ。
そぎ落としたのはコスト削減という点が大きいだろうが、逆にユーザビリティのために“そぎ落とした”部分もある。たとえば編集機能。PSXの動画編集画面は、サムネイル表示のフィルムロールを横に展開し、IN点とOUT点を指定するだけの簡単なものだ。
「これがフレーム単位の編集になると、単純計算で横の長さが15倍になってしまう。シーンを入れ替えるなど高度な編集機能を持つソフトウェアも作ってはみたものの、操作が煩雑になるためにあえて切った」。
CEATECでデモしていた編集機能
実際には、「今のDVDレコーダーが実現している機能は、ほとんど実装可能だ」という同氏。しかし、高機能になると操作の複雑さが増すのは道理で、少なくともPSXに関しては、多機能さよりもGUIの操作性を重視した。
一方で松岡氏は、ソフトウェアアップデートにより各種の機能が追加される可能性も示唆した。メインは音楽配信など将来のブロードバンドサービスだろうが、映像編集機能をはじめ、音楽再生時のプレイリスト編集やCDDB対応などに対する要望も多いという。
「PSXのユーザー層が“やりたいこと”が普通になったとき、それは提供することになるだろう。逆に、何が足りないのか、何が必要なのかという声を聞きたい」。
発売日が確定しない理由
PSXの購入を考えている人たちにとって、最も気になるのは発売日だろう。「2003年の年末」とされているだけで、明確な期日が発表されていないからだ。その事情を、松岡氏はこう説明した。
「今、一番恐れていることは、店頭から商品がなくなってしまうことだ。営業担当者が各販売店を回って要望を集めており、生産計画の数字と照らし合わせながら発売日を検討している」。
必要な数をなるべく正確に把握し、品不足を避ける。たとえば一日1000台生産できるしても、需要が予想を1万台オーバーしていたら発売日を10日間ずらすことになるという。しかし、「販売店も初めての商品ということもあり、悩む部分が多いようだ」。
いずれにしても、「生産は順調」であり、年内発売のスケジュールに変更はないという。ボーナスの使い道を考えている人たちのためにも、なるべく早く確定させてほしい。
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[芹澤隆徳,ITmedia]