半導体やエレクトロニクス分野における老舗の世界的な技術商社であるAvnet(アヴネット)。米国アリゾナ州に本社を置く同社は、2021年に設立100年を迎えた。電子部品、特に半導体分野に強いグローバルディストリビューターとして市場をけん引し続けている。
このほどAvnetは大手半導体メーカーのルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)と提携し、日本国内における同社製品の取り扱いを開始した。コロナ禍に前後する形で半導体不足が話題になったが、部品の供給面における不安を解消しつつ、どのように必要なサポートを提供するのか。両社の提携が日本のメーカーにどのような意味をもたらすのか。両社の幹部に聞いた。
ルネサスは日本にルーツを持つ半導体メーカーで、電子機器に搭載するマイコンを主力としている。国内外の自動車メーカーの車載マイコンで特に高いシェアを持つことで知られる。
ルネサスの長谷川夕也氏(グローバル リージョナル & JAPACセールス バイスプレジデント)は、近年のルネサスについて、以下のように説明する。
「グローバル化が進む中、ルネサスは半導体企業や関連するソフトウェア企業の買収を進め、国内外で事業拡大を図っています。しかし収益の25〜30%は現在も日本からのものであり、日本市場は自動車や産業の分野を中心に非常に重要な地域であることは変わりません。
一連の取り組みを通して、当社は『半導体のデパート』のような存在になりました。特徴のあるさまざまな製品を国内外の市場で販売できることが当社の強みと言えます」
日本にルーツを持ちながら国内外に幅広い販売チャネルを持っているルネサス。国外市場においては、以前からAvnetもディストリビューターの一社として協業関係にあった。しかし、日本国内はその対象外であった。
今回の提携で、日本を含む全ての市場がAvnetの取り扱い対象となり、国内で稼働するメーカーや生産拠点に技術支援を含むノウハウや部品の提供が可能になった。日本をベースに海外への製造展開を考える国内顧客にとってもメリットが大きいニュースと言える。
AvnetのPrince Yun氏(アジア太平洋 & ジャパン プレジデント)は、日本での業容拡大による国内企業のメリットを次のように話す。
「Avnetは、グローバルディストリビューターとして半導体や受動部品コネクターなど、多くのサービスを提供しています。当社のグループ企業の一つに、Eコマース事業を担うPremier Farnell(プレミア ファーネル)があります。近々、日本語対応版サービスの提供を開始する予定です。
Avnetの日本法人は600人近い従業員を抱えています。特徴的なのは、国内に多くのエンジニアを抱え、100人以上のフィールドアプリケーションエンジニア(FAE)がいる点です。マーケティングセールスや日本での事業をサポートする技術エンジニアリングのサービスも提供しています」
Avnetは国内外に流通網を持つ外資系企業というだけではない。日本法人の設立経緯とさまざまな企業を買収してきた歴史から、多様なノウハウを擁している。
Avnetが日本で活動を開始したのは、前身となる大倉エレクトロニクスを設立した1983年にさかのぼる。その後、何度かの買収や統合を進め、2015年に現社名のアヴネットに変更した。
現在のアヴネットは、FPGA(Field Programmable Gate Array)大手の総代理店や関連する技術支援などの実績で名高かった大倉エレクトロニクスのノウハウをベースに、開発サイクルに必要な部品提供から技術サポート、品質管理まで一気通貫で提供している。
長谷川氏は、Avnetが持つ独自のノウハウと歴史を踏まえた上で、「日本発のグローバル企業が次々と誕生する今、この協業は非常に大きな意味を持つ」と力を込める。
「近年、当社の取引先も国外に調達拠点や製造拠点を持つ企業が増え、グローバルなディストリビューターとの連携が欠かせなくなりました。取引先の拠点ごとに各ディストリビューターに協力を求めるのではなく、さまざまな文化的背景を併せ持っているAvnetから一気通貫で積極的な提案を受けることで、事業を力強く推進できると期待しています。
ルネサスは『To Make Our Lives Easier』(人々の生活を楽にする)ことを会社のPurposeとして掲げ、その実現のために最先端かつ必要となる半導体の提供を続けています。これからも日本の企業として、日本のお客さまの『世界で勝ち残れる製品づくり』に貢献できるよう、ビジネスを成長させていきます」
長谷川氏の説明を受けて、Yun氏がシンプルな表現で述べたのが「設計はここ(日本)で、生産はどこでも(Design local, build anywhere)」だ。
「多くの日本企業が、生産拠点をタイやベトナム、インド、中国に移転しました。この動きは今後さらに拡大するでしょう。逆に海外で設計され、生産は日本で、というケースも考えられます。その両方に対応できるのがAvnetのグローバルならではの強みです。Avnetが抱える多くのスタッフが専門チームを組み、お客さまのビジネスを支援します」
技術面で豊富な知識を持つディストリビューターは国内にも多く存在する。だが、日本企業が海外進出する際に必要なのは現地での調達方法といったサプライチェーンに関するグローバルな知見ではないか。その点、Avnetはグローバルディストリビューターとして設計から調達、製造まで一気通貫でサポートできる。長谷川氏は「そこに大きな意味があり、お客さまが設計からAvnetと共に動くメリットでもあります」と強調する。
Yun氏が「Avnetのさらにユニークな点」として挙げるのが、Eコマースの活用だ。
「ユーザーにとってのEコマースの利点は、さまざまな部品を少数から購入できる点です。例えば、小規模な企業がスマートフォンの試作品を作るとします。スマートフォンは500種類以上の部品で構成されています。試作品を作成するために500種類以上の部品を少しずつ集めるのは非常に困難です。そのために私たちはEコマースを用意しています。量産フェーズで大量に部品が必要になっても、引き続き当社がサポートできます。
スタッフによる支援の他、技術フォーラムの開催など情報を提供する場も設けています。このように細やかなサポートができる点もAvnetの特徴と言えます。当社はこれからも、日本のお客さまが『Design local, build anywhere』を実現し、世界市場で競争力を持ち続けるために最善を尽くします」
Avnetが日本国内で主なターゲットとしているのはどのような業界なのか。ルネサスが主要顧客としている自動車産業はその代表格だが、Yun氏は「オートメーションを実現する産業用ロボットやハイエンドなコンシューマー製品は特に世界的にも強く、主力顧客になり得る」と話す。
世界情勢や人々のニーズなど、市場は常に変化している。先行きが不透明なVUCA時代といわれる今、企業が活躍の場を広げてビジネスに勝ち続けるためには強力なパートナーの存在が重要だ。
ルネサスとの協業によって製品ラインアップがさらに広がったAvnetは、日本企業にとって心強いパートナーとなり得るだろう。
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提供:アヴネット株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2024年10月22日