
企業と顧客のコミュニケーションチャネルが多様化する中、電話は依然として重要な接点であり続けている。特にコールセンターは企業のイメージを左右する重要な役割を担うが、オペレーターの人材不足や対応品質のばらつきなどさまざまな課題を抱えている。
コールセンターの業務は2つに大きく分かれる。顧客からの問い合わせに対応する業務と、企業から顧客に連絡を取る業務だ。KDDIの原真吾氏(経営戦略本部 データマネジメント部 メッセージングG グループリーダー)は「それぞれの業務において、企業が解決すべき課題が山積している」と話す。
顧客からの電話対応における主な課題は、情報伝達の品質にばらつきが生じる点だ。オペレーターの知識や表現力によって、同じ内容でも伝わり方に差が出てしまう。「お客さまからお電話をいただくケースは、緊急性が高く自己解決が難しい内容がほとんどです。だからこそ、長時間お待たせしたり的確な回答ができなかったりすると、お客さまの満足度は著しく低下してしまいます」と原氏は指摘する。
一方、企業から顧客への電話連絡は、スムーズな接触ができないことが課題だ。「オペレーターからお客さまにお電話を差し上げる業務は、申込書類の不備など早急な対応を依頼するものから、新商品の案内やアフターフォローまでさまざまなケースがあります。ただ、予期せぬタイミングでの連絡となるため、なかなかお電話が通じない、あるいは営業時間内に折り返しのお電話をいただけないといった状況が多く発生します」
企業はこうした課題への対応策としてチャットbotやFAQの導入を進めている。これらのデジタルツールを活用して顧客の自己解決を促し、電話対応の負荷軽減を図る取り組みだ。しかし、これだけでは課題の解決に限界があるという。
「お客さまが製品やサービスについて疑問をお持ちになった際、『電話で確認しよう』と考えられる方は依然多く、チャットbotやFAQをご利用いただく方は限定的です。また、導入・運用コストや整備、利用促進など、さまざまな工程を考慮すると、大手企業や利用者数の多いサービス以外では、投資対効果の面で課題が残ります」
加えて、チャットbotは企業から顧客への能動的なアプローチができないという制約もある。メールでの連絡も選択肢として考えられるが、他の情報に埋もれて見落とされやすく反応率も低い。そもそもコールセンターが顧客のメールアドレスを保有していないケースも多い。
「コールセンターはその名の通り、電話によるコミュニケーションを主軸に置いています。そのため、電話と親和性の高いコミュニケーション手段を組み合わせることが、現実的な課題解決の糸口になるはずです」
そこで原氏が提案するのが、携帯電話番号宛てのSMS(ショートメッセージサービス)活用だ。
受信者のスマートフォンにポップアップ通知が表示されるため、メールと違って埋もれにくい。到達率は96%、開封率は80%(KDDI調べ)と高く、電話連絡やダイレクトメール(DM)と比べてコストを抑えられる点も特長だ。
KDDIは、グループ企業のSupershipと共同でSMS送信サービス「KDDI Message Cast」を提供している。全てのキャリアユーザーに1通当たり660文字の長文配信が可能で、導入形態は3つ。専用の管理画面から配信内容を設定できる「入稿ポータル」、既存の社内システムと連携して利用できる「API連携」、そしてSalesforce Platform上から利用できる「KDDI Message Cast for Salesforce」だ。
CRMとの連携により電話やメール、SMSなどのコミュニケーション履歴を一元管理できる。「API連携」と「KDDI Message Cast for Salesforce」は、顧客からの返信も可能な「双方向SMS」機能を実装している。こうした特長から、金融やインフラ、自動車、医療、自治体など、さまざまな業界で導入が進んでいる。
その効果を示す具体例として原氏は、中古車販売業H社の事例を挙げる。
「H社には、オペレーターの負担軽減やお客さま満足度の向上を目的にKDDI Message Cast for Salesforceを導入していただきました。それまで同社は、お電話がつながらなかった中古車査定の依頼者に対してオペレーターが個別にメッセージを作成してSMSで送信する運用をしていました。しかし、配信管理ができない上にオペレーターごとに対応が異なったりお客さまからの返信を見落としたりするなど、さまざまな課題を抱えていました」
KDDI Message Castの導入後は、顧客リストが登録されたSalesforce Platformから定型文を一括配信できるようになり、オペレーターの工数を大幅に削減できた。また、事前にSMSで要件を伝えておくことで通電率が5%向上。さらに、対応履歴を一元管理することで対応漏れのリスクが軽減され、1日あたりの問い合わせ件数は20〜25件から5件へと大幅に減少した。
「この成果を受けて、H社は活用範囲を拡大されました」と原氏は述べる。「当初の査定依頼者への連絡に加えて買い取り費用確定時の振込案内など、月間数千件規模の一括配信やカスタマーサポートの個別連絡にも展開していただいています。今後は、お電話がつながらないお客さまへの自動SMS配信の仕組み作りも検討されているそうです」
こうした企業のニーズに応える新たな機能としてKDDI Message Castでは、米SalesforceのAIエージェント「Agentforce」との連携を推進している。これによりコールセンターは、顧客からの問い合わせ対応だけでなく企業からの架電業務でも大きな価値を提供できるようになる。
従来の架電業務は、多くのオペレーターがリストに沿って順番に電話をかける形式が主流だった。しかし不在率が高く、画一的な会話内容になりがちで顧客体験を損なうリスクがあった。こうした課題を解決する手段が、AI×SMSによるアプローチだ。
Agentforceを活用することで、顧客情報を基に個別に最適化されたメッセージを自動生成し、SMSで一斉送信できる。これにより顧客ごとのニーズに合わせた情報提供が可能となり、電話連絡が必要な顧客を事前に絞り込める。必要な場合のみ架電することで、高い接続率と顧客満足度の向上を実現できる。
架電履歴を基にAIが次に提案すべき商品やサービスをサジェストし、SMSで自動配信する仕組みも構築可能だ。この仕組みによって、アップセルやクロスセルの成約率向上も期待できる。
「これは活用例の一つに過ぎません。企業の『やってみたい』というニーズに合わせて、AIがさまざまな形でサポートできるはずです。AIとSMSの組み合わせで、お客さまとのコミュニケーション効率と質のさらなる向上を目指せます。コールセンターはコストセンターからプロフィットセンターへと進化できるはずです」と原氏は語る。
コールセンターが抱える課題は多岐にわたり、その解決には包括的なアプローチが求められる。原氏は、通信事業者としてのKDDIの強みを生かしたサポート体制について次のように語る。
「当社は通信事業者として、電話とデジタルの両方に精通しています。SMSや生成AI、さらにはパートナー企業のソリューションを組み合わせることで、コールセンターの新たな価値創造を支援していきます。音声自動応答システム(IVR)とも連携が可能なKDDI Message Castを軸に、コールセンターの運用最適化から顧客体験の向上まで、包括的なサポートを提供してまいります。架電業務の効率化や省力化、オペレーターの生産性向上にお悩みの企業はぜひ一度ご相談ください」
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2025年2月1日