自社商材がB2B領域のものである場合、どのように宣伝・マーケ活動を行うべきだろうか。一見すると効果の見えにくい「記事広告(タイアップ記事広告)」は必要なのか、B2B領域専門の広告プランナーに見解を尋ねた。
宣伝やマーケティング担当者の抱えるミッションは「広告を出稿して効果を得る」ことで、その手段は多岐にわたる。自社商材がB2B領域のものならターゲットが明確に存在しているため、「広告を誰に見せて」「どのような結果を得るか」は慎重に検討する必要がある。
広告の出稿先は長らくマスメディア、つまり新聞、雑誌、TV、ラジオが主流だった。ここに「インターネットメディア」を加えた5メディアが対象にアプローチするための「媒体」候補となる。この媒体を選定した上で、画像や映像、テキスト、音声などの中からメッセージを発信するための「手段」を検討しなくてはならない。
「媒体×手段」の組み合わせ方は多種多様なので、自社のビジネスや製品、サービスに適した媒体×手段を探すのは骨が折れる作業だ。ターゲットの購買意思や予算状況などは常に変化しているので、1つの媒体×手段を継続利用すれば良いというものでもない。
では、B2B領域の自社商材を効果的に訴求するためにはどのような方針で媒体×手段を検討していくのが正解だろうか。ITや製造、ビジネスといったB2B領域で多くのWebメディアを運営するアイティメディアで、広告の商品企画ならびにプランナーとして活躍する渡邊 宏氏に話を聞いた。
――早速ですが、B2Bの自社商材を訴求するために広告を出稿する場合、どのような方針で媒体×手段を検討していくのが良いのでしょうか
渡邊氏 媒体や手段の話をする前に、一つ注意点があります。B2B領域の商材は、「一般的な広告」とは考え方が変わるということです。日常生活で目にする広告の多くは「一般消費者」に向けた広告です。
身の回りには食品や自動車、旅行、衣料品などさまざまな商品を紹介する広告があふれています。その多くは「個人として購入や消費を検討するもの」を紹介する広告です。「企業の担当者として購入を検討するもの」はあまり目に付かないと思います。それはなぜでしょうか。
それは商材によって対象と訴求方法を変える必要があるからです。個人として購入を検討するものと企業の担当者として購入を検討するものでは、購入時の判断基準が変わります。判断基準が違えば検討のための情報を取得するルートも異なるので、宣伝やマーケティングの担当者は媒体や手段を考える前に「その商品を誰が買うのか」を再確認する必要があります。
――「誰が買うのか」という問いは、B2B領域の商品であれば「企業の購買担当者」「導入の決裁権者」が答えになりますね。ここが思考の出発点で、そこから施策を考えるということですね。
渡邊氏 その通りです。ここでは自分がIT企業のマーケティング担当者で、新たに開発した「法人向けセキュリティ製品」を買ってもらいたいと仮定しましょう。
「誰」は企業の購買担当者、「売りたいもの」は法人向けセキュリティ製品ですね。企業で情報セキュリティ製品の選定や購買を担当する人に、その製品が持つ特徴や導入するメリットを伝えなくてはなりません。
さらに、新開発した製品ということは市場の認知を得られておらず、認知の獲得から始めなくてはならないという課題が確認できます。ここまで考えを深めてようやく、具体的な訴求方法の検討に入れます。
「4マス広告」と呼ばれる新聞、雑誌、テレビ、ラジオの広告は情報を広く波及させる効果がありますが、今回は対象を絞っているので適さないと考えられます。インターネット広告の一つである「アドネットワーク」などを使って「バナー広告」を大量に露出する方法も、対象に届く可能性は低いでしょう。検索サービスと連動する「キーワード広告」は、対象が能動的に情報収集をしているときに効果を発揮するので、これから認知を得なくてはならないケースでは不向きとなります。
つまり「企業の購買担当者」に「新開発」の「法人向けセキュリティ製品がもたらすメリット」を効果的に訴求するための媒体×手段とは、対象者を多く含むメディアで、詳細な情報を伝えられる手段ということになります。
――購買や商談を目的にマーケティングや宣伝活動をするに当たり、見せたい人が多く存在する媒体に、対象が求めている情報を広告として出す、というのは言われてみれば当たり前のことですね。
渡邊氏 ここで見逃せないポイントは、インターネットの普及によって「対象が可視化できる」ことです。旧来からあるマスメディアの広告は「誰が見ているのか」を詳細に知ることは難しいですが、インターネットは個人単位で情報を届けるので「誰が見ているのか」がある程度分かります。広告を出す側としては「誰に見せるのか」を指定できることになります。
前述した法人向けセキュリティ製品の例では、見せたい対象がハッキリしているので、“誰”が明確に分かるメディアを選び、製品を理解してもらうためには情報量の多い手段を使うのが賢い選択です。そうなると、優先度が高い媒体×手段は「専門Webメディア×タイアップ記事」だといえます。
――対象の含有率という意味では、専門紙や専門雑誌などの紙媒体も選択肢になると思います。Webメディアの優先度が高いと考える理由は何でしょうか
渡邊氏 専門紙や専門雑誌はWebメディアに比べて長い歴史を持つことが多く、有償であっても専門性の高い情報を求める読者がいることが大きな価値です。しかし、ITなど特定の領域は紙媒体がほぼ存在しないこともありますし、インターネット広告に比べて反響や効果が分かりにくいという理由もあります。
最大の理由は、B2B領域の購買プロセスにおける情報収集がWebメディアからスタートしているからです。アイティメディアが実施した調査「IT製品購買プロセス調査」(2023年12月)で、情報収集段階でまず接触するのは「ビジネス/ITのメディアサイト」となっています。
渡邊氏 B2B領域の購買担当者が最初期に接触するのがWebメディアということは、そこを通じて自社商材の情報を届ければ検討テーブルに乗る可能性が高くなります。商材の特徴を理解してもらうために情報量の多いタイアップ記事を選定するという考え方です。
――タイアップ記事以外の手段では「理解してもらう」ことは難しいのでしょうか。
渡邊氏 「どこまでの理解を得てほしいのか」がポイントです。短い映像や音声、キャッチコピー、バナー画像などの広告手段で認知を得ることはできても、「理解してもらう」までには至らないでしょう。
Webメディアのタイアップ記事は一般記事と同様の体裁なので、テキストと図版で説明できます。情報量が多く、理解を促進しやすいという特長を持つので「認知を得るだけではなく、深く理解してほしい場合」に適した広告手段といえるのです。
――タイアップ記事で対象にアプローチする仕組みを詳しく教えてください
渡邊氏 アイティメディアのタイアップ記事を例にご説明します。
アイティメディアは多数のメディアを運営していて、IT専門媒体の「@IT」や製造業向けメディア「MONOist」、ビジネスパーソン向けの「ITmedia ビジネスオンライン」など各メディアに専門性の高い情報を求める読者が集まります。タイアップ記事の企画・制作に各編集部が参加し、誌面に掲載する一般記事と同様の体裁で制作します。
誰に情報を発信するのかを明確にしたメディア運営をしているので、タイアップ記事を届けられる相手は明確になっています。タイアップ記事のボリュームは標準仕様で約3000〜4000文字と十分な量なので「意図した対象に理解してもらう」ことが可能です。
渡邊氏 タイアップ記事の閲覧数(PV:ページビュー)を保証するメニューを用意しているので、「記事が読まれない」といった事態を回避できます。記事を読んだ人の中には、将来の顧客になる潜在層も含まれているでしょう。
アイティメディアのタイアップ記事には「タイアップ プッシュ」というユニークな存在もあります。Webメディアのタイアップ記事は、各メディアのWebサイトに掲載してからバナーなどで読者に閲覧を促す方法が一般的です。タイアップ プッシュは、取材・制作したタイアップ記事をWebサイトに掲載すると同時にHTMLメールで読者に配信します。
アイティメディアは自社メディアの読者を「アイティメディアID」として会員化していて、企業名や業種、職種、勤務地域などを登録してもらっています。タイアップ プッシュは、これらデータを用いることで「A社にお勤めの方だけにタイアップ記事を配信する」「情報システム部門として登録している方だけに配信する」といったように対象を絞り込んでアプローチできます。
――「誰に見せるか」の部分はよく分かりました。「どのような結果を得るか」を考える上で施策のデータは不可欠です。アイティメディアのタイアップ記事の掲載レポートには、どのようなデータが含まれているのでしょうか
渡邊氏 タイアップ記事の掲載後、PV数、UB(ユニークブラウザ)数、平均滞在時間、外部サイトへのリンククリック数といった数値をレポート化しています。さらに、閲覧者のIPアドレスを基に判別した業種、年商規模、従業員規模、都道府県、閲覧企業名といった情報もご提供します。
タイアップ プッシュで企業名や会員情報に応じて記事を配信した場合には、メールを開封した会員の業種、職種、役職、年商規模といった情報をレポートとしてご提供します。
「1万PVが得られました」という結果だけではなく、「どのような人が読んだのか」「どれくらいの時間をかけて読んだのか」「読んだ後にどのような行動をしたのか」などの情報をご提供しますので、マーケティング/宣伝施策として有効だったのか、次回の施策にどう生かすべきかといったインサイトを得られます。
渡邊氏 「広告を出して効果を得る」ことに絶対の正解となる手段はなく、担当の方の苦悩は尽きないと思います。「企業の購買担当者を対象に、B2B領域の商品について認知の獲得と理解を促進したい」といった場合に、アイティメディアのタイアップ記事をご検討頂ければ幸いです。
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