日本のたばこ市場は大きな転換点を迎えている。近年、紙巻たばこからスモークレス製品への移行が急速に進んでおり、世界でも有数の加熱式たばこ先進国へと変化した。この変化の激しい市場は、グローバル企業にとっても極めて重要な戦略拠点と位置付けられている。こうした中で、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(以下、BAT)は、世界に先駆けて日本で大きな成果を挙げてきた。
BATは、たばこによる害を低減する「たばこハームリダクション」という考え方に基づき、紙巻たばこを喫煙し続けることを選択する喫煙者のスモークレス製品への移行を推進している。グループ全体で「2035年までにスモークレス製品の収益比率を50%にする」という目標を掲げる中、BATの日本法人であるBATジャパンは、既に収益の50%以上を加熱式たばこなどのスモークレス製品が占めている。
しかし、BAT最高経営責任者(Chief Executive)のタデウ・マロッコ氏が「日本の加熱式たばこ市場は大きく成長している一方で、競争は非常に熾烈(しれつ)」と語ったように、この巨大市場での戦いは決して楽ではない。これまでBATジャパンは、手に取りやすい価格帯の製品で日本のたばこ市場をリードしてきたが、今後の成長の鍵を握る「プレミアムセグメント」に対応する製品ラインアップには遅れをとっていた。
この戦略的課題にどう向き合い、日本市場でのさらなる成長をどう描くのか――。2025年6月23日、マロッコ氏は日本のメディアの前に初めて登場し、BATジャパン社長のエマ・ディーン氏と共にスモークレス事業を主軸とする戦略について語った。
BATが重視するたばこハームリダクションとは、紙巻たばこの喫煙による健康へのリスクを低減することを目的とした考え方だ。BATはこの考え方に基づき、紙巻たばこを選択する消費者にリスク低減の可能性を秘めたスモークレス製品への移行を促し、スモークレスな世界を築くことで「A Better Tomorrow」(より良い明日)の創造を目指している。
ロンドンに本社を置き、世界各地に4万8000人以上の従業員を有する世界有数の消費財企業が、自らの事業ポートフォリオを大きく変革しようとしている。そのかじ取りを2023年から担うのがマロッコ氏だ。1992年にブラジルのBATグループに入社して、財務部門の要職を歴任。その後、グループのトランスフォーメーション・ディレクターや最高財務責任者などを経て最高経営責任者に就任した。
「私たちは、燃焼式製品が深刻な健康リスクをもたらすことを知っています。そして、これらのリスクを避ける唯一の方法は、喫煙を始めないこと、またはやめることです。それでも紙巻たばこの喫煙を引き続き選択する方には、リスク低減の可能性を秘めたスモークレスな代替製品への移行を促す選択肢を提供しています」
マロッコ氏は、2018年から2024年の間に世界における加熱式たばこなどの新カテゴリー製品の消費者が2倍以上に増加したが、紙巻たばこの消費者はまだ10億人以上存在していると指摘。この人々がニコチンの摂取を続けることを選択するのであれば、スモークレス製品に切り替えてもらうことで「公衆衛生上の大きなプラスとなる可能性がある」と述べた。
その上で、スモークレス製品のイノベーションに年間3億ポンド(日本円で約600億円)以上を投資していることを明かし、スモークレス製品における戦略を次のように説明した。
「私たちは、イノベーションと消費者に関するインサイトや予測、サイエンス、顧客エンゲージメントをシームレスに統合し、イノベーションエコシステムとして全面的に再構築しています。過去18カ月で、知的財産や製品のライフサイクル管理、技術的な専門性、データの整合性、サイエンスにおいて大きく改善しました。3拠点のイノベーションセンターを設置し、50を超える外部の戦略的開発パートナーやベンチャーキャピタル、スタートアップ、学術機関といったオープンイノベーションパートナーとの連携を通じて、画期的な技術革新を生み出す独自の力を備えていると自負しています。
スモークレス製品は次の3点を戦略的フォーカスに掲げています。1点目は継続的なイノベーションと強固な製品パイプラインによってブランドのファンを増やすこと。2点目は手に取りやすい価格のセグメントでリーダーシップを維持すること。3点目はプレミアムセグメントに参入すること。プレミアムセグメントに関しては、さらなる成長に向けて大きな可能性があると考えています」
プレミアムセグメントに参入するに当たって、重要な市場となっているのが日本だ。その背景には、日本市場が示してきた具体的な実績がある。BATグループがグローバルで「2035年までにスモークレス製品の収益比率を50%にする」という高い目標を掲げる中、BATジャパンは既にその数値を上回る成果を達成している。マロッコ氏は、日本を加熱式たばこの重要な市場だと位置付け、その成長に向けたリソースの投入や投資を引き続き優先していく考えを示した。
BATが日本市場を重視するのには理由がある。マロッコ氏は、日本の消費者は新しいテクノロジーや高品質な製品に対する感度が他国に比べて高いと分析する。その要求水準は常にイノベーションの試金石となってきた。BAT初の加熱式たばこデバイス、グロー(glo)を他国に先駆けて2016年に発売した地が仙台市であったこともその象徴だ。つまり、日本で成功を収めることが、グローバルでの成功への最短ルートだと考えているのだ。マロッコ氏は、日本の市場に対する期待と覚悟を次のように語った。
「日本市場は、加熱式たばこに関してのリーダーです。非常に洗練された市場で、製品に対しても高いクオリティが要求されます。そういった市場で戦うためには、われわれもアップグレードしなければなりません。日本市場で競合優位性を持つために、製品だけでなく人材もリソースもベストなものを充てて、私たちが持っている力にレバレッジを利かせていきたいと考えています」
このプレミアムセグメントへの挑戦を具体化する象徴的な一手が、新製品グロー・ヒーロ(glo Hilo)の投入だ。仙台市限定で2025年6月9日から販売している。9月1日からはグロー・ヒーロ・プラス(glo Hilo Plus)もラインアップに加わり、全国展開を予定している。マロッコ氏は「日本を先導役として、スモークレスな世界の実現に向けた歩みをさらに加速させていきます」と語った。
BATがプレミアムセグメントに踏み込むのは、ビジネス拡大のためだけではない。その根底にはスモークレスな世界を築くというBATのビジョンがある。
これまで同社が強みとしてきた手に取りやすい価格の製品に加えて、高付加価値な製品を展開することは、より多様なニーズに応えてより多くの人々をスモークレスな未来へと導くための重要なステップとなる。
加熱式たばこが市場に登場して久しいが、その勢いはとどまるところを知らない。依然として紙巻たばこを選択する消費者がいる中で、スモークレス製品への移行には大きなポテンシャルが眠っていると見られている。こうした市場環境について、BATジャパンのディーン氏は「まだまだ余白がある」と確信をのぞかせた。
「日本市場における加熱式たばこのシェアは、今後50%以上になっていくでしょう。これは非常に高いパーセンテージではあるものの、紙巻たばこを使っている消費者もいるため、まだまだ余白があります。これまで届かなかった層にも納得していただける体験価値を、妥協することなく伝えていきます」
BATジャパンは、手頃な価格の加熱式たばこ市場で高いシェアを誇っている。マロッコ氏は、日本では手頃な価格と、プレミアムの両方のセグメントで成功を目指すと表明した。日本でのこれまでの成功と課題を冷静に分析し、今回の戦略の核心について次のように語った。
「われわれは2016年にグローを市場に投入して以来、手に取りやすい価格帯の製品群で多くのお客さまの支持を頂いています。その一方で、プレミアムセグメントにおいてはこれまで決定的な一手を出せていませんでした。
そこで投入するのが、先行販売している新製品です。手頃な製品と高付加価値の製品が違う役割を果たすことで、共に成功できる可能性が日本にはあります。今回の発表をスタートに、成長をさらに加速できると考えています」
BATが投じた「プレミアム」という一手は、単なる市場戦略にとどまらない。それは、あらゆる喫煙者にスモークレス製品への移行という選択肢を提示するための、より高い次元での意志表明だ。「A Better Tomorrow」の実現に向けたBATの挑戦は、ここ日本を舞台に、まさに新たな段階に入ったと言えそうだ。
※本製品は20歳以上の方のみ購入できます。20歳未満の者の喫煙は法律で禁じられています。
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提供:ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン合同会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2025年9月1日