生成AIで進化するコンタクトセンター 有識者が語る最新ソリューションとはコンタクトセンター マッシュアップ ボックス 2025

PR/ITmedia
» 2025年09月09日 10時00分 公開
PR

 生成AIの登場以降、業務への適用を目指して試行錯誤する企業は増加の一途をたどっている。特に生成AIとの親和性が高いといわれる領域が、コンタクトセンターだ。本記事は、コムデザイン主催、都築電気協力のイベント「コンタクトセンター マッシュアップ ボックス 2025」のセミナー「パイオニア・ブリーフィング」の様子を紹介する。生成AIによって進化するコンタクトセンターの姿を感じてほしい。

CTI×CRM×AIが描くコンタクトセンターの未来

 オープニングには、コムデザインの寺尾憲二氏が登壇した。コンタクトセンター向けの電話応答システムを提供してきた同社は、2008年にクラウド型CTI「CT-e1/SaaS」を発表。2025年6月時点で、1825テナント、3万2000シートで利用されている。

photo コムデザイン 寺尾憲二氏(代表取締役社長)

 寺尾氏は、CT-e1/SaaSの直近のアップデートでUX(ユーザーエクスペリエンス)の改善やデータセンターを強化したこと、Salesforceの「Service Cloud Voice」に対応した「CT-e1/SaaS for Service Cloud Voice」の提供を紹介。このような動きを通して、今後は「世界最高のテレフォニープラットフォーム」を目指すと宣言した。

 「コンタクトセンター業界は今、コスト再配分やクラウドシフトといった流れが加速しています。そのトリガーがAIです。CTI、CRM、AIというニーズを満たすCTIとして『リッチなCIT機能』『多様なAIとのマッシュアップ(組み合わせ)』『手ごろな価格設定』を大きなテーマに、協業パートナーと密に連携してサービスの強化を図ります」

カインズが現場に落とし込んだ生成AI活用法

 セッションの一つにギブリー、カインズ、コムデザインによる共同プロジェクトの発表があった。マーケティングAIエージェント構築プラットフォーム「DECA」を提供するギブリーの吉田将輝氏、カインズの中村康人氏、コムデザインの寺尾望氏が登壇した。

photo (左から)ギブリー 吉田将輝氏(執行役員 CMO 兼 マーケティングDX部門 COO)、カインズ 中村康人氏(コーポレート本部 カスタマーサービス部 部長)、コムデザイン 寺尾望氏(執行役員 セールス&マーケティング グループ責任者)

 中村氏は、生成AI活用の必要性を早期に認識して社内プロジェクトを主導してきた。労働力確保の難しさや事業規模の拡大といった課題から、活用が必須だったと振り返る。特に、LLM(大規模言語モデル)をオペレーター全員が使いこなすには、AIを意識させないUI(ユーザーインタフェース)が必要であると判断してシステムを構築した。

 プロジェクトではアフターコールワークの効率化に焦点を当てて、音声要約とオペレーターの後処理支援をターゲットに定めた。CT-e1/SaaSで受電した内容をテキスト化し、そのデータをDECAと連携。AIエージェントが、内容の要約から通話の品質評価、CRMへの起票までを担う。さらに、通話履歴からナレッジを生成できる仕組みを実装する。その特徴は、通話をリアルタイムでテキスト化し、2種類の要約を生成する点だ。

 「当初は構造化された要約のみを表示していましたが、要約され過ぎてしまって問い合わせの本質を理解できないという課題がありました。そこで、お客さまの言葉をそのまま抽出する要約も出力できるようにしました」

 AIによるオペレーターの定量評価も実現した。管理者によるモニタリング評価で使用していたチェックシートの評価項目から、テキスト情報だけで評価できる7項目を設定し、応対終了後1分以内にAIが採点する。これらの取り組みによって応対履歴作成時間は1件当たり4分から2分に、応対品質評価にかかる時間も60分から30分に短縮できた。

 将来的には全ての通話データをベクトル化してVOCとして分析し、新たな商品やサービスの開発につなげたいと中村氏は語る。「この好循環によって、コンタクトセンターは経営や商品開発に貢献するプロフィットセンターになれるはずです」

AIによる適切な自動振り分けを実現したボイスエージェントとは

 続いて登壇したのは、PKSHA Technologyの宮崎純一氏だ。「PKSHA Voicebot」を活用したIVR(自動音声応答システム)の課題解決とAIエージェントの未来について講演した。

photo PKSHA Technology 宮崎純一氏(Voicebot事業部 Voicebot事業部長 兼 プロダクトオーナー)

 既存のIVRには「音声ガイダンスが長く、顧客体験を損なう」「ユーザーが正しい用件を選択できず、ルーティングが非効率」といった課題がある。この課題に対して同社は、PKSHA Voicebotの「AI IVR」機能を提案している。顧客の発言意図をAIが理解して適切な窓口に自動で振り分けるものだ。

 プッシュ型IVRと比較して、ガイダンスを短縮できる上に顧客は自然な言葉で用件を伝えられるため顧客体験の向上が期待できる。振り分け後はショートメッセージ送信や自動受け付けも可能で、Webサイトへの誘導による呼量削減も可能だ。

 事例として、駐車場運営会社での活用方法を紹介した。急ぎではない問い合わせはFAQやチャットbotに誘導し、オペレーターはトラブル対応などに集中することで対応時間を短縮。業務効率化を実現したという。

 PKSHA Voicebotは、名称を「PKSHA VoiceAgent」に変更する予定だと宮崎氏は語った。ナレッジの適切な活用や適切な応対チャネルへのつなぎ込み、商品提案、カスハラ対策などを強化するという。

コンタクトセンターに特化したセキュアなLLMの開発に成功

 生成AIを使ってオペレーターの処理業務を効率化したいと考える担当者は多いものの、活用が進まない現状がある。その主な理由として、ハルシネーションと情報セキュリティが挙げられる。

 この課題を解消するため、アドバンスト・メディアはコンタクトセンターに特化したローカルLLM「AOI LLM」を開発。音声認識ソリューション「AmiVoice Communication Suite」のオプションとして提供している。AmiVoice Communication Suiteでテキスト化した通話データをAOI LLMに連携することで、要約の生成やQ&Aの抜粋、VOCの抽出などを簡単かつ安全に実行できる。

 登壇した同社の今宮元輝氏は「機密性の高いクレームデータなどもローカルで処理できるため、セキュリティの懸念を払拭できます」と強調する。

photo アドバンスト・メディア 今宮元輝氏(執行役員 CTI事業部 部長)

 AmiVoice Communication Suiteの強みは、クラウド型生成AIサービスとAOI LLMを使い分けられる点だ。「用途に合わせて最適なAIと連携する仕組みを構築しました。これによって、セキュアな環境での処理と最新AIの活用を両立させられます」

 今宮氏は、音声のテキスト化から検討したいという企業に従量課金型の「AmiVoice API」も提供していることに触れた後、「業務改善、データ活用の手法はさまざまです。まずは手軽に、お客さまとのコミュニケーションに使ってください」と締めくくった。

複雑になり過ぎたIVRを刷新 30%の自動化を実現

 顧客とのコミュニケーション手段が多様化する中でふと頭をもたげるのは「問い合わせ手段として電話は残るのか」という問いだ。それに対してLINE WORKSの田村佳士氏は、「米国でも日本でも、電話は今でも多くの年代で選ばれています。人間にとって、音声によるコミュニケーションが最も自然なUIです。電話は今後も主要なチャネルであり続け、その自動化は不可避です」と、電話の重要性を主張する。

photo LINE WORKS 田村佳士氏(プロダクトセールス本部 部長)

 続けて、コールセンターにおけるAI自動化のロードマップとして4つのレベルを提示。レベル1は「AIによる意図理解と固定のFAQ回答」、レベル2は「LLMとRAG(検索拡張生成)を活用した柔軟な回答」、レベル3は「業務システムと連携した高度な業務処理」、レベル4は「人間の感情に寄り添った対応」だ。

 「今、多くの企業で求められているのはレベル1の実現です」と田村氏。レベル1を突破できるソリューションとして提案するのが「LINE WORKS AiCall」の新サービス「VOICEIVR」だ。AIが顧客の発言を理解して対応できるカテゴリーは自動応答し、人が対応すべきカテゴリーはオペレーターに接続する。

 VOICEIVRを導入しているクレジットカード会社は、AI自動対応で有人対応を約30%削減。AIが事前に用件を聞くことで、オペレーターへの引き継ぎがスムーズになり顧客対応の質を向上させたという。

 「電話の価値を高めて業務効率化を図る第一歩は、AIが顧客の意図を理解することです」と田村氏は結論付けた。

AIエージェント×ノーコード技術で業務の自動化を推進

 最後に登壇したマスターピース・グループの中島樹里氏は、2025年4月に実装した「AI-BPO Agent」について説明した。AI-BPO Agentは、コンタクトセンター向けの統合AIプラットフォーム「AI-BPO」の新機能で、自動応対からオペレーター支援までコンタクトセンターの業務をサポートする。

photo マスターピース・グループ 中島樹里氏(代表取締役社長)

 中島氏はAIエージェントを「自律的に意思決定し、目標達成まで自身で動作できること」と定義。「AIエージェントは、電話による会話やPCシステムの操作、情報の検索、並行した業務処理が得意であり、コンタクトセンターの業務と親和性が高い」と説明する。

 しかし、AIエージェントにはハルシネーションや費用対効果の可視化といった課題も存在する。これらの解決策として同社は独自のAIエージェントの開発に取り組んでいる。それが、シンプルにLLMに任せる「プロンプト型エージェント」、シナリオで本人確認をしてからLLMに任せる「シナリオ型エージェント」、LLMとルールベース型を組み合わせた「フォーム聞き取りエージェント」でユーザーからの情報聴取だけでも複数のエージェントを用意している。これらを使い分けることで、安全性と効率性を両立させられる。

 中島氏がAI導入において重要だと話すのが「ノーコードであること」だ。技術革新が速いAI分野において、大規模な自社開発はコストと時間が無駄になるリスクがある。ノーコードで迅速にシステムを構築、改善できる体制を重視すべきだと主張する。

 同社のシステムは、外部システム連携などが可能な上に、最新機能もリリースから半年以内にノーコードで利用できるように開発サイクルを回しており、スピード感に優れコストを抑えられることが特徴だ。

 「コンタクトセンター業務は今後AIエージェントに置き換わるでしょう。重要なのは安全性(間違わないオペレーション)と対応力(AIの進化についていくスピード)の2つです」と強調した。


 同イベントでは、CT-e1/SaaSと連携可能な製品を紹介する「ディスカバリー・ラウンジ」なども併せて開かれ、多くの来場者でにぎわっていた。進化が続くコンタクトセンターの動向から目が離せない。

photo

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:都築電気株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2025年9月26日