なぜ今、企業は愛媛を選ぶのか 地域課題の解決とビジネス成長を両立させる「デジタル実装フィールド」とは

PR/ITmedia
» 2025年11月04日 10時00分 公開
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 全国有数のかんきつ類の生産地として知られる愛媛県が今、“デジタル実装のフィールド”として国内外から熱い視線を浴びている。その理由は、デジタル技術を活用して県内の事業者と共に推進している実装型プロジェクト「トライアングルエヒメ」にある。

 トライアングルエヒメは、デジタル企業の先進技術を県内各種産業の現場に実装して地域課題を解決することを目的とする。デジタル企業と県内事業者や自治体がコンソーシアムを組成し、ユースケースの創出と県内への横展開に取り組む。

 県が最大3000万円の委託費を負担し、県職員や専門家による伴走支援も行うことが特徴だ。2025年度は過去最多となる約500件の応募があった。愛媛県庁舎内にはプロジェクト関係企業が利用できる「トライアングルベース」を設置し、建て替え工事中の県庁第二別館に整備する予定の「新官民共創拠点」のモデルとして運用している。

 持続可能な地域経済の発展には、事業者の稼ぐ力の向上と人材育成が欠かせない。地方創生の柱の一つとして2022年度に始動し2024年度までの3年間で約2900人のデジタル人材を育成し、県外の14社が愛媛に拠点を設置した。経済効果は累計で約32億円に上る。

 2025年度は「農林水産」「ものづくり」「観光」に加え「AI」「脱炭素」を重点分野に設定。国内外の企業から約500件の応募があり、22件が新規採択(うちAI関連が約64%)され、現在、累計115のプロジェクトが進行中だ。

愛媛県が実装フィールドに適した地である理由

 愛媛県がデジタル実装に注力する背景には、中村時広知事の強いリーダーシップがある。2018年、5Gの登場を契機に「デジタル技術の活用を早急に進めないと周回遅れになる」と危機感を抱き、組織の改編を決定。デジタル推進部署を新設し、さらに130億円の基金を積み上げて機動的に動ける体制を整備した。

 中村知事は「役所は失敗を恐れるあまり、新しい取り組みを苦手に感じる面があります。だからこそ責任を明確にして県内外に覚悟を示しました」と振り返る。最大3000万円の委託費も覚悟の表れと言える。

 「愛媛県は、第一次産業中心の南予地域(県南西部)、第二次産業が集積する東予地域(県東部)、第三次産業が盛んな中予地域(県中央部)とエリアごとに産業が集積しており、バランスの取れた産業構造が特徴です。そのため、各地域で幅広いテクノロジーの実装が可能です」

photo 愛媛県 中村時広知事

 しかし県内事業者にしてみれば、地域の課題解決のためとはいえ急にやってきた県外の企業を信頼するのは簡単ではない。そこで愛媛県が“緩衝材”の役割を担う。全ての採択プロジェクトに県職員が伴走し、実装先となる県内事業者の紹介や事業の進捗管理、さらには愛媛県内でのビジネス拡大など、成功事例の横展開をサポートする。行政が入ることで信頼感を醸成し、県内事業者へのデジタル技術の導入から拡大まで加速させる狙いだ。

 デジタル企業の協業を支援する体制も盤石だ。農林水産、ものづくり、観光、海事など分野ごとの共創会を開き、さらにプロジェクトごとに年3回以上の勉強会やネットワーキングイベントを年間500回も開催している。事業成果発表会は愛媛県内だけでなく、東京、大阪、名古屋、福岡でも実施。実装成果の販路開拓プロジェクトも開始するなど、事業の自走まで包括的にサポートしている。

photo トライアングルベースで取材に応じる愛媛県 デジタルシフト推進課 デジタル実装グループの織田万里菜氏と山下陽平氏。トライアングルベースは、トライアングルエヒメ関連企業なら誰でも利用できる

 トライアングルエヒメのこだわりは“実証実験”ではなく“実装”にある。県内事業者がデジタル技術を使いこなすことで生産性を高め、稼ぐ力を強化することが目的だからだ。期間が限られた実証実験では、地域課題の解決にも企業の成長にもつながらない。既にさまざまな成果が生まれている。

FRINGE×道後hakuro 現場主義が生んだ事例

 施設管理アプリ「HoteKan」(ホテカン)の導入が代表的な例だ。設備の故障発見から修繕完了までスマートフォンで管理できるソリューションで、トライアングルエヒメに2023年度から継続して採択されている。

 運営元であるFRINGE(東京都港区)の苅谷治輝氏は、宿泊施設と清掃会社も経営しており、設備管理の情報共有が非効率だった自身の体験からHoteKanの開発に着手した。現場の課題から生まれたソリューションだ。

 コロナ禍で打撃を受け、新しい取り組みを模索していた中でトライアングルエヒメに応募。愛媛県の支援を受け、実装先として宿泊特化型の温泉ホテル「道後hakuro」を運営する宝荘グループ代表の宮崎光彦氏(崎はつくりが「立」に「可」の“たつさき”)とつながった。

photo (左から)FRINGE 苅谷治輝氏(代表取締役)、宝荘グループ 宮崎光彦氏(代表取締役)

 道後hakuroは、道後温泉では珍しく単身でも宿泊しやすい施設を目指しており、全室にレコードプレーヤーを設置するなど独自性を追求している。どんなに魅力的な施設でも、設備トラブルが発生すれば営業に大きな影響を与える。道後hakuroの設備管理記録は紙ベースで担当者が属人的に行っていた。そのため修理対応に時間がかかり、機会損失が生じることもあった。

 HoteKanを導入するニーズは明確だったが、苅谷氏は「当初、現場の反応はネガティブでした」と振り返る。使い慣れないアプリを業務に取り入れることへの抵抗感は自然なことだ。

 転機となったのは、苅谷氏が自社の清掃スタッフを呼び寄せたことだ。現場目線の支援を続けたところ変化が起きた。「苅谷さんたちが現場に入って説明してくれたことでHoteKanの利用が急激に浸透しました」と宮崎氏は話す。

photo 今では、小さな異常があればHoteKanを使ってすぐに共有している。施設スタッフは「業務の手間が減って、なくてはならない存在になりました」と笑顔を見せていた

 苅谷氏は「技術力だけではうまくいきませんでした。実装の難しさを感じた部分です」と語る。実装において重要なことは、現場の課題をくみ取ってどう使ってもらうかを追求することだ。

 HoteKanの導入で予防修繕が可能になって運用面が改善。道後hakuroは年間70万円以上のコストカットを実現した。デジタル技術の導入で生産性を高め、地域事業者の稼ぐ力を強化するというトライアングルエヒメの目的に沿った成果を得ている。もちろん、参画するデジタル企業の成長を促す貴重な機会にもなりFRINGEの活動範囲も広がった。

 現在FRINGEは愛媛県内に拠点を置き、HoteKanの導入施設を拡大させている。県職員によるサポートもあって横展開のスピードが向上。2024年度には「道後温泉本館」が導入し、2025年度からは愛南町の13の小中学校での実証が開始されるなど、新しい領域への展開に進展した。導入先は全国各地に広がり、コロナ禍当時の20件から150件に急拡大した。今後は、AIを活用した新機能の実装なども検討している。

 「中途半端な気持ちでは通用しない厳しさがありますが、本気で取り組めば自社のさらなる成長をつかめると実感しました。トライアングルエヒメの現場は、単なる営業先の拡大ではなく企業を鍛え上げる道場のような場所です」(苅谷氏)

MobiSaviと愛媛日産が挑む、新たなEV普及モデルの構築

 愛媛の地で電気自動車(EV)の新たな普及モデルの構築に挑戦する企業が、EVサーキュラーエコノミー(循環型経済)を目指すMobiSavi(横浜市)だ。2025年度の新規事業として採択され、愛媛日産自動車(以下、愛媛日産)など複数の地域事業者と共にリユースEVの活用促進に取り組んでいる。

photo (左から)MobiSavi 二見徹氏(取締役会長/フェロー)、愛媛日産自動車 岡豊氏(代表取締役社長)、菅雄一郎氏(営業本部 EV/LV推進室長)

 脱炭素社会の実現に向けてEVシフトが叫ばれているものの、中古車市場においてEVの需要はそう多くない。消費者がリユースEVの購入をためらう理由の一つが「バッテリーの劣化状態が分からない」という不安だ。その結果、使用済みEVの多くが海外に流れ、国内での資源循環につながりにくくなっている。

 愛媛日産の岡豊氏は、トライアングルエヒメに参加した理由をこう振り返る。

 「車の販売だけではなく、愛媛県内でサーキュラーエコノミーを成立させたいと考えていました。愛媛県には自動車ディーラー、リサイクル事業者、バッテリーの再利用技術を持つ企業がそろっており、サーキュラーエコノミーを構築する地の利があります。そこにMobiSaviの技術が加われば心強いと思い、実装先としてトライアングルエヒメの活動に加わりました」

 MobiSaviは、多様なEVバッテリーのデータをAIで分析し、走行条件や気候、使い方によって変わる劣化パターンを推定するアルゴリズムを構築。バッテリーの劣化度を予測できるEV性能予測技術を開発している。MobiSaviの二見徹氏は、この技術の精度に自信を見せる。「発売前のEVバッテリーも構成材料や冷却構造といった情報が分かれば、将来の劣化を高い精度で推定できるはずです」

 両社は、この技術を基に初年度の取り組みとして「性能証明書」と「残価保証」付きリユースEVの販売を計画している。将来のバッテリー状態を予測した証明書を発行した上でリース終了後の買い取り価格を保証する。リユースEVの市場価値を可視化・安定化させてEVを地域資源に転換する新たなモデルの構築を目指す。

photo リユースEV利用を活性化させて資源循環を促す(提供:MobiSavi)《クリックで拡大》

 愛媛日産の菅雄一郎氏は、「新車EVよりも低価格で導入できるため、地方自治体や企業にとって有力な選択肢となるはずです」と力を込める。「県と連携して進めるプロジェクトだと伝えられるので、非常に良い反応を頂いています」

 このプロジェクトは、県内外の20社以上が参加を表明し、協議会に発展した。「EVを循環できる世の中にしたい」という愛媛日産の思いとMobiSaviの技術、愛媛県の支援がこの“愛媛モデル”を形作ったのだ。

 両社は2025年度中に20台のリユースEVを販売する目標を掲げ、2027年度以降の本格展開を目指す。「『革新は地方から起こる』とよくいわれます。この販売モデルを構築できれば、やりたいと名乗り出る企業は全国にあるはずです」(二見氏)

 愛媛日産はリユースEVの価値をビジネスに生かし、販売網の拡大も視野に入れる。“新しいリユースEVの基準”を愛媛の地で作ろうとしているのだ。


 デジタル技術で社会課題を解決し、ビジネスを拡大したいと考える企業にとって、愛媛県は挑戦する価値があるフィールドだ。多様な産業構造を持つ愛媛で実装を成功させられれば、それは確実なステップとなる。「今こそローカル、今こそ愛媛」という愛媛県の呼びかけに応え、デジタル実装の最前線で新たな挑戦を始めてみてはいかがだろうか。

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提供:愛媛県
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2025年11月16日