人材不足が深刻化し、企業も個人もリスキリングの必要に迫られている。しかし、学習プラットフォームや研修サービスが普及する一方で「学びを実践で生かせない」という課題もある。編集部がこれまで取材してきた中でも、この実践の壁に悩む声は多かった。
そんな中、オンライン学習プラットフォーム「Udemy」に「AIロールプレイ」機能を実装したというリリースが目に入った。「講座で学んだ内容をAIとの模擬対話を通じて即座にアウトプットできる仕組み」だという。
学びを実践できないのは、単純に機会が少なく、いざというときには学んだスキルがさびついているからだ。学習と実践が直結するこの機能なら、その課題を解決できるかもしれない。早速試すことにした。
AIロールプレイは、Udemy講座の全てに反映されているわけではない。講座の詳細画面に「ロールプレイ」タグが付いているかどうかで見分けられる。今回は、チームビルディングやマネジメントに生きるコミュニケーションスキルを身に付けられる「【超入門】プロマネが教えるチームマネジメントの基礎」を購入した。
受講画面に入ると、右側「コースの内容」でAIロールプレイが含まれているセクションを確認できる。最初のAIロールプレイは「部下への自己紹介」。始まる前にガイダンスが表示され、シナリオやAIキャラクター設定、達成すべき目標(=正解行動)を確認できる。
AIの山本さん(真面目で人見知り。新しいリーダーがどんな人なのか、興味と少しの緊張を持っている)が登場し、あいさつしてくれた。話し方には抑揚があり、「うれしい」「戸惑い」などの感情も聞き取れる。スタート後もガイダンス内容は確認できるが、「×」で消せるのが良いと感じた。「“カンペ”を見ずに、まずは力試し」という使い方もできそうだ。
会話の終了後、詳細なフィードバックをすぐに受け取れる点も魅力だ。目標を達成できたか、会話から見えた受講者の強みや改善点は何かなどを教えてくれる。現実世界での実践の機会はいつ、どのタイミングで訪れるか分からない。AIロールプレイならば好きなタイミングで何度でも挑戦できるため、学び→実践を繰り返すことで知識の定着を実感できた。
AIロールプレイを体験して一番驚いたのは「想像以上に会話や設定がリアル」なことだ。本音を話そうとしないメンバーとの信頼関係を築くというAIロールプレイで正解行動を見ずにAIとの会話に挑戦してみたのだが――設定通り、なかなか心を開いてくれない。
「元気がないように見える、困ったことはないか、力になりたい」と話しかけても「心配かけてすみません」「特にないです」「大丈夫です」「ありがとうございます」と繰り返すのみで会話が進まず困り果てた。
結局、気まずい空気だけが流れたAI浅野さんとの会話は発展せず終了。しかし再チャレンジを繰り返すうちに、自らAI浅野さんの攻略法を検討する試行錯誤が生まれた。「パフォーマンスが落ちていることを自覚している中で上司に呼び出された」という部下の状況に寄り添い、本音を引き出すにはどういう言葉選びが良いか思考を巡らせ、さまざまなアプローチを試してみる。こういった体験は、座学だけでは得られない深い「内省」につながっていると感じた。
正解行動を確認してからAIロールプレイに臨んでも、一筋縄ではいかないキャラクターもいた。UdemyのAIロールプレイ体験は、現実世界で起こり得る実践機会に備えさせるという、開発者の工夫を感じる。
AIでありながら、なぜこれほどリアルな体験を構築できたのか。その裏側には、どのような設計思想があるのだろうか。
AIロールプレイの開発設計についてベネッセに問い合わせてみると、各講座のプロンプトは講師陣が作成しているという回答が返ってきた。今回、ベネッセの紹介で話を聞けた西村信行氏は編集部が体験した講座の講師であり、日本語版AIロールプレイのテスターとして開発にも携わった人物だ。
西村信行氏(kurogo works代表):2011年に日本IBMでキャリアをスタートし、大規模システム開発やPMを経験。リクルートを経て再びIBMでDX案件に従事。2020年末から副業でUdemy講師を始め、実務的なPM、リーダーシップ講座を中心に制作。2024年にkurogo worksとして独立し、研修コンテンツ開発を手掛ける。現在のUdemy受講生は16万人――AIロールプレイを講座に組み込むに当たって、どういう工夫をしましたか?
西村: まずは「受講者にAIロールプレイに慣れてもらうこと」を重視しました。受講者は、アウトプット型の学習に慣れていません。従来の学習環境が「インプット偏重でアウトプット不足である」ためです。そのため、どういうAIロールプレイをどこに組み込むか。いきなり難易度の高いAIロールプレイを持ってくるのではなく、AIと話してみましょうというところからスタートして難しいAIロールプレイに徐々に挑戦してもらうなど、コース全体のデザイン設計を工夫しています。
――確かに、最初はAIと自己紹介をし合うという簡単な内容でした。こちらが正解行動からズレそうになると、AIが軌道修正するような動きを見せたのも印象的でした。
西村: そこはプロンプト設計の工夫ですね。私の講座は、「AIの協力度合い」と「目標の具体性」の2軸で難易度を設計していまして。前者は「AIがどこまで協力的に会話しようとしてくれるか」ということですね。コースの前半に入れるAIロールプレイは会話に協力的な姿勢を見せるように設計して、コース後半になるにつれて非協力的――反発してきたり、本音を話してくれなかったりといった行動を取るような設定をしています。
――本音を話してくれない部下との会話……苦戦しました。ただ、そういった難易度が高いAIロールプレイでもガイダンスに助けられました。
西村: そこが2軸のうちの一つ、目標の具体性です。ガイダンスの目標には正解行動が書かれていますが、難易度が低いAIロールプレイの場合、せりふの例を入れています。どういう発言すればいいのか、最初から開示しているわけです。それをどう会話の中に組み込むかは受講者の工夫が必要ですが、難易度としては低くなります。難易度が高いAIロールプレイは、ガイダンスは出すものの具体的なワードには触れない、かつ抽象的な目標設定にしています。何ができれば目標達成になるのか、受講者に考えてもらうんです。
――AIなのに感情があるかのような振る舞いを見せるのも印象的でした。
西村: AIの性格に表面的な態度と内面的な意思や感情を設定しています。ガイダンスに入れているキャラクター設定がそれですね。表面的にはつれない態度。実は内心、仕事がうまくいかないことに焦りを覚えていて、上司に詰められたくないが故に強気な態度に出ている……など、分かりやすい例だとこんな感じです。
――リアルだなぁ。
西村: 私は主に、プロジェクトマネジメントやリーダーシップ、業務改善をテーマにした講座を担当しています。これらはパワースキルと呼ぶジャンルで、人間相手に発揮するものなので「いかに人間っぽく振る舞えるか」「会話に文脈を持たせるか」が重要なんです。とはいえ、これはあくまで私が考えた現時点の最善設計です。プロンプト設計は講師に委ねられているので「どういう設計が学びに有効か」については、私も試行錯誤を重ねて追求したいと思っていますし、他の講師陣を含めたさまざまな発想によって今後多様なAIロールプレイが生まれることに期待しています。
――お話を聞いていると、講師陣にとってもAIロールプレイが興味深いソリューションだということが伝わってきますね。
西村: そうですね。冒頭で、従来の学習環境は「インプット偏重でアウトプット不足」と話しましたが、課題としては他にも「フィードバックのサイクルが遅い(→成長速度が遅い)」「対面型ロールプレイの心理的ハードル(→気恥ずかしさや緊張からくる体験の質低下)」など多数あると思っています。AIロールプレイは、こういった課題を一掃できる可能性を秘めています。AI相手なので誰に気を使うでもなく何度でもトライできますし、D&Iやパワハラといった、対面研修ではロールプレイに取り入れにくいセンシティブなテーマもカバーできます。失敗が許されるからトライの数が増える、そんなサンドボックス的な使い方ができる新しい学習の在り方ではないでしょうか。
――AI英会話も話題ですし、今後の人材育成は「AI対人」が「人対人」の代替になるんでしょうか。
西村: 代替ではなく、補完と拡張だと思います。AIと人間のフィードバックの違いの一つに「先入観の有無」があります。AIは先入観を持たないため、純粋にプロンプト設計と会話のパフォーマンスによって客観性のある評価を下せる。これは人にはない良いポイントです。しかし逆に言うと、与えられた情報でしか評価できない。ここを補完できるのが人です。企業文化を踏まえた振る舞いや今までの人間関係など、AIが得られない情報を基にした評価は人にしか出せません。AIロールプレイと人、両方の特徴を組み合わせながら学習環境を拡張して成長を促す仕組みを整えることが、今後の企業にも個人にも大切になるのではないでしょうか。
今回試したパワースキル分野以外に、AIロールプレイは技術系や会計分野で「学んだ内容をAIに説明する」といった反復学習にも用いられているそうだ。西村氏は「アイデアの壁打ちや思考を整理する『言語化能力』を高める訓練にも使える」と語り、その可能性に期待を寄せる。
法人向けUdemy「Udemy Business」を導入している企業は、自社の専門用語などを反映したオリジナルのAIロールプレイも設計できるという。人材育成を担当する人事部門やマネジメント層にとって、非常に強力なソリューションとなりそうだ。
Udemyは、2025年11月28日(金)までブラックフライデーセールを、11月30日(日)、12月1日(月)にはサイバーセールを実施する。対象講座が1講座1300円から購入できるお得なチャンスだ。以下に、西村氏のお薦め講座(AIロールプレイ対応)を紹介する。セール中のこの機会に、自分にぴったりの講座を見つけてみてはいかがだろうか。
【即実践】デキる人はやっている!組織や上司を動かしながら成果を出すフォロワーシップとボスマネジメント入門
【対象】組織や上司を動かしながら仕事を進める方法を学びたい若手から中堅メンバー
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【対象】炎上プロジェクトのリカバリを任されている、任されそうな中堅社員・管理職
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Udemy(ユーデミー)は、米国Udemy社が運営する世界8,100万人が学ぶオンライン学習プラットフォームで、AIによる学習支援機能を搭載しています。世界中の「教えたい人(講師)」と「学びたい人(受講生)」をつなげ、最新の生成AIからビジネススキルまで、幅広いテーマを学ぶことができます。法人向けの「Udemy Business」は、Udemyで公開されている世界25万以上の講座から、厳選した30,000以上の講座を定額で利用できるサービスです。ベネッセコーポレーションは、一生涯の学びを通して社会と人々の人生が豊かになることを目指し、社会人の学び支援を行っており、Udemy社とは2015年より日本における独占的業務提携を締結しています。 (2025年6月末時点)
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