東京ガス、基幹システム刷新に合わせて「入金消込AI」を導入 5人で終日かかっていた入金消込が、3人で午前中に完了

PR/ITmedia
» 2025年12月12日 10時00分 公開
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 経理DXにおいて「最後のブラックボックス」と呼ばれる業務がある。請求した金額が正しく入金されているかどうかを突き合わせる「入金消込」だ。

 この業務は単純な1対1の照合だけでは終わらない。振り込み名義の表記ゆれ、手数料の差し引き、複数の請求をまとめた合算入金などの要素が絡み合い、自動マッチングシステムを入れても精度が伸び悩むことが多い。結局は経理担当者が1件ずつ目視で確認する作業に追われることになる。

 この課題をAI技術で解決している企業がある。東京ガスは2025年4月、20年以上稼働していた経理・会計の基幹システムを刷新するという一大プロジェクトを完遂した。このとき、長年の課題だった入金消込の効率化にも挑んだ。

 導入したのは、Miletosの入金消込AI「STREAM AI ARM」(以下、STREAM)だ。その結果、「5人でやっても終日の業務時間」を要していた月末の入金消込作業が「3人でおおむね午前中に完了」までに短縮し、工数の大幅な削減に成功した。

 なぜこれほどの成果を挙げることができたのか。東京ガス 経理部 経理DX推進グループの近藤芳樹氏、同部 会計センターの武田尚美氏、STREAMを提供するMiletosの代表 高橋康文氏(高は「はしごだか」)に挑戦の軌跡を聞いた。

マッチング率67%、月末は「5人が終日対応」の旧システムが抱えた課題

 東京ガスは、経理・会計の基幹システム「NOAH」の刷新プロジェクトを2023年2月に開始。要件定義と同時に旧システムの課題だった入金消込処理の効率化を検討していた。

 経理部では、東京ガスと東京ガスネットワークの2社を合わせて毎月約1200件もの入金消込が発生する。その多くはガス工事やサービス関連の入金だが、事業の多角化に伴って振込件数も取引先も増えて消込作業が複雑になっていた。武田氏は入金消込の難しさをこう説明する。

 「取引先によっては、企業名ではなく社長名で振り込まれることがあります。A社に請求したのにグループ会社のB社から振り込まれたり親会社から一括で振り込まれたりするケースもあります。旧システムにも自動マッチング機能はありましたが、マッチング率は約67%と高くありませんでした。結局、4割から5割は手動で消込をしており、月末の入金消込は5人で取りかかってもそれぞれ10時間近くかかることもありました」

ALT 東京ガスの武田尚美氏(経理部 会計センター 担当課長)

 旧システムには他にも課題があった。入金消込のマッチングに必要な請求先名称と振込人名義などの事前登録作業が煩雑だったことだ。

 「登録作業の一つに、請求先名称と振込人名義を統一するための『名寄せ』があります。その際、企業名の濁音や長音、スペースなどを除く他、小さな『ョ』『ッ』などを『ヨ』『ツ』に変換します。この登録作業が煩雑で時間もかかることから、最近は新たな情報登録をほとんどしていませんでした」(武田氏)

 誰かが開いている口座の画面は他の人が同時に参照できず、実質的に1口座につき1人の担当者しか作業できない状態だった。

 「旧システムを維持管理していた担当者が定年退職を控えていて引き継ぎも難しかったことから、属人化した入金消込システムも刷新して効率化したいと考えました」と近藤氏は振り返る。

ALT 東京ガスの近藤芳樹氏(経理部 経理DX推進グループ 担当課長)

PoCでいきなり71%以上のマッチング率を出したSTREAMの実力

 そんな中、基幹システム刷新を担当していたコンサルティング会社にSTREAMを紹介された。

 STREAMは経理担当者が判断していたような複雑な入金消込をAIが高速かつ高精度で行う自動入金消込SaaSだ。請求先名称と振込人名義の相違があっても独自の日本語特化AIでマスターデータから顧客を特定する「得意先(名寄せ)AIマッチング」機能や、入金金額と請求データの突合を、AIとアルゴリズムを利用して高速に行う「金額AIマッチング」機能などを備えている。

ALT STREAMの画面イメージ(提供:Miletos)《クリックで拡大》

 近藤氏は、AIによって入金消込のマッチング率を向上させられるという説明に興味を持った。

 「最初はAIと聞いて何となく疑わしいと思い、知識もないので半信半疑で聞いていました。しかしMiletosさまの説明は『AIで何でもできる』というような話ではなく、AIで自動化する部分と人が目視で確認する部分との棲み分けを分かりやすく説明していただきました。東京ガスの基幹システムである『SAP S/4HANA Cloud』と連携した事例が既にあることを知り、実感を持って聞くことができました。特に『チューニングを重ねることでマッチング率を大幅に高められる』という点に惹かれました」

 東京ガスは早速100件ほどの実際のデータを使ってどのような効果が得られるかを検証するPoC(概念実証)を実施した。近藤氏は、チューニングしていない状態でも旧システムのマッチング率を上回ったことに驚いた。

 「最初のPoCでのマッチング率は71%と、旧システムをいきなり上回りました。名寄せのデータを反映すると82%になりました。さらにチューニングすれば90〜95%のマッチング率を期待できることから、導入を決めました」

システム連携を待たないと作業できない ストレスを解消した「速報照合」機能

 STREAM導入プロジェクトは2024年5月に要件定義を開始し、2025年4月に稼働した。要件定義では、STREAMの標準機能と現行業務とのFit&Gapの確認に加え、業務効率を高めるための機能の検討もした。その中でも特にユーザーの業務ストレスを解消した機能の一つが「速報照合」機能だ。

 「入金消込の業務は、入金を起点に始まります。入金情報がまず経理の基幹システムに連携され、その後、入金消込ツールに連携されるという流れです。銀行からデータが届いて連携されるのは早くても午前10時半。月末の繁忙期にデータ連携がされるまで消込作業できないことは大きなストレスでした」(武田氏)

 そこで開発されたのが、速報照合機能だ。入金情報について、基幹システムとの連携を待たず、インターネットバンキングから入金明細データを直接取得してSTREAMに読み込ませる。データを取り込んだ時点で債権情報とのマッチングが実行されるので、10時半を待たずにマッチングしなかった入金件名に対する債権を調べられる。この機能によって、入金消込の件数が多い月末の処理が格段に楽になった。

 「以前はマッチングの有無にかかわらず全ての入金に対して債権検索をして消込をしていましたが、今は速報照合機能でマッチングしなかった分だけ調べればよくなりました。業務の負荷もストレスも減りました」(武田氏)

 Miletosの高橋氏は改善の要望を受けた場合は、ニーズや汎用(はんよう)性を踏まえて新機能を開発することがあると話す。

 「入金数が多く処理が複雑な場合、少しのタイムラグがあるだけで処理の手間にも時間にも大きく影響します。月末の締め作業において速報照合はかなりインパクトが大きい機能だと思い、東京ガスさま向けの標準機能として提供しました。同じ課題を抱える他のお客さまにも価値があると考えています。お客さまの声がプロダクトの質を高めているんです」

ALT Miletosの高橋康文氏(代表取締役社長 兼 CEO)

 東京ガスは他にも、「入金情報と債権情報を目視で確認しやすいように、振込人名や金額など項目別に縦に並べてほしい」「画面下部の債権情報の部分だけスクロールしたい」といったUI/UXに関する改善要望を出した。Miletosはこれらに応え、システムの使い勝手を磨き上げていった。

マッチング率は向上中 「夜までの作業」が「午前中で終了」へ

 STREAMの導入は大きな効果をもたらした。現在はマッチング率が80%台後半に向上している。

 「以前は朝から夜まで入金消込を行う日も珍しくありませんでしたが、今ではその日の処理は午前中にほぼ終わるようになりました。浮いた時間で別の業務にも取り組めるようになっています」(武田氏)

 現場の心理的な負担も軽減した。近藤氏は「経理部で入金消込業務を行っている取引額は月間数百億円以上あります。間違いや作業の遅延は許されません。STREAMを導入して効率化できたことでその精神的なプレッシャーを軽減できました」と語る。

「AIがあるから人が不要になるわけではない」 導入の経験をグループ全体へ

 東京ガスは今後、マッチング率をさらに高めて90%超えを目指している。グループ全体の経理会計システムの刷新も検討しており、近藤氏は「グループ約100社のうち、主要な会社から順にSTREAMを展開できないかと検討している」と意気込む。

 「STREAMを導入したことで、AIは使い方が大事だと実感しました。AIがあるから人が全く必要なくなるということもない。自動と手動を使い分けて、業務を効率化し、品質を高めるのは結局のところ人間の役割です。これからもAIを上手にコントロールしてSTREAMを活用したいと考えています」

 AIという最新技術を連携させ、長年の課題だった入金消込業務の大幅な省力化を実現した東京ガス。この経験は、今後の東京ガスグループの経理DXを加速させるだろう。

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